「テメェェェェエ総悟ォォォオオ!!いい加減見回り行って来い!!」
なんて鬼の副長に怒鳴られて、しぶしぶ総悟は真選組屯所を出た。
昨日の大雪で外は一面銀世界。例年まれにみる豪雪で、普段は出番のない除雪車が戸惑いがちに道を走っている。
と、玄関を出たところで、今屯所の門をくぐって外に出て行かんとする見知った背中を発見した。
「ほい」
「ホギャァァァァァァァアアアアアアア!!!」
「うーす姉さん、お出かけですかィ」
こっそり近づいて、その見知った背中の中に雪玉を詰めてやると、案の定は大きな叫び声を上げた。
あたふた背中に入った雪を追いだそうと、その場でくるくる回る姿はなんとも滑稽だ。おもしれえ。
「だーかーらー!いい加減こういう悪戯止めてくださいってば!」
「今からお出かけですかィ。俺の話聞いてやした?」
「それはこっちのセリフですけど?!何回言ったら分かってくれるんですか!」
「失礼な。俺ァあんたの叫び声はいつも真剣に聞いてますぜィ」
ぷい、と何も言わずに歩きだしていってしまったを、やれやれと言った表情で総悟が追う。
まったく、気難しい姉さんだ。
ぽそり、わざと聞こえるようにつぶやいたその言葉が聞こえたらしいが半目で振り返りながら睨みつけてくる。
総悟は可愛らしく首をかしげながら、にっこりとほほ笑んだ。
**雪魂-ゆきだま-〜とある雪の日の悲劇〜**
の業務はは本日休みである。
そんな彼女が出かけていくとしたら、その理由として考えられるものはそれほど多くない。
やっぱりな。総悟は目の前の男をゆっくりと見やった。
「よォ。悪ィな、急に呼びだしちまって」
そう言って目の前の銀髪はへらりと表情を崩す。
いいですよ。ともにへらと笑みを零した。けっ、ぶっさいくな笑い方。
ふと殺気を感じて、総悟は傍らの娘の着物の裾をぐいと引っ張った。
おっとっと、とバランスを崩してよろけこんだ娘の顔面に、見事に雪玉がはじける。
「ぶあ!」
「何すんでィ」
「何でおめーがいんだよドSゥ。一緒にあそぼって呼んだのはだけネ!おめーはお呼びじゃねーんだヨ」
「まぁまぁ神楽ちゃん」
顔中雪まみれにしたを、銀時が着物の裾で拭ってやる。
寒さでほっぺたと鼻の頭を真っ赤にしたの頭を撫でながら、銀時はにやりと総悟に視線を向けた。
そーだなァ。雪合戦、奇数じゃ上手く分かれないからを読んだわけで。残念だったね沖田君。
ざけんじゃねーよ。視線を受け取った総悟が銀時を睨み返す。パワーバランス考えろや。
万事屋達がを単なる「数合わせ」で呼んだわけではないことなどお見通しである。
そうじゃなくても事あるごとに何かしら理由を付けてを呼び出すのだ。
「仲良しですから」
その言葉はが言うそれと万事屋の旦那の言うそれでは含みが違う。
そこまで考えたところで、冷たい木枯らしがぴゅう、と吹いた。
「へっくし!」
「ああもう、そんな恰好で出てきて・・・・・」
風邪ひきますよ。
そんなことを言いながら、がしゅるりと抜いた自分のマフラーを総悟の首に巻き直す。
その一連の仕草が物凄く自然で、呆気に取られながら万事屋達の見つめる先で、総悟もまたぽかんとなされるがままになっていた。
自分は寒くないのかとか、の付けていた可愛らしいピンクのマフラーが総悟にびっくりするくらい似あわないとか、そういう問題ではない。
無意識と言うところが恐ろしい。
なんだなんだ。沖田総悟のくせに嬉しそうに頬なんて染めちゃって。きもい。
そんなことを想う銀時の横で、神楽もまたむうっ、と顔をしかめさせた。
「ー私も・・・ふぇっ・・ふぁ・・・っぶえっくぉぼろしゃァアアアアア!!!」
突然吐いた神楽を、総悟は見つめることしかできない。
「キャアアアアアア!神楽お前何やってんのォォーーーーー!!」
「神楽ちゃぁぁぁぁんんん!大丈夫?!」
慌てて神楽に飛びつき背中を撫でてやる。
その隙間からにやりと悪い笑みでこちらを伺ってきた神楽に、なんとも言えない気持ちになる。
なにその「勝った!」みたいなどや顔。
俺は負けたのか?寧ろお前はそれで勝ったと言っていいのか?
負けじゃね?寧ろそれお前が負けじゃね??
総悟はいくらに構って欲しいからといって道端で吐く勇気はないし、申し訳ないがそんな義理もない。
これがに対する思い入れの強さの差だ!と言われるなら、それはそれで負けでいい。
「んじゃー、姉さん、俺は見回り行ってきまさぁ」
の巻いてくれたピンクのマフラーをくい、と上げて鼻元まで隠し、総悟はくるりと回れ右をして歩きだす。
・・あったかい。
「はしゃぐのもいいですが、暗くなる前に戻って来なせェよ」
そんな言葉を聞きながら歩いてゆく黒い背中を見送って、銀時は心中で呟いた。
マフラーで隠した下では、きっと恐ろしくニヤけてるんだろう、あのガキは。
万事屋とやってきた公園は積もりに積もった雪がきれいに残っていて、砂場も遊具も綺麗に隠れた一面銀世界だった。
ざくざくと踏みならして歩いた後がきれーに足後になる。
子供達にはそれがたまらなく楽しいようで、新八と神楽はきゃいきゃい言いながら飛び跳ねてかけて行った。
それをほほえましく眺めていると、すっ、と首を温かいものが覆う。
「・・・銀さん?」
「おう、オメー風邪引かせたらお宅んトコのにぃにが何言ってくるか分かんねーからな」
「にぃにって何ですかにぃにって・・・」
でも、銀さんが風邪引いちゃっても困りますよぅ。
自分のマフラーをの首に巻いてくれている銀時を見ながら零せば、「だいじょーぶ。馬鹿は風邪ひかねーから」と帰ってきて、自分で言っちゃったよこの人、なんて思いながらはくすくすと笑った。
「なーに笑ってんの。まァた「お兄ちゃん」の思い出関連?」
「違いますよ、「お兄ちゃん」といたのは夏の間だけですもん」
「あっそ」
「今のは純粋に銀さんに向けて笑ってたんですよ」
マフラー、ありがとうございます。えへへ、銀さん、優しい。
そんなことを「純粋に銀時に向けて」言うに、銀時の頬もどうしようもなく緩む。
「嬉しい事言ってくれちゃってコイツぅ」とその髪をかき混ぜてやれば、娘はにゃー!と笑いながら嫌がった。
「よォーし!そんじゃー始めるぞォ!雪合戦!」
「きゃほォー!待ってましたァ!」
「チームはどうしますか」
「丁度二組に分かれてるからそれでいーんじゃね」
「負けた方は勝った方に酢昆布を献上するでいいアルか!」
「それで喜ぶのお前だけだろ、イチゴ牛乳へ変更を要求する」
「アンタも一緒じゃないですか!」
ぎゃぁぎゃぁとしばらく騒いだ後、結局「敗者は勝者に何か奢る」で落ち着いた。
手袋を装着した手をぐ、ぱ、と握ったり開いたりしながら、年甲斐にもなくわくわくする。
皆で集まって雪合戦なんて、子供の時以来だ。ちなみにその時は運動音痴の自分は張り切るはいいが何もできなかった訳だが。
「時間は無制限。石とかを仕込むのはNG、雪玉が当たって眼鏡の割れた奴は失格だ!」
「待てェェェェエエエ!!!眼鏡の割れた奴は失格って、雪玉当って眼鏡割れるの僕くらいしか、いな」
「「始めェェェェェええええ!!」」
新八の声を無視して高々と上げられた開始の合図と同時に、銀時と神楽の渾身の一球が同時に弾け、
両方のホワイトサイクロンが新八のメガネのレンズを片方ずつ叩き割った。
「何でだァァァァァァアアアあああ!!!」
「キャプテン・神楽。どうかわたくしめを貴女様の配下に」
「うむ、苦しゅうない。戦士銀時よ、我の酢昆布のためにあの小娘を蹴散らしてしまいなさい、ほっほっほ!」
突然神楽の足元に跪きこうべを垂れる銀時と、倒れて動かなくなった新八の上に優雅に腰をおろし足を組む神楽に、ワケの分からないままは微動だに出来ず、見守ることしかできない。
しかし、とりあえず理解出来たこともある。
あの銀髪、開始2秒で裏切りやがったァァァァァァ!!
しかも神楽も神楽で何故いきなり味方の新八を攻撃したのか。
新八くんあんなにやる気だったのに。あんなにワクワク楽しそうにしてたのに。
ゆらり。神楽の命を受けた忠実なる「戦士」銀時が、顔にどす黒い影を浮かべながらこちらを見やる。
「さァてちゃァん、遊びはしめぇだァ。ここからはお兄さんの一方的ななぶりタイムの始まりだァ」
「ここからはって遊びの時間たった2秒?!始まりって寧ろまだ何も始まってないですけど!?始まりが終わりですけどォォ!!」
「ごちゃごちゃうるせぇぇぇ!」
「ひゃぁぁぁああ!」
びゅんっ、と銀時の投げた雪玉が頬すれすれを通り過ぎる。
わわわ、とよろけたは、そのままその場に尻もちをついてぽてん、と倒れた。
「ふぎゃんっ」
わあああああ!ふぎゃんっ、頂きましたぁぁぁァアア!!銀時は頬を染める。
恐らく総悟と同じ種類のソレ。牽制役の新八も始末したことだし!
しかも沖田総悟によって“しつけ”された彼女はちょっとやそっとじゃ壊れないことを銀時は知っている。
持って生まれた素質も十分にあるのだろうけれど。
「ひぃぃいい!」
「ホラホラァ〜もっと気張って避けねーと当たっちまうぜぇ?」
「うきゃあっ!ちょ、ぎ、銀さん球早・・あっ、あぶな・・!」
「大丈夫大丈夫、当てる時には弱めるから」
「わざと外してんの?!」
「銀ちゃぁん、何楽しそーな事してるアルかァ。私も仲間に入れるアル」
「Sばっかりか!」
嬉々として大量の雪玉を投げつけて来る銀時と神楽。
ひい!と縮こまって頭を抱えたに、雪玉は当たらなかった。
ゆっくりと瞳を開ける。
そこには・・・・!
「だ、大丈夫・・ですか・・?」
「しっ・・・新八くん・・っ!」
「ってテメーなに王子様気取ってんだコラァ!」
「そうアル!この話見に来てる人誰一人としてオメーなんか求めてねーんだヨォ!」
「酷いなその言い方!」
両手を上げてを庇うように立ったのは、眼鏡の割れてしまった新八であった。
「つかなんで「翼の折れてしまった天使」みたいな言い回しになってんの?!てめーそんなカッコいいキャラじゃねーだろがァ!」
「新八のくせに生意気ネ!」
「手加減はいらねェ、やっちまえぇぇぇぇええ!」
まるでマシンガンのように猛スピードで大量の雪玉が投げつけられるなか、必死の形相の新八がに振り向く。
「僕のことは良いから、行ってください!!」
行くってどこにだ?!
いいよ!いい加減私が雪玉に当って、それで負けでいいから!
「・・・でも・・」
「いいから、新八くんがしもやけになっちゃうよ。ほら、どいて・・・・・」
ドシャァアア!!
「あ」
「やべ」
顔面に思いっきり雪玉がはじけた。
それも、普通の雪玉ではない。
いい加減新八がウザくなった銀時と神楽の作った、人の頭ほどもある特性の巨大玉。
体積も重さもあるそれを受けたの頭は見事に後ろにのけぞる。
隣の新八が青い顔で見ているが、雪で埋もれたからは何も見えてないのだろう。
その威力は凄まじいもので、反動での体が少し宙に浮いた。
とすっ。
しかし、そのまま重力に従って後ろに倒れ込むであろうの体は、何者かによって支えられた。
ぐしぐしと乱暴に顔を拭って見上げれば、
「大丈夫?」
「あ、う、さ、退くん・・・?」
「もー、遊ぶにしてもちょっとはしゃぎ過ぎだよう」
真選組の監察青年、山崎退。彼は呆れたような苦笑いで・・・否、微妙にひきつらせた笑顔での背中を支えている。
ふっと前方にいる万事屋さん達の様子を伺えば、三人が三人とも顔を真っ青にして一目散に踵を返し逃げていた。
ぞくり、と背中が震える。
先程まで雪の中仰向けに倒れていたので背中からお尻までぐっちょり冷たく湿っているせいだ、とその時のは思った。
「もぉー、遊ぶにしてもちょっとはしゃぎ過ぎだよう」
「え、あぁ、うん、そうだね・・?」
「聞こえました?あくまで「遊び」ですからね、「遊び」。聞こえてます・・・?」
「副長」
おや、と思って山崎の体の横から彼の後ろを伺えば、
そこには明らかに顔をひきつらせた、真選組の「鬼」の姿。
ちなみに、その手にはいつでも発射できる状態のバズーカ・・・・あ、今撃った。
「ウチの猫に何してんだァァァァァアアア!!!」
横をすり抜けて行ったバズーカのたまに、ぶあっと吹いた風がの髪の毛と首に巻いてあったマフラーの端をはたはたとゆらす。
そのマフラーの持ち主は、今頃後ろで黒焦げになっていることだろう。
はい、お疲れ様でしたー!
20000hitリクで、「屯所の猫で万事屋さんとのお話」でした!
見事に出番キラーの餌食に+最後wwwみたいな感じになってますが、あれです。
別に土方さんはヒロインが万事屋さんと遊ぶ分には全然問題ないのですが、今回は、何かがきっと恐ろしく気にくわなかったんでしょう。
それは丁度顔面に直撃してしまった雪玉が巨大だったことかもしれませんし、
背中からお尻がぐっしょぐしょだった事かも知れませんし、
・・・・付けてるマフラーがピンクのじゃなくて万事屋さんのだったから、かもしれませんしw
こんなんですみません。あれ、わたし万事屋のみんな大好きなはずなのに、どうしてこうも書くのが難しいのか。
良かったら貰ってやってください。リクありがとうでした!
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