俺と君は友達で、俺は君のことが大好きだけれど、
そりゃ時には嫌気だってさすさ。イライラだってするさ。所詮男女の友情なんてこんなものだよ。

君が何にもわかってなさすぎて。
まあこっちが故意に隠してるんだけれども。
それにしてもさ、どうかと思うわけよ。

イキナリさあ。

「退くん、ちゅーして欲しいの」
・・・・なんてさぁ・・・。

あーーー、イライライライラ・・・・







**所詮男女の友情なんてこんなものだよ**







「・・・はあ?」
間抜けな声をあげながら書類に向かっていた山崎が顔を上げる。
夜更けの監察室には山崎とだけだ。
見上げた先のは申し訳なさそうに眉を垂れながら、それでもえへっ、と首をかしげて苦笑い。
この子の前じゃ温厚な山崎退を通しているのに、それでも流石にブチ切れるかと思った。ここ数日たまった書類のせいでろくに寝てない。

罰ゲーム。

「・・・・賭けトランプ・・・はぁ、なんつーもんに参加してんの君は・・」
「違うもん、途中まではフツーの大富豪だったんだよ?」
「参加者は」
「えっと、原田さんに長倉さんに、斎藤さんでしょ、あと吉田さんと・・・」
「いや、もういい・・・で?・・・誰でもいいからちゅーして来いと」
「ボロ雑巾のように負けました」
「・・・・、あのねえ」

君は女の子なんだよ?もう少しくらい甘すぎるそのガード、引き締めてもいいんじゃないの?
だだの一つでもこねればに甘い隊士の連中は直ぐに退いただろう。
とりあえず原田あとでぶっ殺す。そして吉村くん君が居ながらなぜそうなった。俺は君を信じてたのに。

「そんな口約束、よくもまァ律儀に守るもんだねぇ誰も見張ってないのに・・・・口裏くらい合わせるよ?」
「ぁー・・・いやぁ、それが・・・・途中から沖田さんも参戦してきてですね・・・」
「あー理解理解」
「斎藤さんや吉村さんは止めてくださったんですけど」

「沖田総悟」の名が出たことによって、山崎は今度こそがっくしと肩を落とした。そうか、吉村くん。君は頑張ってくれたんだね。うん、俺は信じてたよ。ありがとうそして残念だな原田死ぬのはお前一人になった。
しかしながらそれなら色々と辻褄は合う。
女に甘いあの連中でこんな罰ゲームが強行される理由も、そんな口約束の罰ゲームをが律儀に遂行しようとする理由も。
しなかったらしなかったで、(主に隊長からの)別の罰ゲームが待っているのだろう。否、おそらくこれはしてもしなくても同じだ。
溜息を吐きながらちらりとの唇を見やって、山崎は頭を押さえてもう一度大きく息を吐いた。はああ。

「・・隊長の事だから、ただしてきましたってだけじゃ納得せんのでしょ、どうせ」
「あはは、鋭いね退くん・・・実は」

へらへら笑いながらが取り出したのはビデオカメラだった。証拠にコレで撮ってこいと。
本気で頭が痛くなり始める。ふざけんなばか。
ふざけんな、と思うのはではなく総悟に対してだ。今回の場合あの男の悪意はではなく寧ろ山崎に向いている。
が山崎のところへ来ると踏んで、その上で山崎がこうやって困るのを見越して楽しんでいるのだ。
いっそのこと仕方なしにちゅーしてその後親友という関係がギクシャクすればいい、などというところまで目論んでいるであろう自分の上司に、危うく殺意がわきそうだ。
・・・そして、目の前の困った君にも。

「だから、退くん、ちゅーして欲しいの」

そーやってさらっと軽く言ってくれるけれど。
俺が君のお願いを断れないことくらい、そろそろわかってるよね?
「貸して」と言って手を差し出せば、君は「ありがとう」と笑顔で手に持ったカメラを渡してくれた。
その手をつかんで引っ張る。


「んっ?!」


体の一部が勢いよくぶつかったのに柔らかいクッション材のおかげで音はない。音もしない。
ぽかーんと見開かれた瞳を覗き込みながら、山崎はゆっくりとくっついていた場所を少しだけ離した。

「・・・ん、な、」

その頬に赤みがさす前にもう一度その場所をふさぐ。今度はさっきよりも随分乱暴に。
カメラなど放ってその背に回した腕で腰と後頭部を支え、隙間もできないほど押し付ける。
咄嗟にの腕が山崎との間に割り込みその体をグイと押し返したのは、いたって当然のことだ。

・・・・まぁ、びくともしないけどね。

「ん・・・!んん・・・ぅ・・!!」
「んー・・?」

力技でこじ開けた口の中に舌を這わす。
の体がびくりと飛び上がり一気に抵抗が激しくなったが、そんなもの気にも留めずに山崎はの体の上にのしかかった。
本当に抵抗する気あるのかなぁこの女。
そんなことを他人事で考えながら、暴れるの両手を片手でくくって頭の上の畳に押し付ける。
驚きに見開かれた目の触れるか触れないかほどすぐ近くで、山崎は低い声を出した。

「なーに驚いてんの、俺を何だと思ってるわけ?これでも一応真選組の隊士やってんだよ?」
「・・・・・??!」
「君が全身の力こめたって、片手でお釣りがくる」
「ま、待っ・・・退く、か、カメラ、撮って、な・・・」
「あーそうだっけ。じゃぁもっかいチューしないとねぇ」
「ん、ふっ・・・!」

返事も待たずに“もっかい”が来る。もちろんカメラなどほったらかしだ。
当たり前のように侵入してきた山崎の舌が、のそれをからめ捕ってきつく吸い上げた。
逃れようと腕を動かそうとしてみても、大きな鋲打機で固定されたようにびくとも動かない。
触れている体はいつもの親友からは想像もできないくらい固くて冷たかった。

「はっ・・・はぁ、な、なに・・・?やだ、退く、やめ」
「ナニはこっちの台詞。君が『ちゅーして』なんて言うからチューしてやってんだろ」
「や、やだ、何か、怒ってる・・・?こ、怖い・・・」
「怖くて結構」
「ひっ!や、やだやだ!さがる、く、やめてよ・・・」
「やめない」

体格差で畳に抑え込みながら、つつ・・と着物越しに大きな手がの太ももを撫でる。
無駄と分かっていても必死に体をよじれば、くくられている手がぎゅぅと握りつぶされた。痛みに涙が出る。

「やっ、やだぁ!」
「やじゃないのー」
「ごめんっ・・ごめんなさい・・っ、迷惑かけたの、謝るからぁ・・・ごめんなさ・・っ」
「そーそ、もっと謝りな、許さないけど」
「退くん!」
「ぜーんぜんダメ」

だって君何が悪かったのか全く分かってないでしょう。
感情のない声で耳元でそうささやけば、はギュッと目を瞑る。
端からあふれた涙がぽろりと頬を伝って畳に染みを作った。


「あららー泣かせちゃった?」
「・・・ぅぅ・・!」
「俺との罰ゲーム諦めて他の奴んとこ行ってみる?絶対おんなじことされるから」
「・・・・さいてい・・!」

ぼそりとつぶやかれた言葉に思わず山崎の口元が吊り上った。目を瞑っているせいでから見えていないのが幸運か。
さいてい、さいていか。いいねぇ。
まさか親友だと思ってた子にそんな言葉を吐かれる日がこようとは。
ぞくぞくする。

「ねぇ、もっと嫌がってよ」

普段聞かせたことないような低い声で耳元に呻れば、の体はかたかたと震え始めた。
ぺろりと耳元を舐めてやる。やあ、と上がった彼女の声は完全にかすれて、涙声だった。


「やだ、やだぁ・・・!」
「かわいーかわいーちゃん。イヤなら副長のところに泣きつけばいいんだよ?」
「うう・・・?」
「俺に酷い目に合わされたって、副長に泣きつきなよ。あはは、そしたら俺流石にマジで切腹かなァ?」

は何も言えない。目の前の山崎は笑っている。知らない顔で。笑ってる。

「それはなかったとしても、一生顔合わせるなとかね。あの人なら言いそうだ」
「・・そんな、の・・」
「無理じゃないよ、俺出来るもん。どっちにしろ君と会うのはこれが最後だねぇ、バイバイちゃん」

あれ、ほら副長室行くんじゃないの?せっかく手、放してあげたのに。
冷たく笑う山崎の下では自由になった両手で顔を抱えた。どうしたらいいかわからず動けない。そりゃ当然だろう、そんな可愛い猫の姿に思わず口元がゆがむ。
あ、そうだ。ピピッ、と夜の観察室に響くのは、聞き慣れない電子音。
ハッと開いたの眼に映ったのは、大親友の見たこともない瞳だった。
手に持ったビデオカメラをこちらに向け、にっこりほほ笑んだ青年が近寄ってくる。

「そう言えば、引き受けたからにはちゃんと撮らなきゃね?皆に見せてやればいい。一気に無言になるよ、絶対」
「・・や・・・やだ・・・やだやだやだ・・!」
「沖田さんとか真っ青になって一番に斬り殺しに来そうなんだ"けど"なぁ・・・」
「さがる、く・・・」

どん、顔の横に音を立てて手を突かれて、はびくりと体をこわばらせた。

「まーいっか。んじゃチューしよっか、カメラに向かって濃いぃヤツ」
「・・・・・や・・!」







しかし、次に振ってきたのは、
・・・・・・あったかいてのひら。

「あー、よしよし、」
「ぅ、・・ふ、ぇ・・・」
「ごめんねーちょっと怖がらせすぎちゃったねぇ」
「・・・、っひく・・っ」
「大丈夫大丈夫、俺なんもする気ないから・・・ほら泣かないで」

抱き起されて、その胸にぎゅー、と頭を押し付けられる。
片方の手で頭を撫でながら、まるであやすように、“いつもの”山崎はぽんぽんと背中をたたいてくれた。

「退く、ん・・・」
「んー?なーにちゃん」
「・・・お、怒って・・」
「ないよ。・・もう、君ビビり過ぎ。俺が無理やり君の嫌がることとか、するわけないじゃん」
「・・・だっ、て・・・」
「ああ、これね。録画ボタン押してないから、なんにも撮れてないよ?ほら」

・・にしても、ちゃん本当危機感ないよねぇ・・。
あきれ顔でぐしゃぐしゃと自分の髪をかきながら、山崎は大きくため息をつく。
あのまま本当に俺に襲われるつもりでいたの?舌噛んで逃げるとか、手はいっぱいあったでしょう。
「聞いてる?」と覗き込むようにして訪ねた山崎の問いに帰ってきたのは、何とも情けない呻り声だった。


「・・・う・・」
「・・ちゃん?」
「・・・・・うああああああああんんん!退くんのばかぁぁぁあああ!!」
「いったァ・・・!ハイハイ俺が全部悪ぅござんしたー」
「本当に怖かったんだからァァァァァ!!」

渾身の張り手を甘んじて受け入れる。赤くはれた頬をさすりながらも、山崎はの背中を撫でる手は止めなかった。
ごめんって。でもマジで男ってこんなんばっかだから、気をつけなきゃだめだよ?
気を付け過ぎて男性不信になるレベルじゃぼけぇぇぇ・・・!



「・・・はぁ、それにしても、」

「本当、あそこまで何もしないとは。最後まで襲われてても文句"言えませんよ"?」
「あっ、ああ見えて頑張って力こめてたんだからぁあっ!」
「はいはい、ちゃんはもうちょっと鍛えようねぇ」
「ぅ・・・ね、ねぇ・・本当に、もう、怒ってないの・・・?」

さらりと一瞬冷たく見えた山崎に恐る恐るが問いかける。
山崎はを見ると、いつもの優しい笑顔でニッコリと微笑んだ。
信じてってば。もう怒ってないよ。

「"君に対しては"」









「ええええぇぇぇぇえええっっ?!」

次の日。屯所の廊下を歩いていた総悟はびっくり仰天した。
カラリと晴れた洗濯日和。中庭に立っているのはと山崎。
特に理由はないのだが、ささっと柱の陰に身をひそめる。
つい今朝方、からミッション(罰ゲーム)失敗の報告を受け、ノーペナルティで許しを与えたところであった。

と山崎は他愛のない会話をしながらも互いに笑顔で、どちらかがどちらかの雑用を手伝っている。
早く終わったらどっかおやつ食べに行こっかー。という山崎の言葉に、は満面の笑みで食いついた。わあ!行く行く!
普段通りといえば普段通り意外に表現のしようもない光景なのだが・・・・。

普段通り過ぎんだろォがァァァァァァァあああ!!!

あんなことがあった後なんだぞ?!昨晩の事であるからして直後だぞ?!事後直後だぞ?!
何であんなフツーに会話できるわけ?!何であの女は自分を(寸前まで)襲った男笑顔で受け入れてるわけ?!
少しはギクシャクしろよッ!!

ふと、さりげなくこちらに目線をよこした山崎と目が合う。
自分の嫌がらせをそのまま意趣返ししてくるような男だ。おそらく昨晩のアレだって確実に(覗いていた)総悟に向けてである。
に嫌われるかもしれないという物凄いハイリスクを負ってまでして!
ちなみに泣いて怯えて嫌がる姉さんに見とれて助け出すとか全く考えれてませんでしたけど何か。(オイ)

そんな総悟の心中はつゆ知らず、いや意外と知ってるかもしれない黒髪の男は、隣で洗濯物を干している娘ににっこりと心からの笑みを振りまいた後、ニヤリと総悟に視線をよこした。
ばーかばーか!ざまぁ見やがれ!!
が自分を嫌うワケがないということは確信に近い自信がある。
実際今現在だっては自分を嫌ってなんかない。人の感情に聡い自分が言うのだからこれは間違いない。
はあれくらいで山崎の事を嫌いになどならないのだ。

その線引きは昨晩も細心の注意を払ったし。
絶対に『本気で』嫌がることはしない。キスも本気で嫌がるそぶりを見せたら大人しく引いたし、触れる箇所だってぎりぎり他人に触られてもが許す範囲しか撫でていない。もちろん録画なんてしないし、阿呆に十分見せつけたらすぐに終了。たくさん謝ったし。許してもらったし。
そもそもだって少しは悪いんだし。

それがわからず驚愕するだなんて、隊長もまだまだだね、なんて思いながら、山崎はふふんと胸を張って次の洗濯物に手を伸ばした。
「手伝ってくれてありがとー退くん!」なんては笑顔。つられてこっちも力の抜けただらしない笑顔。
・・・やっぱり、「山崎退」はこの娘の前ではこっちの顔でいい。こっちの顔がいい。というか、自然に。
男女の友情かどうかはこの際おいておいて、少なくとも山崎との間には確かな絆が存在しているのだ。
ドエス隊長がどう出張ったってこの絆は簡単に崩れやしない。

「退くんっ、お出かけする前に、今土方さんが呼んでたよぅ。お仕事かなぁ・・・?」
「マジか・・・まぁ、すぐ終わらせられる仕事ならパパッと片づけてくるよ、待ってて?」
「うんっ!」

本当に愛らしく微笑むかわいいかわいい大親友を待たせて、山崎は副長室へとダッシュした。
これからしばらくは大きな調査はないと言われている。飛び込みでないとも言えないが、可能性としては低い。
ちょいちょいっとダッシュで終わらせてやろう。
副長室の障子を開けば、書類に筆を走らせていた土方が顔を上げ、ことりと持っていた筆を置いた。

「お、山崎か。すまんな、ちょっとオマエに頼みが」
「はい、何でしょう?」




「煙草とマヨネーズ買ってこい10ケースずつあと風呂場の桶が悪くなってるから買いなおしといて、それと男子便所の便器が一つひび割れてるから新しいの買って来い送料かかるから背負って運んで来いいいな。あとは書類が最近多くてなァそこの山になってるの一つ一つファイリングして整理しとけあーまだある庭のアリの行列が気になるからアリの巣ゴロリ設置しといて、・・・・・・・それと、1・2発殴らせろ。いいよな?」


「・・・・・・・・・・」
「歯、食いしばれ」


嫌な汗を流しながら、山崎はあたりを探る。
集中するまでもなくすぐに見つけられたその隠れ慣れていない気配に、
力いっぱい歯を食いしばりながら山崎は心の中で吐き捨てる!


所詮男女の友情なんてこんなものさゴフゥッッ!!












はい、お疲れ様でした!
一周年フリリク第四弾「退くんの裏(でも寸止めくらいで)」でした!
寸止めっつーかほぼチューと言葉攻め以外何もしてませんがッッ。
とりあえず今現在の猫の持てる力全てをもってして、山崎さんには闇崎さんになってもらいましたww
いや、えーと、あれね!どっちの退くんも素敵だとねこは思います!書いてて楽しかったァ!
リクエストありがとうございました!
こんなものでよろしければもらってやってくださいっ。


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