真選組の屯所は中々広い。
中庭沿いの長ーい廊下をいくつも曲がって辿り着いたその部屋で、はちょこんと座っていた。

おかしいなぁ・・・今日はお散歩がてら鍛冶屋さんにお登勢さんの刀を預けに行って、帰りにぎんちゃんとイチゴパフェ食べて帰る予定だったのに。
隣でお尻を突き出すようにうつぶせにぐったりする銀時の臀部からは、何故かにょっきり刀が生えていた。

イヤ、刺さってた。







**ぷりてぃー・うーにゃん♪**







「その鞘をかけて、・・・俺と決闘しろ!」
「はん、望むところだ・・・・!」

的な、
毎週神楽とみているバトルアニメ的な展開になったところまでは、まぁ良かったのだけれど。

「勘違いされちゃ困りまさァ旦那ぁ、この鞘はもともと俺が手に入れたもんですぜィ」
「こっちが自分のモン賭けてんだ、アンタにも何か賭けて貰わねーと、不平等でしょ」
「え?何言ってんの?俺の賭ける鞘(モン)はお宅らが選んだんでィ、俺は俺の欲しいもん指定しますけど?」

で、何故か万事屋と真選組が火花を散らす景色を眼下に眺めながら、「賞品」と書かれた台の上で鞘と一緒に正座をしているわけですよ。
ーー!ワタシ達が絶対取り返してやるアルからなァァ」なんて眼帯をつけた神楽が吠える万事屋席、その反対側で真選組のベンチでは総悟が始終ニヤニヤしている。
総悟が銀時の力を侮っているとは思えないが、負ける気はないということか。

とりあえず形だけの記者会見が終わった後で、鞘を返そうと真選組ベンチに向かったが、自分たちのエースを応援するイベント好きの隊士たちであふれていてとてもじゃないが目的の人物へたどり着けそうにない。
ただでさえ2度目の真選組屯所。知らない人間に囲まれるのは未だに慣れない。
「おっと、大丈夫?隊長のところ行きたいなら、道開けさせようか」
大人の群れに完全に埋もれるをたまたま見つけてくれたひとりの隊士がしゃがんで視線を合わせてくれるが、名前も知らない人と直ぐに会話できるではない。
この人も悪い人ではないんだろうけれども。
じりりと後ずさるを首を傾げてみていたその隊士は、その後ろの人物を見て「あ」と声をあげた。

「副長」
「ムリしてこんな中入ってこねーでもよかっただろーに」
(ひじかたさん!)



「で、何か用だったか?」

ひょいと首根っこを掴まれテントの裏側に連れて行かれる。ここならほとんど人もいない。
一応交流できる土方が、先ほどの隊士と同じく答えが聞き取りやすいようにしゃがんでくれた。
もちろん咥えた煙草を砂利で消すのも忘れない。子供に副流煙はよくないのだ(もう子供って年でもないのだが)。
そんな土方の耳元まで近づいて、それでも聞こえるか聞こえないかまで音量を落として、は小さくささやいた。

「・・そうごの、鞘、かえす」
「・・・・・毎度毎度、ウチのバカが迷惑かけてすまねェな」
「ひじかたさんは、悪くないよ」
「ったりめーだ、悪いのは全部アレだろ。俺のせいにされてたまるか」
「・・・ふふ」

渋い顔をして総悟に恨み言をもらしながら、それでも彼の代わりに謝る土方がおかしくて思わず笑い声を漏らせば、土方は少し驚いた顔をした後に小さくため息を吐いた。


「相変わらず魔法みてーな喉してんな。どうやったらそんな音が出るんだ」

もちろん、褒め言葉だ。


地球人ベースの天人とのハイブリット。
逃亡期間が長かったため人前では滅多にしゃべらないが。
その声はまるで鈴の音が響くような。
透き通った高音が撫でるように鼓膜を揺らして、聞き入れば少しも経たないうちに眠気が訪れそう。

万事屋に居候している彼女はひょんなことから真選組のドS王子に気に入られ、一応仲良くしてもらっている。
ガキ大将の親分子分みたいな関係でたびたび二人で遊びに出かけるようになりずいぶん経つが、
それだけ時間がたっても縁が切れないということは、一応本当にお互いを慕っているのだろう。
の事はよく知らないが総悟は昔から関わってきた土方はそう思う。

「無理のない程度で、これからもたまに構ってやってくれや」

アイツ友達いねェから。
そんな事を呟けばまたが笑い声を漏らして、土方も目を細めた。
その時。


『ちょっとォ〜。さっきから聞いてたらあなた・・・』

『アタシの総くんと、どういう関係なのよッ!!』

「「・・・・・」」


ぽかん、と土方は空いた口がふさがらない。
今しがたから返されて自分の手の中にある鞘が、突然しゃべりだしたのだから。
きゅぽんっ!逆角あたりから飛び出したのはきゅるるんと愛らしい目玉。
確かに。「エクスカリバー」だとか「刀に話しかける」だとかそんな言葉は耳にはしていたが、こういうことだったのか。

そもそも刀と鞘のつがいは一対のモノ。刀鍛冶が一本一本打ち上げている刀はそれぞれ刀身のそり具合が違う。
本来鞘はその一本の刀に合わせて作られる一点ものだ。他の刀などサイズが合わなくて上手くしまえるわけがない。
鞘を取り合って真剣勝負など訳が分からないと思っていたが。
ナルホド生きているなら、刀に合わせて鞘の形を変えられる鞘なら話は別だ。
イヤ土方は欲しいとは思わないけれど。

『どうなのよ!突然出てきといて、アンタ総くんの一体何なのっ?』

取り合えず面倒くさいことになりそうだ。
どうやらこの鞘は雌のよう。さらにあのドSに心酔しているとみた。仲の良い娘は皆敵ってか。面倒臭い。
更にで人見知りが発動してろくにしゃべれない。
しゃがんだ状態の土方の後ろに隠れて、肩越しに鞘から鋭い視線を受けている。

「友人・・てことでいいんじゃねェの・・?」
(こくこく)

フォローするにも土方は総悟との関係をよくわかっていない。
一応肩越しに尋ねればは頷いた。

『へぇ〜友人・・・トモダチねぇ』
「何だよ、あいつに友達の一人や二人いたっておかしくねェだろ。文句でもあんのか」
『べっつにぃ〜?ただアタシの総くんのこと軽々しく呼び捨てしないでほしいっていうかァ。友達にもいろいろありますよねェって言うかァ〜性的な友達だったらマジ容赦しないっていうか。アンタと同じ舞台で商品って言うのもなんか癪に障るわけでェ』
「文句の塊じゃねーか!」
『とにかくっ!ひょっと出の小娘がアタシの総くん取らないでよね!って話なのっ!』

「とらないよぅ・・私には、銀ちゃん、いるもん」
ささやくようにそう発したに、流石、リア充は言うことが違ェわ・・とか思いながら土方は息を吐く。
そうか、少なくともこの娘の本命は万事屋のテンパ。修羅場になる心配はなさそうだ。

『ぎんちゃん?それってアンタの彼氏?』
「う、うんっそうだよ」
『総くんの事好きじゃないの?』
「好きじゃない」
(即答?!)

『なんだ〜彼氏持ちだったのね!安心しちゃった!』

ホッと息をつく鞘に、土方もため息をついた。
良かった。何事もなく治まりそうだ・・・・

『じゃぁ、総くんにはもうアタシがいるんだから、これからはもう二人っきりで会わないでよね!約束よ!』

・・・ったのだが。
ぴくり。その言葉には反応した。
『どうしたの?』黙ってしまったに鞘が瞳をかしげる。


「・・それは、イヤ」
『えっ?』
「そうごと遊べなくなるのは、困る」


ええっ!
鞘も、土方も、はてはテントの陰で様子をうかがっていた総悟も(最初から覗いてましたが何か)、ぱちぱちと目を瞬いた。
総悟に至っては若干胸のときめきが腹の前で作った握り拳に出ている。
あの猫に危機感てものを教えてやろうという思惑が多少あったとはいえ、
「総悟と遊べなくなるなんてイヤ」とはっきり言ってもらえるなんて!

『なによう、総くんの事好きじゃないんでしょ?』
「好きじゃない、けど、遊べないのはイヤ」
『アンタが好きなのはぎんちゃんじゃなかったの?!』
「ぎんちゃんが一番。でも、そうごと会えないのは、困る」
『むぅぅ!』

「そもそも、私の方がそうごと長く遊んでるもん。なんで言うこと聞かなきゃダメなの?」
『アタシの方が特別だからだもん!』
「あは・・何言ってるの?」


「私の方がとくべつよぅ。ねっ、そうご」

「!げッ・・」
「っ、てめ・・・!」

こちらをうかがっている総悟を発見して、土方の方がもう限界だった。
あとは当人同士で何とかしろやァァァ!
投げ渡した鞘はご主人の手の中で嬉しそうにしっぽを振っている。
じゃり・・・目の前の砂利が音を立てて、ハッと総悟が視線をおろすと。

「そうご」
「・・・へ、へいっ」

自分より一回りも二回りも小さな影が、いささか不機嫌そうな瞳をくるんと丸めてこちらを見上げていた。


「もう、遊べないの?」


透き通った音が揺れるように響く。
何かをこらえるように顔をしかめるは、誠に残念ながら、

総悟の加虐心を抉るように打った。

SMAAAAAAASH!!

お前万事屋さえ、旦那さえいればいい的な奴じゃなかったのかよ!
旦那が一番、もちろんとられるのは許せないけれど、総悟もとられちゃ困る、キープか!それはキープって言う奴じゃなかろうか!

総悟が(脳内妄想が甚だしくて)何も言えずにいると、はごそごそとポケットをあさりだす。
取り出したのは携帯電話だ。
自分が渡した、二日に一回は必ずやり取りする大事な連絡ツール。

「・・・返す・・」
「え?」

「返す・・もう使わないもん・・」
「え、イヤ、あの?」
「ずっと遊んできた私よりその子の方が特別なんでしょ?いいもん・・わたしぎんちゃんとお幸せになるもん・・」

イヤイヤ!ダイスキな旦那とお幸せになるのになんつー顔してんでィ!
心の声はもちろん表に出すなんてマネしない。
飛んで逃げて行ってしまいそうな娘の手首をあわてて捕まえる。

「へんな早とちりはやめなせェ。あ、そーだ。さっき旦那も救急車でお帰りなすったとこだし、送りがてら団子でも食いにいこーぜ」
「・・返さなくて、いいの?」

おずおずと見上げてくる可愛らしい遊び相手の頭を、総悟は撫でてやった。
出会った当初こそ噛まれたり飛びかかられたりしたが、今ではずいぶん仲良くなったものだ。
こうやって喋ってくれるし、二人で外に出かけたって手を握ったってもちろん平気だ。
そもそも仲良くない奴は声も聞いたことがないので自慢する相手は少ないが、ノリもいいしこんな一緒にバカやって楽しめる遊び相手、なかなかいない。
こんなところで切り捨てられるなんて、あ、いや切り捨てるなんてもったいない。


「ん、・・そんかわしずっと持ってなせェ」

寧ろ持っててください。
そんな気持ちでちらりと視線をよこせば、は嬉しそうに頷いた。


「うん」
『あ〜ずるい〜!じゃぁアタシも総くんの菊一文字返さない!ずっと持ってる!』
「イヤそれは返せよ!!何のための鞘だテメー?!」

「えへへ、嬉しい。私たちずっとお友達ね」
そう言ってリンッと声を弾ませるに、若干の物足りなさに頭をひねりたくもなるが。
オトモダチ、ねぇ。
いや別に、総悟はいいんだけれど。総悟的にはオトモダチでもオトモダチじゃなくなっても別にいいんだけれど。

まぁ、そんなもとももちろん言いはしない。
今回のところは機嫌も直ったし、良しとしよう。
そうご、おだんご、行く?と首をかしげる遊び相手に一つ息をついて、総悟は応えた。

「おう、んじゃ行くか」
「うん!」
「コイツ持ってちょっと待ってな、今ザキあたりからカツアゲしてくるんで」
『そんな総くんも素敵!』


にとっては知らない隊士さんの悲鳴が上がる。
口笛なんて吹きながら、悪びれるそぶりも見せず半泣きの男を後にした総悟は、から鞘を受け取ってそのまま門へと歩みを進める。
そのすれ違いざま。

『!』
「?どうしたァ、行くぜぃ」
「うんっ!私ねえ、くるみの奴がいいな」

一瞬だけ見せたその顔。
はんっ、と息だけでこちらを笑い捨てた彼女の表情を見たのはサーヤのみ。

今はケロリと頬を染めつつ総悟にはにかむ少女の先ほどの表情を思い起こして、
それがよく知るご主人サマと同じ色の嘲笑を含んでいることを感じて、サーヤは身震いした。


「おー、何でィまた共鳴振動かィ?お江戸はエクスカリバーだらけじゃねーか」










お待たせしましたー!
リクエスト「銀スプでエクスカリバー編」でした!
番外編とはいえ銀スプじゃなくて沖スプと言った方がいいかのような銀ちゃんの出番の無さww
ケツに刺さってただけですマジでw
沖田さんが育てたといっても過言じゃない腹黒さがたびたび無意識ににじみ出る、それが銀スプヒロインです(笑
リクええストありがとうございましたー!



back