どうしよう、どうしよう。
何から話せばいいのやら。
とりあえず、自己紹介をさせていただきましょうか。

自分、真選組一番隊隊長を務めさせていただいております。沖田総悟と申しやす。

自分・・・自分の気持ちに、ついに気づいてしまいました。


頭の中はどたばたどたばた、
さながら狙われていることを察知した瞬間のバッファローの群れなみに騒がしく荒れ狂っている。
その中に落っことされたらたとえ百獣の王でもひとたまりもなく、子ライオンならなおさらである。
その後子ライオンが父の死を嘆きながら走り去るその目前に3匹のハイエナが現れたところまで妄想したところで、ようやくたどり着いた屯所の玄関で自分のブーツをひっつかむ。

足を突っ込むのもままならないまま総悟は屯所を飛び出した。







**Sは打たれ弱ければ押しにも引きにも弱い**







年上の女性から好かれる体質は持ち合わせていると思っていた。
それがとってもチートスキルだということも。
屯所で働く女中さん・・・・まぁ、当たり前のように年上ばかりなのだが、
幸運にも授かったベビーフェイスを駆使してちょっと甘えるようなしぐさを見せれば、
年の離れた弟か子供かにでも錯覚した彼女たちは随分甘やかしてくれた。
まぁそれを存分に利用した土方への嫌がらせを今日まで散々試みてきたわけだが。
ソレも今日で終わりを迎えるということか。チッ、昨日のヤツでとどめを刺しておくんだった、死ね土方が。


『沖田さん・・・・大好きです、沖田さん・・』


うわあああああ!黙れ黙れ!
頭の中をどたどた走り回るバッファローの群れに向けて怒鳴る。
イヤ、走り回るバッファローの隙間からそれでもはっきりと聞こえた、先ほどの突然の告白文に、総悟は江戸の町を走りながら必死に頬の熱よ冷めろ!と念じた。

イヤイヤ誤解だ、最初から説明させてほしい。
これでは総悟が女に突然告白されただけで浮かれ走り回る馬鹿みたいだ。
告白されるのは知っていた。自分が仕向けたことだし。しかも件の告白は本気ですらない。


ただの、賭け事の結果の罰ゲームだ。



今回総悟に無謀にも立場をわきまえず告白なんてしてきたボケの名前は、
ぁぁぁ駄目だ名前を思い出しただけで何かいろいろ思い返しそうなので、ヤツの名前を『女中Z』とする。
あっ、いいかも。『女中A』じゃありきたりだろうと思ってあえてZにしたら案外イケるかも。自分を保てるかも。
まあ、女中Zは数いる女中の中では一番年少で、それでも総悟よりは随分と年上だった。

しかしながらそれでも一番総悟と年が近いということで、総悟に関する面倒事はことごとく押し付けられてきた・・・あ、違った女中Z。
屯所で働き出して間もない内は年下とはいえ隊長である(上に問題児である)総悟の相手をするのに緊張したりしどろもどろだったりしていたが。
まーこっちはそれをからかって楽しんできたものだ。

そんな彼女も最近は適当・・・まではいかなくとも総悟の扱いにも慣れてきたようだった。
うろたえる女中Zを見るのは楽しみでもあったが、総悟としては慣れてもらった方が都合がよい。
あきらめ所が分からずいつまでも付きまとわれるのは好きじゃないもの。
やれやれと諦めたように息を吐きながら額を抑えるのが彼女の降参の証だった。
しぐさが全然女らしくない、と突っ込みを入れたらギロリと睨み付けられたのを覚えている。

そんな折に、彼女に良い仲の相手がいる何て噂を知った。偶然だ。しかし、これを利用しない手はない。
そうじゃなくても最近土方がテコ入れしたらしく、前ほどではないにしろあきらめが悪くなってきているのだ。
世間一般じゃ夏休みということで(真選組はそんなものないのだが)、毎晩25時から放送のラジオ「落語者」リスナーとして皆勤賞を逃すわけにはいかない。そのために万全を期すべく昼間たっぷり睡眠をとっておかなくてはならないのだ!

昼過ぎから夕飯準備までの休憩時間。
女中たちの待機部屋にひょっこり顔を出して、「遊んで遊んでお姉ちゃん〜」感を醸し出しつつ仕込み万全の罰ゲーム付きゲームを吹っかけた。


「もし俺が負けたら、姉さん方の中の誰かに告白するってのはどうでしょ?その方が燃えるでしょう」


・・別に間違いではない。
可愛い可愛い、イケメン王子様(自分で言うな)の告白、この場合告白されるのが自分でなくてもいいのだ。総悟の超絶レアと思われる告白シーンを是非ともみたいと萌え上がるお姉さま方は、
もともとゲームごとも好きな連中だったことも相まって二つ返事で沢山のイイネ!が返ってきた。
まあ、ゲームが始まってからじりじりと「一番ビリだった人が誰かに告白する」という条件へ計画的にシフトチェンジしていったのは、言うまでもない。
もちろん女中Zも参加させた。



さて、最初から決められたシナリオ通りビリになった女中Zは困った。
ただでさえ屯所の男たちは女に飢えている。突然若い娘が告白でもしようものなら絶対誤解される。
もしかしたらドッキリをばらす前に襲われるなんてことも、あるかもしれない・・・・なんて脅しを、あえて強調するようにかけるのも忘れない。
そのの困り果てた顔を満足げに眺めながら、笑顔で総悟は言ってやる。

「別に、俺でもいいんですぜィ。事情を知ってる分、他の奴よりはましだと思いますがねィ」


むぐぐ・・・と渋っていた女中Zはその言葉に項垂れた。いや、腹をくくった、と言った方がしっくりくるような。
諦めたように溜息を吐いて、額を抑える。降参だ。ぐっと来た。拳もぐっと握った。
ニヤニヤ見守るギャラリーに気まずくなったのか、羞恥の嫌悪の入り混じった(総悟にとって最高な)表情で「耳をよこせ」と言う。
こっぴどく振ってやる!と心弾ませて、総悟は耳を傾けた。ようこそ俺の睡眠時間!
しばらくは自分を呼びに来るのさえ鬱になるほどコテンパンにしてやる!
胸がちっさいとか、洗濯物を畳むのがへたくそだとか、裁縫をやらせたら壊滅的だとか、住み着いてる猫にいつまでたっても懐かれないとか、そん彼女の欠点を指折り数えながらどの順番で突き刺してやろうとわくわくする総悟の耳元で、女中Z・・・・は、消え入りそうな声でささやいた。


「沖田さん・・」


「大好きです、沖田さん・・」



ぞぞぞぞぞぞっ・・!と、次の瞬間総悟の全身に鳥肌が立った。


自分でもわかるほど血流が激しくなり、頭に血が上るのを感じる。
意思とは関係なく自然に口角が吊り上るのが分かった。ぞくぞくと背中を駆け上るのは、簡単に言えば興奮の類いだ。

「なんで私がこんな事・・・」そんな副音声が聞こえるような気がした。
不機嫌で、嫌々、でも恥ずかしい・・だけどソレを表に出さないように。
けどやっぱり恥ずかしさには勝てなくて多少裏返ってしまった小さな小さな声。

そんな声で「ダイスキ」とか言われてみ!!!

総悟のSはドSのSでィ!
ちょっとなんかもう鼻息とかいろいろ殺し切れなくて、
「へェ〜いいもん聞けましたひひひじゃァ見廻りいってきやすうひひ」だけ言い残して、コテンパンに振るのも忘れて屯所を飛び出しこのざまだ。


くッ・・・!
俺のサディスティックな心があだになるなんて・・・!



そんな事を思い込ませるように繰り返しながら、総悟は高架下で、

何故か素振りを繰り返していた。


怯え逃げていくダンボールの民たちを視界の隅に収めながら、真剣を振り回す手には抜かりない。
精神統一、精神統一、いやぁ〜いいもん見れたいいもん見れた。よかった、よかったね!
ばっくんばっくん心臓の音が半端ない。
普段ならあり得ない、たった数十本素振りしただけで今にも脱ぎ捨てたいほど隊服は汗ににじんでいる。



気づいてなんか、ない。


最近がからかってもろくに反応を返してくれなくて退屈していたとか、

そのせいで散々ぐずって彼女の時間を自分にわざと費やさせていることとか、

「噂の相手がいる」なんて聞いて何故かむっとしたとか、

本当は嫌々な声で「大好き」って言われてちょっとだけ苦しかったとか、

・・・でもちょっとだけ嬉しかったとか、そんなことはない。
実際ありえない。
嘘嘘ちょっと考えてみただけ絶対ない。
あり得ない。
違う。


洗濯物を畳むのがへたくそだとか、
裁縫をやらせたら壊滅的だとか、
住み着いてる猫にいつまでたっても懐かれないとか、
そんな彼女のしぐさ細かいところまですらすら挙げられるなんて???


「負けたら告白する」なんてどうしてそんな罰ゲームにしてしまったんだろうと思う。
何故振るのが自分じゃなきゃ駄目だなんて考えに行きついていたのだろう。
のモチベーションを下げるなんざ、その程度の事、他の隊士のもとに向かわせればよかったことなのに。
いっそそのまま万が一間違って襲われれば、それこそもう二度と総悟のもとに「仕事行け」と呼びに来ることはなかっただろう。屯所からもいなくなるが。

もう一度言わせたい、出来ることなら嫌々じゃなくて心から。振り向かせたいなんて思うのは、幻想だ。
好きでもねェ男に告白させるという無茶振りが総悟のドS心を震えさせたから、だからもっかい聞きたいだけだ。
大丈夫落ち着け沖田。脳内で先ほどのの告白を(脚色して)繰り返す。
「アンタなんか、本当は好きじゃないんだからッ・・・大好き、そうごくん・・」
うわああああたまんねえ!
そんな思ってもない事、嫌々ながらしぶしぶ口を開くあの女の事を考えたらもう・・!
もう・・・・。
も・・・・、
うん思っていたよりも自分はSっ気持ちだったようだうん!うんそうにチガイナイ。


「沖田さん!こんなところにいた!」


橋の上から声をかけられてビクッ、とする。
恐る恐る見上げれば、山崎が呆れたように手を振っていた。

「何してんですかアンター!今日は3時から幹部会議でしょうが!副長カンカンですよ!」







「それにしても。沖田隊長可愛らしかったわねぇ」
「見た?ちゃんに告白されてあの嬉しそうな顔」
「見た見た。もーゆるゆるのまっかっか。微笑ましくって、良かったわねェって頭撫でてあげたくなっちゃった」
「でも以外ー、沖田さんも男なら女に言わせるんじゃなくて自分から言うべきよねー」
「だけどォ、これで確定じゃない?沖田隊長がちゃん狙いだって!」

「そんなんじゃないですってば!変な噂流すのやめてくださいよぅ・・」

えーでも、沖田さんちゃんが呼びに行けば素直に仕事行くしー。
散々渋った後ね。もー隊長ってばどんだけかまってちゃんなの。
そうそう、それに、積極的に絡んで行くものね。
ちゃんも罰ゲームの割に、割と本気で照れてたじゃない。キャー、若いっていいわ。

「違いますってばー!」

湯気が出るほど真っ赤になってムキに手を振る、
そんなと良い仲と『噂の相手』が自分の事だということに総悟が気づくのはまた別の話。


「うわあああ!でも男持ちかっさらうとか超面倒臭そうだし、アレの気持ちも・・っていうか別にかっさらうとかな話でもなくてアレの気持ちなんかどうでもそれより俺のっ、て、それも違う!」

・・・また別の話(笑)










お疲れ様でしたー!
リクエスト『沖田さんと年上女中さんで甘。ちょっと余裕のない沖田さん』でした!
・・・・・・余裕なさすぎにも程があるwww
ひきつった表情で汗だくで素振りする沖田さんを橋の上から通りすがりざまに眺めながら冷たい視線をよこしつつ、面倒臭そうだから触れずに去って行く万事屋の皆さんが見えた貴女は、すっかりどっぷり猫ワールドに使っていること間違いなし!
リクエストありがとうございましたー!


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