猫というのは孤独な生き物である。
自分のテリトリーが犯されるのを嫌うが故に、他人が自分に近づくことを許さない。ましてや自ら他人の輪に近づくなど、彼らは思いもしないだろう。
機嫌が悪い時は、爪を鋭くさせ、相手を威嚇し、牙を向ける。まるで自分を外敵から守るように。
だが、そんなプライドの高い彼らに一度懐かれてしまったら、それはそれで大変だ。
なんせ猫というのは、自分が中心にいないと気が済まない生き物なのだから。
猫二匹
「退くん、今日はなんだか雰囲気が違うね」と廊下でバッタリ出会ったに開口一番にそう言われた。
はこの屯所で真選組を影から支えてくれる女中であり、そして僕の大事な友人でもある。この娘は自分の仕事の事以外にも、細やかな所に目がいく。
「あ、分かった!ムース新しいのにしたんでしょう?」
「え、分かる?マジで?実はちょっと奮発して高めの買ってみたんだ。どうかな?」
「もしかして最近テレビで宣伝してるアレ?なんか髪ツヤもいいね。あ、いい臭いもする」
クンクン、とは軽く背伸びをして臭いを嗅ぐ仕草をする。その姿はまさに猫。なんて愛らしい猫なのだ。
が重たそうに運んでいたバケツを代わりに持ってやると、彼女は申し訳なさそうにしつつも、「いつもありがとう」と言ってくれた。なんて愛らしい猫なのだ。
「私もムースとか買ってみようかなあ」と髪の毛の端をくるくるねじりながら呟くに、半分からかうつもりで「今の髪で十分かわいいよ」と言えば、「もう、退くんったらあ!」と彼女は顔を真っ赤に染め上げた。なんて愛らしい猫なのだ。
そんな周りが見ても微笑ましい朝の光景に、一人ムスッと不機嫌そうに顔を歪めて近づいてくる者がいた。
「おはよーごぜーやす」
「あ、沖田さん。おはようございます」
と、は一言挨拶を交わし、過ぎ去ろうとしていたのだが、沖田さんは踵を返して、俺達と同じ進行方向に変えた。
沖田さんはの後ろをちょろちょろ付いて回り、「姐さん、姐さん」と呼びかけては彼女の顔を覗き込む。日頃から沖田さんの暇つぶし相手にされているは、最近彼のあしらい方も覚えてきたようだ。
「はいはい。後でかまってあげますからね。今、忙しいの」
「今の今までザキと喋ってたじゃねーですかィ」
「退くんは仕事を手伝ってくれてるからいーの!」
背後に立っていた沖田さんは途端に歩く速度を上げ、俺との前にとおせんぼうをするように立ちはだかる。
「邪魔です。沖田さん。そこどいてください。退くんにも迷惑です」
その突き放した言葉のせいなのか、の素っ気ない態度のせいなのかは分からないが、沖田さんは口をへの字に曲げて、を睨んだ。そしてサラリと流れる前髪の下から、より一層鋭い目つきで俺は睨まれた。沖田さんしまって!その殺気お願いだからしまって!!
ひえええ、と逃げ腰の俺の両目が捉えた沖田さんは、いつもとなんだか違って映った。
「ん?・・・・・あれ?なんだか沖田さんスッキリしました?」
ギンッと目を見開いて眉をピクピクと痙攣させ、必死の形相で沖田さんは訴えて来た。(お前が言うんじゃねぇぇぇぇ!!)と。
そんな一番隊長の姿を見て、山崎は思わず「ぷっ」と心の中で笑ってしまった。
そうか、そうか。そういうことか。
しかし、この猫ならとっくに気が付いているんじゃないか?とそっちの方が気になってしまう。俺以上に沖田さんとは一日に会う回数(ちょっかいを出される回数と言った方がより正しいかも)が多いハズなのだから。
チラリと横にいるを盗み見る。沖田さんを見る彼女の顔は心底困ったような表所を浮かべていて、沖田さんの本意には気付いていない様子である。
はぁ、とは溜息をついた。
「まぁあれだけ飲んで盛大に吐き出せば、そりゃ日頃から溜まっているモノも出せてスッキリするんじゃないですか?」
「・・・・・え、なに?もしかして怒ってんの?昨日膝の上にゲロったのまだ根に持ってんの?」
沖田さんアンタそんなことしてたんかィィィ!と俺は沖田さんをボコボコにする。実際には出来ないから心の中でだけど。
「あの着物、クリーニングに出してようやく返って来たお気に入りだったんですよねえ・・・・」
「・・・・・・・」
いつもならここで一言二言、ドS発言をするパターンなのだが、無言だ。珍しく沖田さんがビクビクしている。他人にどう思われようと基本気にしない彼だが、に嫌われるのだけは怖いらしい。
まったく、これだから沖田さんは憎めない。
いいですか、今回だけですからね。
「まあ、沖田さんも、」
とフォローを入れようとした瞬間、が堪えていたのを爆発させたように、腹を抱えて笑った。
「あははっ、大丈夫。怒ってもいませんし、嫌ってもいませんよ。あんなので沖田さんを嫌いになるわけがないじゃないですか。そんなのいちいちしてたら毎日大変ですよ」
健気だ!なんてこの子健気なの!!
そんな健気なはにこにこと上機嫌な顔で沖田さんの髪の毛をくしゃくしゃっと撫でまわした。まるで泣きじゃくる小さな子をあやすようによしよし、とでも言うような雰囲気で。
「ふふ。前髪切ってスッキリしましたね」
僅かだが、ピクリと沖田さんの肩が上下するのが見えた。
ってばいつから気付いてたの?というのは愚問だ。観察力が高くて、演技の上手い彼女のことだ。きっとからかうつもりで初めから気が付いていないフリをしていたのだろう。
「似合ってますよ。沖田さんかっこいい」
俯いた沖田さんの表情は見えないが、髪の隙間から見える耳がほんのり赤くなっているのが見えた。
「ん」
「はいはい。しょうがないですねえ、もう」
沖田さんが軽く前に付き出した頭をは撫でたり、髪をサラサラと梳いたりしていた。台詞とは裏腹に、少し嬉しそうな顔をして。
その間、沖田さんは、もっと撫でてとでも言うかのように、ずっとの着物の袖を掴んで離さなかった。
その姿はまるで主人に甘える猫のよう。
***
ぶへあああああ!!!
いつもお世話になってます「スイカに砂糖」モグにゃんより、お題「屯所の猫」でかいてもらったった!
かんぺき!かんぺきに登場人物たちの関係を把握しきってます流石モグにゃん!
下手したらウチの猫より萌えるんじゃ・・・・?!ふああああ!
とにかく素敵過ぎる萌えをありがとう萌え!!
銀さん夢サイトは多々あれど、"萌える"銀ちゃんはココ!
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