一度ドアノブに手を掛けきちんと施錠されているのを確かめてからポケットに入っている自分の鍵を取り出し開ける。
ふう、と一息吐くと足音をたてないよう注意しながら廊下を歩く。
そして寝室のノブに手をかけようとすると、静かに扉が開いた。

「おかえり」
「あ…、ただいま」

てっきり寝ていると思っていた、この間一緒に出かけて選んだパジャマに身をつつんだ彼女は眠そうな目をこすりながら俺の顔を見上げた。やっぱり寝ていたのか。
足音か気配で起こしてしまったのだろうか。仕事柄そういったものを消すのは得意なはずなんだけど。

「起こした?ごめんね」
「退出迎えるために起きたからいい。
…御飯は?」
「軽く食べたけど、あるならもらおうかな」
「ん。温めるからちょっと待ってて」

キッチン寒いからスリッパ履いてくるね。と十分に暖められた寝室に戻ろうとするの背中を追って肩を掴み抱き寄せる。
御飯は?ともぞもぞと身を捩るにいいから。と返し抱き締める力を強める。

「どうしたの?」
「…充電」
「そっか。退の体、冷たいね」
「外寒かったからね。
…嫌?」
「ううん」
「マフラーつけてたんだけどなぁ。去年のクリスマスにがくれたやつ」
「そっか。あっ」

何かを思い出したようにが動き出した。すっかり大人しくなったからと油断していたせいか、簡単に腕をふりほどかれる。
行き場の無くなった腕をどうしようかと思案していたら、ねえ、見て!と夜中にも関わらず元気な声が聞こえた。

「…手袋?」
「うん。去年マフラーだったでしょ?
だから今年は手袋」

これで少しは退が暖かくなるといいんだけど。そう呟きながらは手作りだろうか、俺の好きな色で編まれた手袋を渡してきた。
ありがとう、と受け取るものの状況を理解できていない俺はどうして今これをくれるのだろうかと回らない頭をフル回転させる。
そこでようやく気がついた。そうだ、今日はクリスマスだ。そして目の前の彼女がマフラーをくれたのは去年のクリスマスだった。
つまりこの手袋はクリスマスプレゼントという事になる。

それに気づくと嬉しさと同時に申し訳なさがこみ上げてくる。
俺はいつも彼女を喜ばせるのではなく、彼女に喜ばされている。

「結構上手に出来たと思うんだけど、どう思う?」
「うん。すごいよ、本当」

眠そうな顔をしていたはずなのにすっかり眠気が覚めたのかキラキラとした瞳で見上げてくるに微笑むと今度は正面から抱き締めた。
肩に顔を埋めるとはくすぐったそうに動いた。

「…退?」
「ごめん、俺何にも用意してない」
「いいよ。今日帰ってきてくれたんだし。当日に渡せてよかった」
「…」
「私はどんな物より退が一緒にいてくれるなら、そっちの方がいい」
「そんなの、俺もだよ。…でも手袋、ありがとう」
「ちゃんと使ってね?」
「もちろん」

肩から顔を戻した俺の目を見つめると軽く唇を重ねると、まだ少し寒かった体が十分に暖まる気がした。

来年はできるだけ早く帰ってこよう。
そしてその時はきちんとプレゼントを用意しておこうと心に決めた。





だけの






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