少年と化してしまった土方十四朗はぎゃいぎゃいと騒がしいと山崎、総悟のやり取りを部屋の隅で眺めていた。
四つん這いになったの上にちっこい栗色の毛の子が跨って、それはそれは楽しそうにはしゃいでいる。
と、娘の方と目があった。
娘はにっこりとほほ笑んで返すと、背に乗っていた子供を抱きかかえてこちらに来た。
すとん、と隣に座られて、思わず距離をとる。

「いいじゃないですか、隣に座るくらい。何もしませんよ」
「それは知ってる。近くに寄るな」
「はぁい、じゃぁちょっと離れたここに座ってますね」

拒否されたのに嫌がるそぶりも見せずに、娘は土方の間合いのギリギリ外側に腰を下ろした。
胸の中の栗色の子がよじよじと娘の体をよじ登っていって首にしがみつく。

「これはおれんだからやらねーよばーか」
「こらそうごくん、そんなこと言っちゃいけません」

こちらに向かってあっかんべー、と舌を出す子供に、どこの甘えん坊だ、と思う。
とうしろうくんも一緒に遊びましょうよ、と娘に言われて、土方は小さくいい、と言った。
強い者と喧嘩がしたいがあいにく剣も持っていない。
しかも隣にいる娘はどう見たって弱そうだし、暴力を振るう気も起きない。ただ。

はおれが大きくなったら嫁さんにしてやらあ」
「ぎゃああああああなるなるなるぅぅ!!かわああああああ(可愛いの意)!」

ふわふわのほっぺたですりすり頬ずりされて、と呼ばれた娘はフルフルと震えながら栗色の子を抱きしめる。

「おまえが大きくなる頃にはそいつババアになってんだろうが」
「ひ、酷いとうしろうくん!」
ーだっこして」
「はいはい」
「ちゅ」
「・・・・・・・・・」
「ちょっとぉぉぉ隊長!やめてあげてください!ちゃんしんじゃう!」

小さな唇で「ちゅう」をされて、娘は耳まで真っ赤になった。
あんな小さな子供にキスされたくらいで何をそんなに真っ赤になる必要があるのか、と思っていると、同じことを思ったであろう栗色の子がにやりと悪い笑みを浮かべた。

「こんな小せえ子供にちゅーされて真っ赤になってんの、しょたこんってやつかぃ」
「・・・そうくん?いい加減にしないと・・」

くすぐっちゃうぞ!
きゃははははは!屯所の一室に子供の笑い声がこだました。




「ねえとうしろうくん」
「ああ?」

間合いの中には入ろうとせずに、は土方に向かってぽつりと口を開いた。
その腹の上では栗色の子がすやすやと寝息を立てている。

「えーっとね・・・「ねこ」って子のお話、ちょっと聞きたいなぁって思って」
「はあ?」
「い、いやっあのね!あの子、本当はいつもくっついて行ってとうしろうくんが迷惑してないか心配しててっ、それで、ちょっと聞いてきてくれって頼まれたんだよね、あはは」
「あいつが?そう言ったのか?」

う、うん。やっぱり、うっとおしかった・・?
しどろもどろでそんなことを聞いてくる娘をちらりと見て、土方はしばらく考えた後、ふっと息をもらした。
そうだな。

「迷惑だった」

ぴし、娘の表情が強張る。
の隣に座っている山崎は、心配そうにを見上げることしかできない。
ぴくり、と娘の腹の上に乗っていた栗色の毛が寝返りを打った。

「そ、そっか・・・ごめんね・・」
「近づいてくるなって言ってるのに」

何度言っても、どれだけ喧嘩に明け暮れる姿を見ても、笑顔で寄って来る。
お節介でいつも心配してくれて、応援してくれて、その癖いつも厄介事に巻き込まれる。
放っておきたいと思うのに、放っておけない。
今までこんな乱暴な自分に懐いてきてくれる奴なんていなかったから、扱いに困ってしまう。

「強くなるまでは、大事なモンなんて作りたくなかったんだけど」
「守りてぇって思っちまったんだよ、思っちまうんだよ。あいつの事は」

「大事だから、置いてきた」

あ、今のはあいつに言うなよ。土方は遠くを見ながらふふっと笑う。
そんなこと聞いたら、あいつの事だから追いかけて来ちまいそうだ。

「迷惑だったけど、まあまあ楽しかったって、伝えておいてくれ」
「・・・うん・・」
「て、え。なんで泣いてんだよアンタ・・」

ぽろりとこぼれた涙は、下にいた栗色の子の頬に落ちた。




総悟を撫でながら溢れて来る涙に耐えていると、不意に頭にぬくもりを感じる。
あったかくて、優しくて、懐かしい。
ちらりと目線だけで伺えば、真剣な顔をした黒髪の少年が頭を撫でてくれていた。
自分の方から、間合いを詰めて。

「おに・・・とうしろうくん・・」
「大丈夫か?」
「・・・うん・・」

ぐしぐしと目元をぬぐってにっこりほほ笑めば、土方は一瞬目を大きく開いて、撫でていた手を止めた。


「お前、ねこか?」
「・・え・・?」


目をまん丸にしては目の前の少年を見つめた。
忘れるはずがない、大好きな大好きなお兄ちゃんの姿。
でも、お兄ちゃんと一緒にいたころのなんて10にもいかない幼い子供だったはず。
それを、自分よりも年上の娘に向かって、そんなはず、ありえない。

「ねこかって聞いてんだ」

それでもこちらを見る少年の目は真剣そのもので、訪ねているにしては確信めいた言葉の色。
「ねこ」
いつもの土方よりも僅かに高くて、幼い声。
お兄ちゃんの声。

「・・・もし・・」
「あ?」
「もし、十数年後・・・大人になった「ねこ」ともう一度再開できたら、どうしますか・・?」
「・・・・・」

すっと頬にあてがわれた手のひらに、無意識に体が動いた。
すりすりと、まるで猫が飼い主に甘えるように、
てのひらに頬を押しあてる娘に、少年は歯を見せて笑う。
このころの土方は、悲しそうな顔をして笑うんだな、と見ていた山崎は思った。

「大人になっても変わんねェな、って言って、頭ぐしゃぐしゃに撫でてやるよ」

「・・・・・こんな、ふうに?」
「ああ、好きだったろ?撫でられんの」
「・・・・うん・・っ」
「あーもう、泣くな」

ぐしゃぐしゃと10も違いそうな子供に頭を撫でられて、
それでもは幸せそうに眼を閉じた。




「う、う・・ん・・?」
目を覚ました山崎は自分の声が先程までと比べて随分と低くなっていることに気づく。
目の前に持ち上げたてのひらを、ぐ、ぱ、と握ったり開いたりをして、ほぅ、と息を吐く。
戻ったんだ。
どっこいしょ、と体を持ち上げて、ぶるるっ、と身震い。ありゃ、着物はだけてら。
・・・と思いながら視線を動かして、ピシリ、と時間が止まる。

「しゃ、退くんん・・・起きた?起きた・・?あの、あのコレ、たす、助け、」

目の前に広がった光景は、大きくなった総悟に押しつぶされているである。
その向こう側に戻った土方も横たわっている。

「お、重い・・つか、着物はだけて、あた、あたあた、当たっ、て」
「むぅーあと5分・・・」
「起きてんのか貴様ぁぁぁぁああ!!どきなさい!重い!」
「隊長ォォォォォ!!セクハラ・パワハラ・オフィスバイオレンス盛り沢山ですよ!!訴えられますよ!!」

急いで簡単に着物を身につけて総悟に飛びつく山崎。

「は・な・れ・て!」
「いやだぁー」
「隊長ォォォ!!」
「なにが『いやだぁー』ですか!知ってんですよ!沖田さん別に頭ん中子供になってなかったでしょう!」
「あり、ばれてた」
「ええええ、そうだったんですか?!」
「あああいいから!せめて下着を付けてから抱きついてぇぇぇぇ!」

なんでぇアンタだって満更じゃなかったくせに・・・
そう言いかけた総悟の頭上から、強烈な拳骨が振り下ろされる。土方だ。

「総悟ォォォ!テメェはなんつーかっこで抱きついて・・・・い・・・・」

・・・そう言う土方自身も、ほとんど布を身につけていない状況だった訳でして。


「ふぎゃあああああああああああああ!!!」
「どうしたァ!何だ今の声?!ちゃんっ?!!」


駆け付けた近藤が障子を開くまで恐らく後2秒。
どうする?!土方十四朗!!?









はいお疲れ様でした!最後の10000hitリク、「土方さんのお兄ちゃんらしさが楽しめるお話」でした!
お兄ちゃんって言うか半分くらい出番キラーの餌食になってるのですが。ごめんなさい。
無事全部のリクエストに返せたと思うのですが・・・あれ、私のリクエストは?って方がいたら本当にごめんなさい。
お手数ですがもう一回連絡ください。責任とって長編でお返しいたしますっ><
それでは、りくありがとうございました!こんなものでよろしければ貰ってやってください!


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