目を覚ました先にみた天井は、
案外見知ったものだった。
ごしごしと目をこすりながら、はソファから半身を起こす。
休日に遊びに来てそのまま寝こけてしまったのだろうか、万事屋の微妙に硬いソファの上で、辺りを見回したは首をかしげた。
なんか、どことなく違和感。
いや、よくよく見てみれば違和感ありまくりだ。
確かにこの部屋は万事屋のもの・・・・のはずなのだが。
ベランダの上に飾られた額縁の文字ってあんなんだっけ?
あの壁にかかってる写真の男は、一体誰だ?
そして・・・、
社長デスクに堂々とふんぞり返っている、白地に渦巻き模様の施された着物をだらしなく着こなしているこの家の主人・・・。
あんた、誰だ?!
**万事屋○ちゃんの猫**
額縁に飾られた『狂気』の文字。
壁に掛けられた銀髪グラサンリーゼントの謎の男。
そして社長椅子に腰かける、恰好だけは「万事屋さん」の包帯の男に、は目を見開いた。
貴方は・・・・・!
「フン・・・・ようやく目覚めたか」
・・・誰だ。
否。はこの男を見たことがあった。
何回か会って、話をしたこともある。包帯で、甘くむせかえるような煙草を吸う男だ。
ただ、名前は知らない。
名前は知らないが、何故この包帯男が万事屋の恰好で万事屋にいるのか。
頭に?を大量に浮かべるをちらりと見やって、男はにたりと目を細めた。
ちょいちょいと手招きをしながら「来い」と言われてがおそるおそるその腰を上げたのは、何も考えずに、ではない。
この男、相当我儘だ。
いたずらに機嫌を損ねても良いことなどないというのは、何と言うか本能から予想できた。
今まで数回会っただけでも、頭撫でろだの煙草に火を付けろだの、まるで従うのが当たり前化のようにこちらに命令する。
そんな我儘に振り回されるのも知り合いによって慣れっこであるので、は仕方なく男のもとへと歩み寄った。
と、男が座る椅子の隣まで来たところで、ぐい、と急に腕を引かれる。
大方また「隣に立って頭撫でろ」とでも言われるかと思っていたは驚いた。
気づけば、男に抱きかかえられるようにして腕の中。
どういう訳か男はそのままの頭をわしゃわしゃと撫でまわした。
体中に走ったのは、
・・・・寒気である。
何が?!何だ?!確かに自分はこの男の事をよく知っているわけではないのだけれども。
何かおかしなものでも食べたのだろうか?それまでが知っている男とは真逆の行動に、腕の中で呆然とする。
その上撫でられながら後ろから「クックックックッ・・・」なんて不気味な笑い声が聞こえてきてしまった暁には。
こっこの人怖い!!
「え、あの、えっ」
「いい加減腹決めな」
「何を?」
「大人しく俺のペットになるんだよ」
「ペット?!」
「晋助さまあー!ただ今戻りました!」
「戻ったでござる」
頭を掻き回されながら後ろからのプレッシャーに耐えていると、ガラガラと玄関の開く音、そしてしばらくすると3人の人物が現れる。
ハーフアップの金髪に丈の短い着物の娘と、グラサンにヘッドフォンの男。そして、壁に掛けられた写真の男、銀髪グラサンリーゼントの男である。
神楽ちゃんいつの間にそんなにセクシーにならせ遊ばされた?!新八くんがグレた?!
金髪の娘は「お散歩行って来たっス晋助さま!」なんて満面の笑みでを撫でている男に笑いかける。その表情から彼女が心からこの男を慕っているのが見てとれた。
「む・・晋助、どうしたでござるかソレ・・・」
「まっまさか晋助さま、もしかして・・・」
「可愛い猫だろう、拾ってきた」
「「また?!」」
修羅場?!と思いきや飛び出た予想外の言葉に、は心の中で「また?!」?!とツッコミを入れた。
「拾ってきた」よりもまずはそこである。
また、ってことは、前科があるってことだろうか?!そうなのだろうか?!
「晋助さま勘弁してくださいよう、ウチは似蔵養ってくだけでいっぱいいっぱいですって」
「俺に文句でもあるのか」
「やん。ありません!」
「しかし晋助、犬と猫は少々相性が悪いのではござらぬか」
金髪の娘が困ったような顔をしたと思いきや突然頬を赤らめて顔を隠す。
どうやらこの娘は「しんすけさま」と呼ばれた、おそらくの後ろに座っている男に絶対服従のご様子。
グラサンヘッドフォンの男はナウなヤングスタイルと思いきや忍者口調?である。
会話の流れからして「にぞう」とは元々ここで飼っているペットの犬のようだ。
場所が場所だけに、さらに「しんすけさま」の恰好が銀時なだけに、ペットの犬と聞かれて浮かぶのはいつも自分を押し倒して来る巨大な白い毛玉・・・
「な、似蔵」
「わん」
お前かよ?!
よく見ればごつい体のリーゼント男の首には首輪がしてあり、リードが金髪娘の手まで伸びていた。
「とりあえずは自己紹介っスね。ウチはまた子、よろしくっスー!」
「万斉でござる」
「似蔵だ・・・覚えにくかったら、ニゾ春とでも呼んで」
「呼びません。あの、よ、よろしくお願いいたします・・」
突然始まった自己紹介にしどろもどろで返す。
「です」と言えば、社長椅子にかけていた「しんすけさま」はくるりと椅子を回転させてこちらを見た。
「。今日からお前はここ「万事屋晋ちゃん」の飼い猫だ。しっかりと俺を癒せ」
「え、あ、あの、はい・・よろしくお願いします、えと・・「しんすけさま」」
ぺこりと頭を下げると、男は不機嫌そうに眉をしかめてを睨みつけてきた。
えっ、えっ?今の対応のどこが間違いだったのだろうかとおろおろと見上げれば、
「「しんすけさま」じゃねぇ。万事屋「晋ちゃん」だ」
「・・・・・・」
「・・・・万事屋」
「あ、はい聞こえてます・・・・晋ちゃん・・」
「よろしい」
包帯の男・・・晋ちゃんは、満足そうに一息吐くと、椅子を下りて玄関から出て行ってしまった。
「どこいくんですか」と尋ねれば「煙草」と帰って来る。は首をかしげた。
わざわざ外に出なくても、煙草を吸いたいならここでふかせばいいのに。
あの男の事だ、「火」なんて言いながら煙管を差し出されるくらいはしそうなものなのだが。
また子に尋ねると、ペットの前ではたばこは吸わないとの事。
「副流煙って知ってるっスか。大事な動物達がガンにならないようにという晋助さまのご考慮っス!」
「どんだけ動物好きなのあの人?!」
「おい、新入りィ・・・」
ハッと振り向けば、リードの外された似蔵がこちらを物凄い形相で見降ろしていた。
体の大きさの差はかなりの者。しかも敵意むき出しではないか。
「何でしょう・・」と震える声で言えば、似蔵はぐっと親指を自分に向けて吐き捨てた。
「新しく拾われて来たらしいが、勘違いすんじゃねェぞ・・・」
「ココ(万事屋)の癒しは、この俺だ」
「・・・あ、はい・・・」
何か変な事になってきた。
あ、これはきっと夢なんだと、今更ながらに思う。
よく考えてみればあり得ないもんな。猫とか、犬とか。癒しとか。
そう思ったらいちいちツッコミを入れるのも疲れてきた。折角体を休めている時に、夢の中でまで披露するようなことをするなんてバカバカしい。
だから、どたどたと再び万事屋の階段を駆け上がってくる音と、壊しそうな勢いで玄関の扉が開いた時も、は心の中で突っ込まないぞ、突っ込まないぞ、と呪文のように繰り返していた。
少々興奮気味に頬を染めて部屋に飛び込んできたのは、先ほど煙草を吸いに行ったはずの「万事屋晋ちゃん」である。
「捨てられてるところを見つけたんだ。コイツも飼うぞ」
「またでござるか」
「今度は何拾ってきたんですか晋助さま」
晋ちゃんは目を輝かせながら、後ろに隠していた人物をぐい、と前に出した。
の中の時がピシリ、と固まる。
赤みがかったオレンジ色、一つに三つ編みされた髪の毛。にっこり人懐こい笑顔を貼り付けて。
その人物は、いつぞや襲われたことのある神楽のお兄ちゃんだった。
「可愛いだろう、ウサギさんだ」
「ぴょんっ」
ばかなああああああああああああ!!!
ガバリと起き上った先で、ゴチンと音がした。
「大丈夫ですかィ旦那ぁ」
「・・・・てぇ・・」
「、、大丈夫だったアルか?うなされてたヨ」
「・・たた・・神楽、ちゃん・・?」
「嫌な夢でも見たんですか?」
目を覚ましたのは、今度こそ、いつもの万事屋だった。
そう言えば、今日は仕事が休みで遊べ遊べとうるさい総悟の魔の手から逃げるべく万事屋にやってきて・・・
そこでうたた寝してしまったのか。
抱きついてきた神楽の頭を撫でてやっていると、つまらなさそうな顔をした総悟と目が合う。
「俺から逃げようなんて、姉さんはいつからそんなに偉くなったんですか」
「だって・・・私はお休みですけど沖田さん別に非番でも何でもないじゃないですか」
「もう終わったや。さぼらずちゃァんとね。帰りますぜ」
そう言って腕をとられ引き上げられる。
「ああ!お前ばっかりずるいアル!!私も手繋いでっ、送ってくヨ!」
「てめーはこねぇでいーんだよチャイナ」
「まぁまぁ沖田さん」
「そうだ、神楽ちゃん。出かけるならついでに定春も散歩連れて来なよ」
「うん!定春ーいくヨー」
「わんっ!」
「て、えっそのまま行くの?遊んだならもどしてあげなよその毛・・」
すりすりとすり寄ってきた定春に、は絶句した。
もこもこの白い毛が束ねてまとめて固められて、
リーゼントになっている。
「ニゾ春ぅぅぅぅぅううう!!」
力任せに繋いでいた手を引っ張られてバランスを崩した総悟は、ニゾ春とちゅうをすることに。
そしてその後喰われた。
はいお疲れ様でした!リクエスト「鬼兵隊の猫」でした!
何ゆえに金魂設定。そして、本当にごめんなさい鬼兵隊の皆様。全然キャラがつかめておりません。
また子ちゃん?似蔵、くん・・?だ、誰貴方?小動物大好き高杉さんも迷走し過ぎです。こんなんで攫われる編かけるのか。
鬼兵隊ファンの皆様、お目汚しを大変失礼いたしました。リクエストありがとうございます!
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