銀時が居間でジャンプを読んでいると、ぺたぺたと後ろから近づいてくる足音が聞こえた。
誰かなんて考えるまでもない事。今日は神楽は定春と出かけて行ったし、
新八はお通ちゃんの新CDが出るとかで親衛隊の面々と昨日の夜からDCショップの前で待機だ。

「ぎーんちゃん」

そしてこの声。
小さくてもはっきりと届く、鈴の音の響くような心地よい音。
そんな声で子守唄など歌われた日には、どんな悪餓鬼でもころりと夢の中に落ちてしまうような。

「おー、どした、

わざとジャンプから目をそらさずにその体制のまま答えれば、視界に居なくとも相手がむう、と頬を膨らませるのが分かった。
ゆるりと口角が上がるのを自覚する。
くくっという笑い声は流石に抑えた。本当に怒らせてしまっては大変。

好きな子をいじめたいなんて、本当自分の性格にほとほと呆れ果ててしまう。
辞める気はないけれど。寧ろこれでこそ俺だ、みたいな?
あえて何の気もないような、興味の失せた表情をとり作りながら「なんだ」と銀時は振り向く。
どんな可愛い顔をしているだろうと期待していたのに、振り返った先のの表情は何かを含んだような笑みだった。

遊び友達の影響を多分に受けて、コイツはどんどん勘が鋭くなっていく。
お前の考えることなどお見通しだ、なんて言いたげなどや顔。
でも決してそんなムカつくものじゃなくて、悪戯が成功して、企みをつぶせて素直に「ヨッシャ!」と喜ぶ幼い子供のような。
とにかく可愛らしい。あれ、結局は可愛いのか。
カワイイぞコノヤロー!


「なあに?もしかして、みとれちゃった?」


立っていた少女は、にぃー!と歯を見せて笑って、銀時を見上げた。
幼い表情の中にほんのり色が含まれたような、そんなギャップのある表情にグッときます。







**鎖を持たせてお嬢さん**







「うーわー。今のは萎えた。マイナスポイントだわ」
「ええー!ごめんね。冗談よう」

ぱっ、と、役者が監督から「カットォ!」を貰った時のようにキャラを切り変えて、うって変わって娘は慌てだす。
はい。どうも、ごちそうさまでした。
そんな銀時の表情を見て、も何かを感じ取って少し拗ねた顔になる。
あ、負けた、みたいな。
しかしそんなのもつかの間、銀時が「で、どうしたの」と聞けば、は用事を思い出したようでぱあっ、と目を輝かせた。

「遊んで、ぎんちゃん」
「えー。でも俺今ジャンプ読んでるし」
「ええー、ジャンプに負けるのわたし?」
「ジャンプはなァ、全ての男達のバイブルなんだよ。皆胸の中にToらぶる抱えて生きてんだよ」

ぶー。と不貞腐れるにしっしっと手を振って、銀時は再び手に持ったジャンプに目を落とす。
と見せかけて、本の端からちらりと娘を見やった。
もうジャンプなんて読んでられるか。今はこっちの方が見ていて面白そうだ。
口を小さくへの字に曲げながらが言う。
「遊んでくれないの?」
「コレ読み終わったらな」
永遠に読み終わる気はないがな。

「今からが良いよう」
「文句言うなら遊んでやんねーぞォ」
「じゃーいい。そうごに遊んでもらう」

おっと。

銀時はジャンプの影からの眼を覗き見る。
口元はご機嫌斜めだが、あの目は、拗ねたり怒ったりしている眼ではない。
花札で「こいこい」をする時のような、麻雀で「リーチ」をかける時のような、

・・・・・駆け引きを楽しんでる目ぇしてるよコイツ・・・。

全く、あのドS王子め。
あんなに「馬鹿で可愛かった娘」を、こんなに「賢く可愛らしい女」に育ててくれちまって。
はあ。銀時はため息を吐いて、このばの「降参」を示す。
「・・へいへい、今読み終わりましたよ」
流石はドS。

「あ、でも、あっちと遊びたいなら仕方ねェなァ。おめーはどっちがいい?」
「ぎんちゃん!」

案外好きよ?俺、こういうの。




「な、何ソレ」
銀時が掠れた声で、半笑いで聞くのも無理はない。
遊んでくれると聞いてが嬉々として持ってきた玩具箱の中身は、

・ロープ
・首輪
・骨
・鎖
・鞭
・フリスビー

「あそぼ、あそぼ」
大きな瞳をくりん、と開いて、頬を染めながらが無邪気に笑う。
これらのアイテムたちを前に“無邪気に笑える”この子が本当に恐ろしい。


「ご主人様とペットごっ「まてええぇぇえええええええええいいい!!!」


がしィ!と突然両肩を鷲掴まれて大声を出され、はびくぅぅぅうう!っと飛び上がった。
前言撤回。何と言う事だ、大変だ!!
銀時の頭の中で先程の「可愛らしい」がぐしゃぐしゃっと消され、その横に「変態」の文字がぴこーん、と出現する。
オイィィィィィイイイ!待てェェェェェ!お前らいつもこんな遊びしてんのか!

「お前アイツにどこまでさせてんの!?縛らせたのか?!付けたのか?!咥えたのか?!打たれたのか?!」
「えっ、えっ?ぎ、ぎんちゃん、こわいよ・・・?」
「これが落ち着いてられっかってんだアアアア!!あんのクソ餓鬼!!」

人んちの女にナニ教えてくれちゃってんのォォォォォ!!?
怒りに燃える銀時をどうどうと押さえるのは頭に「?」を大量に浮かべたである。

「待って、待って。そんな痛いようなことはされてないよ」
「痛いよ?!「ご主人様とペットごっこ」なんていうタイトルからしてイタいよ?!」
「わかった!わかった!じゃあ違うのであそぼ!オセロしよ、オセロ!」

「ん?」と銀時は首をかしげた。イマイチ噛み合っていない。
は残念そうにてててて、と走り去ると、戸棚から折りたたみのオセロを持ってやってきた。

「おい
「んー?」
「お前沖田君とそのごっこやったことあんの?」
「うん、あるよー」
「面白かった?」

「うん、楽しかったよ」
にこりと笑うの表情は本心からだ。ヤツにしつけられた(?)独特な黒さもない、「楽しかった」思い出を思い返している顔。
うーん、と銀時は悩んだ後、ふとある可能性に行きあたり、それを聞いてみることにする。
「どんなことする遊びなの?」
自分の好きな遊びに興味を持ってもらえたは嬉しそうに寄って来る。
あのね、と語りだしたの言う「ご主人様とペットごっこ」が余りにも予想通り過ぎて、銀時は噴き出してしまった。


「ご主人様の言う事を聞いたら、いっぱい褒めてもらえる遊び!」


きっと最初も総悟はをいじめて遊ぶつもりで始めたのだろう、しかし、
そういう「遊び」だと思っているは言う事を聞いてしまうのだ。素直に。
その上あまりに無茶な事を言い出せば「やめる!」と言われることは必須。
いつの間にか「いじめる」遊びが「褒める」遊びになってしまったのだろう。
仲良さ気にフリスビーで遊ぶ二人の姿が浮かんできて、銀時はくすくすと笑いをもらした。

ぐい、とを片手で引き寄せて、もう片方の手で散らかった玩具の中から赤い首輪を拾い上げる。
それをの目の前でぷらぷらと振れば、彼女の眼は期待に輝いた。

「しゃーねェなァ。俺がご主人様になってやるよ」
「本当!」
「本当。その代り俺の命令はちょっと難しいからなァ」
「頑張る!」

確実にこいつの中では「○○出来るでしょうか?ゲーム」になってやがる。




首輪を付けたを抱き寄せて、わざとらしく「そうだなァ〜」と首をひねる。
「んじゃまず、お前はペットなんだから喋っちゃ駄目な」

「ええっ?」
「はい、アウトー」
「いだっ!!」

おでこの真ん中にデコピンをくらって、涙目ではしゃがみこんだ。

「返事は全部「にゃー」で。ハイ、分かったら返事ー」
「に、にゃー」
「よくできましたー。じゃァ次はねぇ」
「ま、待って!そんだけ?・・・・いっ!!」
「ん?「い」?」
「い・・・いにゃー!」
「いい子いい子」

二発目不貞腐れたの頭をわしゃわしゃとかき回してやる。
はくすぐったそうに首をすぼめ、にゃー!と言った。

「あ、そう言えば今日の夕飯新八いねーんだわ。何作って欲しい?」
「おっ・・・にゃァー」
「チッ・・・・、耐えたか」

あ、危なかった!はふいー、と額の汗をぬぐう。
なるほど、そう言うゲームか。ふふふ!負けん。
「でも本当決めなきゃ駄目だから。何が良いか教えて。「猫語」で」
猫語?!と思いつつも、が体の前で丸を作って、その丸がパカッと割れて、
くるくるしゅっしゅっ、ギザギザのニャーニャーとジェスチャーをすれば、銀時はふむふむと頷いた。

「あいよ、オムライスな」
「す、すニャー!!」
「ぶっ・・・!なんだよ「すニャー」って、お前・・!」
「にゃ、にゃー!」
「わっ、わか、わかってるって・・・くく・・・!「凄ェ」と「にゃー」が混ざったんだろ」
「うにゃ!」
「ハイということでアウトー」
「ぎにゃ!!」

額を押さえて跪くに、銀時は御満悦だ。
言葉が全て「にゃー」だったとして、この自分がのジェスチャーを解読出来ないとでも?

「ほれ、喉が渇いたからイチゴ牛乳持ってこーい」
「・・・にゃーあ!」
「バカって言った方がバカですぅぅー」
「ふしゃー!」

ぶふっ。
「ふしゃー」か。「ふしゃー」はセーフだな。




夕暮れ。カァカァとうるさいカラスの声に目を覚ます。ゆらゆらと体を揺すられる感覚。
「銀さん。ちょっと銀さん、起きてくださいよ」
起きるヨロシ!」
なんだ、うるさいカラスは新八と神楽だったか。なんて思いながらゆっくりと体を持ち上げる。
結局あの後一緒にイチゴ牛乳を飲みながらTVを見て、そのあとソファーでお昼寝したのだ。

「ふあ・・・あ?おめー新八ィ今日は戻らねェんじゃなかったか」
「タカチンがはしゃぎすぎて貧血で倒れたんで、今日はお開きになりました。それより・・・」

なんですか、あれ。

そう言われて指差された方向を向いて、銀時は停止する。
床に散らばったままで放置されているのは、が玩具箱から出した道具達。

「・・・う、む・・」
ー!目を覚ましたアルか!大丈夫かァお前ェェ!銀ちゃんに変な事されたアルかァ!」
「か、神楽ちゃぁーん、これはちが・・」
「うにゃーん!(おかえりおねーちゃん!)」

銀時の命令「猫語」を忠実に守りながら神楽に抱きついたに、その場の全員にぴしゃーん!と雷が落ちる。
向けられるのは、2人分の冷たい視線。

・・・!銀ちゃんにいたぶられて言葉も忘れたアルか・・・」
「ちがちがちがうぅぅっ!これはアレ、ゲームだから!そうそう、躾けゲーム!」
「ほぉー、子猫一匹しつけるにしては随分とゴツい躾け道具たちですねぇ・・・」
「新八くーん?!こ、怖いよ?!アレ、いつもの新八くんどこォ?!」
「にゃー?」

死にさらせ!!

その日の夕食は、新八特性オムライス・銀時のケチャップ添え、だったそうな。


ちなみに余談だが、次の日、昨日の癖が抜けずについ出会い頭に、「にゃんにゃんにゃぁー!!」と「猫語」を発したところ、
待ち合わせをしていた遊び相手がキュン死したとか、してないとか。







はいお疲れ様でした!20000hitリク第二弾、「銀すぷ番外編で、ぎんちゃんとイチャつくヒロイン」でした。
ヒロインは遊び相手の総悟にたくさんのいらんことを吹きこまれてぎんちゃんを困らせればいいよ。
でも一枚上手な銀ちゃん。みたいな!みたいな!
ねこは、麻雀は、「大三元」しか知りません。花札は昔大好きで良くやってました。ケータイゲームのを(オイ
こんなものでよろしかったら貰ってやってください*^^*


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