日も落ちて夕暮れ。
早めの夕食をとり風呂も済ませた総悟は、仄暗い自室で一人畳を見つめていた。
と、背中越しにスパンと障子の開く音。
「ここに居たのか、何してんだお前」
いつも通りイラつく嫌いな声を聴きながら、ゆっくりと振り返る。
いつも通りレッスンの迎えにやってきた土方は、総悟の様子を見て僅かに首をかしげて見せた。
「なんだよ」
「イヤ・・なんつーか・・」
「もう、よくねーですか?」
「何がだ」
「や、だから・・・もう、一応最後まで教わったんですし」
ずるずると引きずるように屯所の廊下を二人の男が歩く。
俺にセックスの講習なんてものを受けさせたのは、
もちろん拷問の耐性もあれど、ヘタな女にかまけさせないためでしょう。
女の怖さは身に染みたし、行為のこわさも身に染みたし。土方の思惑通りと言うところが気に食わないが。
「コレで俺もそうそう女に手ぇ出すこともねェだろうし」
「つまり?」
・・・・。
少々こわばった顔と面突き合わせることしばらく。
はぁ、と土方は大きくため息をついた。レッスンは続けてもらう。そう言い放てば目の前の少年はぐうと息詰まる。
何も土方だって嫌がらせでこんな事しているわけじゃない。彼のためを思っての事なのだから。
それに。
「何をビビっちまってんだか」
行き過ぎて女性不審に陥るようじゃ逆に不安だ。真選組が追う攘夷浪士にも女性はたくさんいる。
ちょっと一回無茶させてしまったくらいで何を縮み上がっているのか。
「イヤ初でアレはぶっちゃけ結構きいたんですがねィ」
「だったら次気をつければいいだろ。素人相手に手加減もできねーくらい落ちぶれたのか総悟」
「・・・」
カチャリ、
離れの一室。鍵のかかった扉がゆっくりと開く。
「実践で物怖じしないため、けがも失敗もできるのが稽古だ」
「ウワァ・・・近藤さんの受け売りキメェ・・」
「黙れクソガキ」
わしわしと自分の後頭を掻きながら、それでも面倒臭そうに自ら敷居をまたいだ総悟に、
土方はやれやれと内側のカギをかけ、後に続いた。
「こんばんは、沖田さん。また遅刻ですか?」
いつもと変わりない愛想のない態度で見上げてくる女の前に、総悟も無愛想に腰をおろす。
「体、平気ですかィ」
「あら、心配してくださるんですか?意外と優しいんですね」
「・・腹立っつ・・何でィその言い方。考えちまって損した」
「ええ、何を考えてらしたんですか?」
年下の子供を大人気なくからかうように、悪意に満ちた薄ら笑みが続きを促す。
それはそれは・・・見た人の神経を見事に逆なでするような。
しかし思わず見とれてしまうような。
「・・・やっぱアンタ超絶腹立つゥ・・」
「それはどうも。ではレッスンを始めましょうか」
「チッ」
おそらくその自身の最大の武器を、彼女も十二分に把握しているからこそ、こんな仕事が勤まるのだろう。
顔を近づけてくる女に、ハラハラする心を何とかため息とともに逃して、総悟は唇を押し付けた。
「まずは、キスから」
・・・その結果、いくぶんもたたずに根を上げるのもいつも通りなわけで。
「・・・ぶは!」
「・・沖田さんはせっかく片足童貞から抜け出したのに、全然こっちは上達しませんね・・」
「し、死ね!やっぱりテメー、しっ、う、む・・」
「キスはお嫌いですか?それとも、夢中になっちゃうだけですか。ねえ?」
「ん、うぅ・・!」
逃れるように仰け反らせた体に軽い体が覆いかぶさってきて、無意識に身構える。
「今日は突然中に入れろなんて言わないので、平気ですよ?」なんて言われて、見透かされているようで悔しくなった。
柔らかな舌が総悟の舌をからめとってきつく吸い付き、思わず目を瞑れば、びく、と体が跳ねる。
指先で撫でられた下半身はすでに熱を持ち始めていて、こんなにビビっていても体は正直だと、総悟は自分の身体が憎くなった。
女が耳に唇を寄せ楽しそうに囁く。
「そろそろキスだけでいっぱいになるのは、卒業しないとね」
「ッくそ・・」
唇をはみながら帯に手をかけてくるに、総悟も舌打ちしてゆっくりその手を娘の背中へと回した。
「それで」
驚くほど流れるような手つきであっという間に総悟の衣類をはだけさせたが、おっかなびっくりのろのろ服を脱がせる総悟を弄びながらゆるやかに口角を持ち上げる。
「前回のレッスンの後、沖田さんは何を考えてしまったんですかねえ?」
「ねえ、沖田さん」
「うる、せ・・」
「初めてだったから、びっくりしちゃったでしょう」
「んっ、く・・っも・・アンタじゃまでィ・・!」
「女の子の服脱がせるのに夢中になるつもりですか」
ならその"女の子"連中はこんな面倒くさい格好をするな、と言いたい。
帯の下の結び目を解こうとしたところで弱いところをこねくり回される。そのたびに手を止めていては脱がせるどころではないだろう。
「ねえ?」
「っわ、ちょ・・んん!」
半分衣をはだけさせた娘がのしかかってきて総悟を押し倒す。
ざらり、と舌の腹で芯を撫でられて、くぐもった声が鼻から漏れた。
「・・っ、はぁ・・」
「教えてほしいなあ、ねぇ」
「ひ、」
「わ、か・・・っ待、もう・・」
「ええ、なんです?」
歯を食いしばって情けない声をあげる総悟に、部屋の隅で土方がため息を吐いたのが分かった。
他人事だと思って。
それでも動かしていた舌を止め、目の前で目を細める女に、どうしようもない。
「・・き、傷物にしたんなら、責任取らねーと、とか・・」
「は?」
煙でも出んばかりに頭をほてらせた総悟が呻く。
その言葉でぽかんと口を開いたまま瞬きを繰り返すのみだったは、
「ぷ、」
一瞬の後、突然噴出した。
「あっはははははは!」
「な、何でィ」
「ふ、ふふっ、ごめんなさいね、あははははっ!おっ、おかしくって」
「しっ・・死ねよ土方!!」
部屋の隅で爆笑をこらえきれていない土方に絞り出すように悪口をいう。
総悟はチラリと目の前の女をうかがった。
それよりも、彼女がこんなに声を出して笑うなんて。
「傷物って・・ふふっ」
「それで責任取らなきゃいけなかったら、私はどれだけ責任取ればいいんでしょうね?」
にっこり笑ったに違和感を感じる間もなく、唇が降ってくる。
だからお前舐めた後にちゅーはヤメロ・・・などと文句を言う余裕もありゃしない。
「責任なんていりませんので、お気遣いなく」
「んっ、あ、アンタ・・・ここ来る前もゼッテー、ロクな職じゃなかっただろ・・!」
このくそビッチが、ぁ、
嬌声と一緒に漏らした声に、娘は「どうでしょうね」と瞳を細めた。
あっ、今回特段何もしていない罠
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