はーあ・・・
穏やかな昼下がり。日中はだんだんと温かくなってきた今日この頃、
愛らしく胸に赤いリボンをつけたオシドリは、ふわふわの羽先で「ふう」と汗をぬぐうように額を撫でた。
「あっぢぃぃー」
「そう言うオッサン臭い声出すの止めろって、依頼人から言われてるでしょ。銀さん」
「へーへー」
「やっぱさ、まずいって。バイトの売店スペースにさりげなく自分ちの商品並べちゃ」
「ああ〜?出張営業だ文句あんのか。いいじゃねーか減るもんじゃねーし」
「減ってるよ商品スペースが!ばれたら俺またクビになっちゃうよ・・」
ばっさばっさ大きな翼で自信を仰いでも着ぐるみの中に風が通ってくるはずもナシ。
寒い季節は南の島でバカンスなんてセレブの話は聞いたことがあるが、この中も十分南の島だ。
祭日、公園内での催し物。簡易式の店舗の店先に並ぶのは小さな箱に入ったこれまた小さな四角い包み紙。
ぴったり綺麗に整列して収まったそれと小銭とを交換しながら、隣のグラサンをかけたオシドリはため息をついた。
「トリさん、銀さんって言うのー?」
連れの母親に頭を撫でられながら、キャラメルの箱を受け取った子供が尋ねる。
「そーだよォ。ちなみにこっちはグラサンな」
「なんか違うことになってる!」
などとひとしきり騒いだところで、公園内のアナウンスが鳴った。
『バクチ戦隊トバクジャーの公演が間もなく開始します』
麻雀レッドに競艇ブルー、カーレースピンクたちが闇金と戦うシリーズ戦隊もの。
毎回ピンチ時に白馬に乗って現れる競馬ホワイトは、はたして敵か味方か。
最近の子供は見るものも過激である。
「あんなモン憧れたってその先にゃ夢も希望もねェぞ真っ黒なグラサンしか、なぁグラサンブラック」
「アンタに言われたくないよパチンコシルバー!」
コト。
あ、いらっしゃいませー。
慌てて二羽とも営業スタイルに戻る。
店頭のカウンターから頭しか覗かないほどの幼い男の子が、キャラメルの箱をひとつ置いていた。
「これ一つ、貰えるかな」
しっかりした口調だが見た感じの年はかなり幼い。
小麦畑のような薄金色の髪は後ろで短く結んであって、眼鏡の奥の瞳がこちらを見上げている。
こんな小さいのにもう眼鏡か。ゲームばっかやってんじゃねーぞ、なんて言えば、
「余計なお世話だよ」なんてこれまたませた返事が返ってきた。
「オメーかーちゃんは?金持ってる?」
「失礼だな。ちゃんと持ってるよ」
「トバクジャー始まっちまうぞォ。見なくていーのか?」
「興味ないね」
「うわ、めっちゃ生意気な餓鬼だな」
「どうも。よく言われる」
本心だがからかったつもりで言った言葉にも、ムッともしないむしろ呆れ顔。いたって子供は冷静だった。
どう育てられたらこんな年でここまでひねくれるのか。
完全に自分の事を棚に上げておいて、銀時鳥は手元の甘い塊を一本つまんで男の子の目の前に差し出してやる。
年に似合わずませたひねくれた子供の態度が、世話焼き心をくすぐったからだ。
ホラホラ口開け。オマケで団子一本やっから。内緒だぞ。
しかし男の子はオッサン渾身の「あーん」にしかめっ面をした揚句、ぷいとそっぽを向いてしまった。
「めっちゃかわいくねー!!」
ところが、つーんと横を向いていた子供はふと目を丸くして、ひょいとこちらを向き直った。
「そうだ、キャラメル。悪いけど人を待たせてるんだ、はやくもらえるかい」
子供の寄こしてきた硬貨はきちんと本物だったので、オシドリのイラストの描かれた箱をひとつその小さな手の上に乗せてやる。
そのときふと可愛らしい獲物が腰に揺れているのを見つけて。
・・こんな歳から帯刀だなんて、どこかの道場の跡取りとかだろうか?
腰に差した竹刀と年齢とのギャップに、思わず苦笑いが漏れる。まるでよく知った子供を見ているようで、またおせっかいな口がつい。
「坊主お前、剣やってんのか」
「やめとけやめとけ、昔はどうだったか知らねーがこれからはもう流行んねーぞォ」
「んな物騒なもん持ってたら捕まる時代だからなー、あ、真選組とかに入隊してぇとかなら別だけど」
ぴく、子供が何かを言いたげに銀時を見上げる。
「まぁ、お国直属の組織だし?給料も悪くねーんだろうけど・・俺は絶対お勧めしないね、ぜってー碌なトコじゃねーぞ」
「・・そうだね。碌なところじゃないのには全面的に賛成だ」
「基本むさ苦しそうだし」
「副長マヨ臭そうだし」
「局長はゴリラだし」
「いやきみもオシドリだろう」
ヒーローのイベントももう終了したのだろうか。遠くの方からざわざわと人の声が聞こえてきた。
はしゃぐ子供の声に、子を呼ぶ母の声・・・・そして。
・・せんせー、せんせー・・
・・・せんせー?
はっと視線を降ろせば子供はすでに短い礼とともに背を向け駆けだしていて。その背中を見てギョッとする。
背中に結ばれた子供用の太い帯に一緒に差し込まれてるのは、黒々とした鞘の短刀だ。
子供がかけていく先で人を読んでいるその娘の声も、どこかで聞いたことある様な・・・?どこでだっけ、確かあれは・・。
そんなことをぐるぐる考える頭に遠く聞こえてくるのはまた別の声。
「なかなか楽しめたアル!大活躍だったネ!」
「いやだからってヒーローショーの戦闘に飛び込んでいっちゃだめでしょ!楽しみ方おかしいよ!大活躍しちゃだめェェ!」
「おーい、ちゃんと働いてるアルかァ、マダオども・・・うぶっ」
「ギャァァァ!目が、目がァーー!」
その口とその眼鏡にそれぞれ串団子をシューティングされて、悲鳴を・・上げたいのはこっちの方である!
主人公として様々な厄介苦難を乗り越えてきた主人公としての勘がフルスロットルで警告を鳴らしている。
いやまさか。今のって。いやまさか。
どっち?え?ばれた?特定された?特定余裕?!
不思議と気になっていた着ぐるみの中の暑さは引いて逆に悪寒が。
それなのに嫌な汗は止まらない万事屋さんの厄日。
少し離れたベンチでは、甘い塊を「あーん」してもらって満足そうに咽を鳴らす眼鏡の子供が居たそうな。
おわり
もう何も言うまいごめんなさい遅くなった上に変換無しとか・・・。
つーかそれ以前にさりげなく小さくなってるとか突っ込みどころが多々もういったい何の話だよ!!!(土下座
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リコラさんありがとうございました*^^*