ピシャァァァン、ゴロゴロ・・・
轟く雷鳴、激しく打ち付ける雨。
そんな中、ファミレス中央の大人数席で、よく知るメンバーたちがキリリ!と向かい合った。

ざざんっ!

ピカアッ!!

まばゆく光った雷で全員の顔が影になる。
ぐるんぐるんと目を回しながら、山崎がひどく穏やかな声を出した。

「エー本日は、お日柄もよく・・・」

ぴしゃーん!





「えええええ?!ちょっと待って?!」

真先にツッコミの声をあげたのは局長近藤だった。
え?え?カワイイ屯所の猫の晴れ舞台だと聞いてお父さん今日は張り切ってきたのに。
なんで万事屋?なんでファミレス?

「なんでザキが仲人やってんのォ?!」

万事屋サイドの席でカラクリ娘がほくそえむ。隣には少々緊張気味の銀時と、その向こうに目を輝かせた神楽と新八が座っている。
対して真選組サイドは、いつもよりも着飾ったの隣に難しい顔をして恐ろしく静かな土方と、反対側にはおろおろした近藤。
近藤の隣にかけた総悟は納得がいかないようなぶすーっとした表情で、近藤とを挟んで向こう側の土方を睨み付けている。
・・・当たり前だ。自他ともに認める犬猿の仲の旦那が、自他ともに認めるほどに可愛がっている妹分を「ちょーだい」と手を差し出しているのに。
なんで何も言わない!

「感謝いたします山崎さん。・・・・・うまくやってくださったようですね」

山崎を眺めつつ、カラクリ家政婦がすう、と目を細めた。その瞳にはうっすらと「T」「A」「M」の重なったような図形が浮かび上がっている。
電子ドラッグによって洗脳された山崎退はきちんと重要なことを心得ていた。
と銀時をお見合いさせんとするにあたって最大の障害は一番最初に丸め込み済みなのだ!





「はァ?!アイツが万事屋と見合い?!ふざけてんのか!!」
「駄目ですか」
「駄目に決まってんだろうがアホ!何考えてんだあの野郎クソテンパ!!」

前の日の晩の話である。副長室、自分の机を思いっきり叩いた土方に、山崎はビクともせずにしれっと答える。

「彼女の気持ちも聞かないうちから頭ごなしに否定するんですか」
「ア?!」
「前に見合いの話が合った時のこと、覚えてますよね?」

・・・!土方は言葉を詰まらせる。
好きでもない相手との見合い話。立場上とはいえ自分が「した方がいい」と言ったがためには二つ返事でそれを承諾したのだった。
嫌なことはキチンと嫌と言う性質だと思っていたのに。アレの意思など関係ない、土方が何か言った瞬間にソレがアイツの意思になる、と、総悟が言った言葉が思い起こされる。
例えるなら。
忙しい雑用仕事の合間でも土方が買ってこいと言えばダッシュでたばこを買ってくる。
家でゴロゴロしたい休日も土方がついてこいと言えば見たくもない漢純情ヤクザ者の映画を見に行く。
ジャンプが読みたいはずなのにマガジンを読む。土方スペシャルを青い顔をして食べる。

「お前一回総悟に抱かれてみろよ」

恐ろしい話たとえば、たとえば土方がもしも万が一こんなことを言おうものならば、はあっけなくその身を差し出してしまうのだ。
イヤ知らんけど。言った事ないから分からんけど。
しかし何となくあの娘ならやりそうだと思ってしまうあたりが恐ろしい。今回の話だって・・・・
例え心から好いている相手だとしても、自分が「NO」と言えばこの娘は心の中では泣く泣く別れるのだろうか?

俺はねェ、副長・・・。
目を細めて山崎が静かに語りだす。もちろんその瞳は完全に中毒っているのだけれど。
俺はね、あの子には幸せになってほしいんですよ。彼女を想ってガミガミ縛り付けるんじゃなく、寧ろ彼女の意見を尊重して・・・。

「本当に彼女のことが大事なら、どんな彼女の事でも受け止めてやるのが「義兄」のつとめなんじゃないですか・・・?」
「・・・・・・!!(がーん)」
「見守ってあげましょうよ・・・・旦那と駆け落ちして屯所を出て行ってしまう前に」
「駆け落ちッ?!」


うーんうーんと頭を押さえながら嫌な汗を垂らす土方に、隣のが声をかける。「大丈夫ですか?土方さん?大丈夫ですか??」
はっと顔を上げた土方はの心配そうな顔を見て、余計にだらだらと汗をかきながら慌てて視線を逸らした。
ちなみにそらした視線の先には、指の腹に「OFF」と書かれた手をぱちんとならすカラクリ娘と、白目をむいてひっくり返る監察男の姿が見えたそうな。



「つか山崎んときはこっちが高級料亭用意したにもかかわらず何でィファミレスって。舐めてんのかコラ」
「アアン?出された料理一口も食わなかったくせしてよく言うアル!今回も自分で作れヨもんじゃ!」
「てめーも作ってたじゃねーか!」
「そうだぞ万事屋ァ!いくら金がないとはいえ、それにしたってこんな席が見合いの場とはいただけん。奥に座った人がドリンクバーに立ちづらいだろうが!」

そこォ?!自分の代わりに難癖つける局長隊長を心の中で応援していた土方が思わずツッコミを上げる。
その向かいで、新八と神楽は若干興奮気味に銀時を急かしていた。

「なんか喋れヨ銀ちゃん!話題ふれヨ!」
「そうですよ銀さん、よくわかんないけどこんなチャンス滅多にないですよ!」
がお姉ちゃんになってくれるなんて超嬉しいヨ!」
「コラァ聞け!てめーらにねーさんはやらねーぞ!」
「残念だったアルなァドエスゥ!オメーのねーちゃんは寿退社アルゥ!」
「ハイ、ただでさえ金欠なのに嫁さんの職奪ってどう暮らしたててくんですかァ〜。んな向う見ずな輩のもとにウチの姉さんはやれません〜」

帳面にばってんを書き加えた総悟に神楽がむっとなる。
今にも総悟に食い掛かりそうな神楽をがっしりと抑え込みながら、銀時はじいい、と机の手前を見つめていた。

まじか。まじでか。
ほんとに開催されちゃったよお見合い。てか、え?マジでか。俺と、が。え?
まじで?
縮こまってる場合じゃねェ、たて!男ぎんときよ!この機会に何としてでもを振り向かせるのだ!
でも、畜生、こんな時に限って。話題が見つからない。いつもは適当なことすぐに口に出てくるのに。

「銀さん」
「はっ」

顔を上げると、そこには笑顔でメニューのデザートページを差し出すがいた。
どうしますか?体調悪いなら、ミニパフェでもいきましょうか!
そう言いながらコロンと笑うに、じいんと心が温かくなる。
・・・!流石俺の!!銀さんお前と一緒ならこの先どんな苦難でも乗り越えていけるとここに誓います!
しかし、銀時が返事をする前に横やりを入れたのは、隣のチャイナ少女だった。

「アラー。食事に来たのにいきなりデザートから頼むんですかァーこっちはお腹いっぱい食べたいんですけどォー」


・・・・・何言ってんの神楽お前ぇぇええーーー!

「そこは女子力見せつけるためにもサラダか、コストパフォーマンスの高いフライドポテトをチョイスするところなんじゃないですかァー」

お前が女子力を語るな!ポテトはオメーが食いてーだけだろーが!

「はァー?何言ってんでしょーかねィ。今のは甘党の旦那を気遣っての事だろーがそんなことも分からねェとは旦那もそこが知れてるっつーかァー」

お前もかァァァ!!そして何故俺になる?!

「・・・銀さん、ツッコミは、もう少し大きい声で言わないと、皆に伝わりませんよ?」

そして新八オマエは何を偉そうにツッコミについて教授してんの?!そのドヤ顔めっちゃむかつくんですけど!!

先ほど書いた帳面のばってんの下にまたなにやら記入しながら渋い顔をする総悟に「料理は質より量なんだよォ!」と食いつく神楽。
ウザい新八は置いておいて、銀時は多少ひきつった笑顔でに向かった。
これくらいがなんだというんだ!外野は放っておいて話題だ話題。


「そ、そ言えばァ、お前いつも買い出ししてっけどオメーも料理作んの?」
「え?えぇ・・・まぁ、隊士さんたちのお昼を作ることもありますが、そんな、私の料理なんて上手じゃないですよ?」
「またまたそんなこと言って」
「ほんとですよう・・・・この前だって(沖田さんの悪戯のせいで)卵焼き焦がしちゃったし・・・」
「だ、大丈夫ですよさん!卵焼き焦がして焦げた卵焼きになるだけまだセンスありますって!!」
「とんでもねェフォローだなそれ」

黙ってしまった屯所の猫に、「銀さん、ここはひねりのきいたフォローで空気を和ませないと!」と新八が振り向く。
そんな空気にした張本人の台詞とは思えねえよ。
力なく、若干傷ついたように苦笑いをもらすを見やれば、隣で総悟が近藤に耳打ちをしていた。

「うわこれぜってえさっきの流れで「料理は質より量だから問題ない」とかひねりのねェ事いうパターンですぜ、見ててみ近藤さん、ぜってー言うぜ」
やりにきぃぃぃい!!
心の中で叫ぶ銀時の隣で、新八と神楽がこちらもひそひそと銀時に話しかける。

「くそっ!これじゃ「料理は質より量だから問題ない」は言えませんよ銀さん」
「イヤ元から言おうとしてねェよ!」
「ヨシ、ここはもうひとひねり加えて「その時は君を美味しくいただくから問題ないヨ」で行くネ!」
「イヤ問題ありまくりだろそれェ!!?」

ドヤッ!とこちらに向けて親指を立てるチャイナ娘。どんだけ捻り加えてんだよ、パイ生地がナンになっちまうわ!!

「うわ、聞こえちまったァー。旦那アンタやっぱり姉さんのからだだけが目的だったんですねィ。最低でさァ」

ほら見ろ!また厄介な難癖つけられちまうじゃねーか!
今度は最初のばってんの横に何やら書き加えながら、外道でも見るかのような目つきで総悟が銀時を睨む。

「見なせぇ姉さん!男はみんな狼なんでぃ」
「あなたも男ですけどね沖田さん」
「ちなみに女はみんな豚だと思ってます」
「外道だ!!」
「ほれほれどうすんだァ、あと「又」がついたらもう1個完成しちまうぜィ、「殺」が」
「オメーはさっきから何を書いとったんじゃァァァ!!」
「ひ、じ、か、た、・・と」
「そして誰採点してんだァァァ!!」


ぎゃぁぎゃぁと騒がしく暴れる土方総悟。
「誰が豚じゃァチンピラチワワがァ!」と神楽も乱入して大乱闘状態に発展した真選組席を呆れて見やりながら、銀時は今がチャンスとちょいちょいを手招きで呼ぶ。
「お前が作ったもんなら何でも喜んで食うよ俺」と言えば、はぼっと耳まで赤くなった。

「ななな、何言うんですか銀さん、急に!今日の銀さんおかしいですよ!」
「俺はいたって真面目だ。料理ができなくても問題ねェ、、う、う、ウチに、こ・・」
「いえ、問題ありかと」
「・・・えっ?」

「少なくともお登勢様や私の満足する味噌汁を作っていただかなくては、坂田家に迎え入れることなどできませんわ」
くるりと振り向いた銀時との視線の先にいたのは、どこから取り出したか知的なメガネをかけつつ帳面にチェックを入れるたまの姿。


おっ・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・お前もォォォオオオオ??!


銀時の心の叫びが彼の心の中だけに響き渡る。
つかお前、ジミー使ってこのお見合いの場セッティングしたのももしかしてソレやりたかっただけ?!なにひょっとしてこないだの見合いの件根に持ってんの?!

「きゃああああああ!たまさんっ!」
「えええええ!いきなり何してんのお前ぇぇぇ!!」

うぼぉぇぇぇぇぇぇ・・・・・

突然お冷のグラスを口元に持っていき震えながら前屈みになったたまは、しばらくすると弱弱しく起き上がってコップに入った液体を二人の目の前に差し出す。
透明なグラスの中は茶色のMOZAIKUで満ちていた。

「・・・ぜー、ひゅー、ぜー、・・・・・・どうです」

「どーですじゃねェェェェ!!!何がしたいんだお前!!」
「貴女に、これを超える味噌汁が作れますか」
「作れるかァ!!作れたら逆に退くわ!!」

もんじゃの時と違って完全に液体だからある意味たちが悪い。
「これくらいの味が出せるようになるまで、さんには花嫁修行が必要ですね」鼻を鳴らすポンコツに心の底からツッコミたい。
口から味噌汁ってどんな嫁?!お前が空気読め!!

「まあ、一口どうぞ銀時様」
「いらねーんだけど飲みたくねーんだけど!!」
「そう言わずに。会心の出来です」
「それむしろ会心の一撃食らった時に口から零れ落ちる何かじゃねェのォォォ!!」

俺じゃなくて皆さんに振る舞ってやれよ!オイ神楽ァ!お前の信条質より量だろォ!!
そう言って真選組座席を見やれば、「イヤ、俺ら自分で作ったんでいいです」と青い顔をした近藤と総悟。
そしてその奥では、いつの間にか目を覚ましたらしき山崎に背中をさすられながらびちゃびちゃと、チャイナ娘が大きなポリバケツに頭を突っ込んでいる。

「そっ・・そう、アル・・・・わたしは、質、より、りょ・・ぉ・・おぼろしゃー!」
「てっ・・・店員さァーん!バケツもう一個お代わりィ!!」
「どんだけ量吐いてんだお前ェェェェ!!」


ハッ・・!
ツッコミに夢中ですっかり忘れていた!
バット前を向けば、立ち上がったの姿。


「ちょっと・・・涼しい風に当たって・・・・・

・・・・・・・味噌汁、作ってきます・・」


そう言ってトイレに駆け出したを止める前に、銀時も自分の口元を押さえた。



次の日のニュース。
江戸のとあるファミレスで集団嘔吐が起こり、店舗側の衛生管理不足による食中毒ではないかと思われ保健所による調査が行われたが、未だ原因は不明なんだとか。
店長含む店員数名に事情聴取をしたところ、「もう味噌汁なんて作れない」と、わけのわからないことを応えていたという。






はい、お疲れ様でした。
下品っつーかきたなくてごめんなさい。
リクエストで、
「原作の山崎とたまさんの見合話、屯所の猫バージョン」でしたっ!
お相手は誰でも、ということでしたので銀さんバージョンに。「罰ゲームみたいなものでたまさんのもんじゃ焼きを食べるという、なんかそんなかんじで突っ走っていただけないでしょうか!」とのことでしたので、(もんじゃは出てきませんでしたが、)カオスに突っ走らせてもらいましたァァ!
個人的に「問題ありまくりだろソレ」のツッコミが好きですw
本当にすみませんもぐにゃんにはお祝いであんな素敵なもの貰ったのに、こんなものでよかったらもらっておぼろしゃぁぁぁ。

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