12月も中旬になり、街はクリスマス一色。
の働く甘味屋でも、クリスマスをモチーフにしたお菓子を出す。



「どうですか?これ考えたのあたしなんですけど」


見廻りの途中、立ち寄ってくれた沖田に「サービスです。内緒ですけど」と出してみた。
沖田はあまり興味なさそうに「へぇ」とつぶやいて口に入れる。
それきり感想をくれる様子もない沖田に、は感想を催促するように「味、どうです?」と再度聞く。

「ま、美味いんじゃねーですかィ?」
「ん。沖田さんのその反応なら合格てトコですね。良かった」

沖田の性格からして、素直に美味しいということはまずない。
いつもなら“まずくはない”と言うところを“美味い”という単語が出てきたということは、なかなかの出来だったんだろう。
最初の頃はこの返事に落ち込んだこともあったけど、沖田の性格を把握してきたこの頃はそんなこともない。
嬉しくなってえへへ、と笑う。

「じゃぁ、ごゆっくり。って、見廻りの途中でしたね。あんまりゆっくりしてるとまた副長さんに怒鳴られますよー」

そう言って他の席の接客にうつる。
そうして沖田のいる席を離れたあと、しまった!と気づく。

(あ、またクリスマスの予定聞くの忘れてた。)






素直じゃないサンタクロース






今年の夏、が甘味屋のバイトから帰る途中、酔っ払いに絡まれたことがあった。
そこを見廻り中の沖田に助けられた。
その前から時々甘味屋に食べに来てた沖田のことを見知ってはいた。
いろんな意味で有名だし。
でも、向こうもこっちを見知っててくれたとは思わなかった。

「大丈夫ですかィ?さん」

しかも名前まで。

酔っ払いに押され倒れこんでたに手を差し伸べ、家まで送り届けてくれた。
ありきたりではあるけれど、が沖田に惚れたのは当然の結果だった。
それから店に来るたび少しずつ話をするようになり。
思ってたよりなんかちょっと違う性格だったみたいだけど、気持ちは変わらず。
店の他の女の子が「イイですよね〜」と言ってたのを聞いて、何もせずにはいられなくなって告白した。

「付き合ってください」
「いいですぜィ」

あっさりと返事され、思わず「え?ホントに?」と聞き返してしまったくらいだ。


それから1ヶ月。


メールは毎日する。から。
電話は3日に1回くらい。これもから。
会うのは3日に2回くらい。しかし、これはの働いてる甘味屋に沖田が来るからであって、店の外で会ったのは数えるほど。
の仕事が少し遅めの夜に終わり、さらに沖田が見廻り中の時に家まで送ってもらうだけだ。
でもそれは、絡まれた前例もあったから付き合う前からそうだった。

送ってもらう時も、見廻り中のチンピラ警察が女の子と手をつないだり腕を組んだりするのもおかしい話だから並んで歩いてるだけ。
あんまり付き合ってるという実感が湧かないのも当然と言えば当然。
だから、付き合い始めて最初のイベント、クリスマスをはとても楽しみにしてた。





「お疲れ様でしたー。お先に失礼しまーす」
「お疲れ様ー。気を付けてね」
「はーい」

「時間どーりの勤務ってのは羨ましいねィ」


挨拶しながら店の裏口から出て扉を閉めるといきなり後ろから声をかけられた。


「わっ?!お、沖田さん!?え?え?あれ?」
「ぷっ!何面白い顔してんでィ」
「え?だ、だって、いるって思わなかったし」
「あぁ、言ってないし」
「……なんでいるんですか?」
「……いちゃわりーのか」
「いえ、全然!」


家まで送ってくれるのは日付が変わりそうな時だけだったから、まだ夕飯にも間に合いそうなこの時間に沖田がいるとは思わずびっくりする。
そんなの反応に少し機嫌を悪くしたようだったので慌てて首を振る。
悪いわけがない。
素直に「すごく嬉しい」と伝えると、沖田はちょっと目を丸くして「ならいーんでィ」と歩き出した。





まだ日が暮れたばかりの道は、いつも二人で歩く街灯しか灯ってない暗い夜道ではなく、きらびやかなイルミネーションが輝いていて。
ここ数日いちゃつくカップル達を見てはため息をついてたのテンションが上がる。


「もーすぐクリスマスですね。わぁ、あんなところにもツリーが!」
「あー」

「沖田さん、沖田さん。あのお店はカップルで行ってお互いにプレゼントを買うとペアのぬいぐるみがもらえるんですよ!」
「へー」

「あ、ほらあそこのお店!クリスマスまで限定で来店した人にプレゼントが当たるらしいですよ!あそこのアクセサリー、すっごく可愛いんです!!一番好きな店なんです!」
「ほー」

「あっちのツリーの下でプレゼント交換するとずっと一緒にいられるってジンクスがあるそうですよ!」
「ふーん」


はしゃぎまくる
反対に全く興味のなさそうな沖田。


「もー。どうしてそんなに興味なさそうなんですか?街はこんなにキラキラしてるのに!」
「どーしてって……それこそどーして誰だかよく知らねえヤツの誕生日に盛り上がらなきゃいけないんでィ」
「え?ま、まぁ言われてみればそうですけど……」
「こっちはクリスマスなんて浮かれた奴らがちっせぇ喧嘩とか起こすから、いつでも出られるよう待機させられてて散々でさ」

沖田の放ったセリフに思わずの足が止まる。

え……?待機……?
……ってことは……


一気にテンションが下がる
立ち止まったを沖田がどうした?とでもいうように振り返る。

「た、大変ですねぇ。そうかぁ、待機ですかぁ……」
「だからさんもその日は家でゆっくりしてた方がイイですぜ」
「はは。そうですね……」

それからの帰り道。
の目に映るイルミネーションはただの電気の無駄遣いにしか思えなくなったのも仕方のないことだった。


次の日。
12月の勤務表が出た後に彼氏が出来て「クリスマス仕事代わって!」と頼み、他のシングルの子に「絶対やだ!裏切り者!」って言われてた花子ちゃんに「そーゆーことで、代わってあげようか?」と申し出て命の恩人か!ってくらい感謝されただった。



そしてクリスマス当日。

は店の仕事を終え、裏口から外へ出る。
今日の客はさすがに幸せそうなカップルばかりだった。
たまに“こんな日にバイトなんて……”と憐みの目で見られることもあって、ちょっと心が折れた。


「せめて沖田さんが見廻りのお仕事だったら良かったのになー」
「そりゃ、休みじゃなくて良かったってコトですかィ?」

ぼそりとつぶやいたのセリフに返事が返ってきた。

「まさか!お休みだったらあたしだって働いてない、……って、え!?お、沖田さん!?え?屯所で待機じゃなかったんですか!?」
「さみーのに見廻り担当だったんでィ。家でサボらせてもらおうかと思ったらいねーし。まさかと思って店のぞいたら働いてやがるし」
「え、だって待機って言ってたから……クリスマスに一人で家にいるのはさすがに避けたくて……」

言い訳するを見て、「ま、そんなことだろうとは思ってやしたがね」とため息をつく沖田。




「ほぃ」

二人で歩くの家までの帰り道。
制服の内ポケットから取り出した長方形の箱を軽く渡される。


「?」


思わず受け取ったが頭の中はクエスチョンマーク。


「プレゼントでさァ。」

「……え?あたしにですか……?」
「他に誰にやるんでィ」
「あ、ありがとうございます!すごく嬉しいっ……!」

渡された箱は以前一緒に帰った時にが好きだと言った店の包みだった。
思わずもらった箱をぎゅっと抱きしめる。

あの沖田が。
のために。
のことを考えながら選んでくれたプレゼント。
しかも、が好きだと1回しか言ってない店をちゃんと覚えててくれた。
嬉しくて嬉しくて、思わず涙までこぼれそうになった時。

「あ、たまたま他の隊士に付き合わされて入った店で当たったヤツなんで、中身はどんなのか知りやせんがね。他にやるヤツもいねぇんで」

沖田が言う。

それを聞いて一瞬が固まった。
でも次の瞬間。

「ふふっ……だとしても嬉しいです。すごく。……すっごく」

思わず沖田も赤面してしまいそうな程幸せそうに笑うの顔があった。
沖田はそんなをなぜか直視できず、さっさと背を向けて歩き出す。
いつもなら「待ってくださいよ!」とすぐ追いかけてくる声がなくて振り向くと。
嬉しそうに沖田のプレゼントの箱をずっと見てる

「何やってんでィ」

そう言ってのところまで戻ると。

「えっ、あ、すいません。ホントに嬉しくて……」
「……ならさっさと開けやがれ」

そう言うとさっと箱を取り、乱暴に紙を破る。
箱の中から出てきたのは雪をモチーフにしたネックレス。

「わぁ……素敵……すごく可愛い!」
「へぇ、こんなんだったんですねィ。」
「………ふふっ」

覗き込んだ沖田をおかしそうに笑うを怪訝な目で見返す。

「……何でィ?」
「いえ。何でもないです」
「変なヤツ」
「……変なヤツでもイイです」

「で?」
「え?……は、はい」
「っ!!ち、ちげーよ!誰が手ぇつなげっつった?!お・れ・に・は!?」

差し出された手を、ちょっと躊躇しながら握り返したに真っ赤になりながら沖田が叫ぶ。

「あ、す、すいません!会えないと思ってたから家に……すいません」

恥ずかしい勘違いをしてしまった。
だってクリスマスだもん。手くらいつなぎたいと思ってたんだもの。
思わず顔が熱くなる。
しかも自分はプレゼントも持ってきてない。
慌てて手を離して謝った。

その手に沖田が再度触れた。
今度はちゃんと握りしめるように。
そしてニヤリと笑いながらを見た。

「じゃぁ、家でゆっくりさせてもらおうかねィ」


の顔がさらに赤くなった。




――― HAPPY MERRY X’mas ―――




後日―――

の働く甘味屋で毎度絶賛さぼり中の沖田にが話しかける。


「そういえば、クリスマスのプレゼントなんですけど」
「あ?……あぁ、店で当たったやつ?まさかなくしたとか」
「いえ、まさか!もちろん今もつけてるんですけど……」
「?」
「沖田さんどんな顔して買ったんですか?」
「はっ!?だ、だから当たったって……」
「うふふ。知ってました?当たったプレゼントは包装紙が違うんですよ。沖田さんがくれたやつは、買った商品にしか使わない包装紙でした」
「!!!?」


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