ぎゅるるん、と世界が反転した後、総悟はハッと目を覚ました。
目の前にはいつも世話してやってる屯所の雑用娘。
「いたたたた・・・・」なんて言って目の前の娘、は目に涙をためて後頭部を押さえている。
その後ろに地面。彼女を押し倒すようにして四つん這いの自分。
・・・・・・・。
えぇぇぇええ、またかよ?!!
今更ながら、総悟は脳内でツッコんだ。
**ワンダフル・りたーん!1**
はてさて、どうしてこうなったかは案外はっきりとしている。
つい先ほどまで、総悟の体は総悟のものであって総悟のものではなかったのだ。
「わうん!」
「ぐぬぬぬぬ・・・・!落ち着きなさい沖田君んん・・・!」
「ごめんヨ定春!の身体!」
「ごふぅ」
ずしぃん・・・と地響き。
ちらりと総悟が視線だけ背後によこせば、リードを持った銀髪の男と拳を握ったチャイナ娘の間で大きな白い犬が目を回して沈んでいた。
そう、つい今しがたまで、総悟はどういうわけかこの万事屋の愛犬と精神が入れ替わった状態だったのだ!
なにが引き金か今の一瞬で戻れたはいいものの。
大好きなこの娘にいつも通り(でも体はいつも通りじゃない・・)飛びついた『沖田総悟』の体をした定春に押し倒されて、まぁ、いまのいままでその顔を舐めたくっていたわけだけれども・・・総悟の体で・・・。
ってコレ企画提出作品のネタじゃねェかぁァァァ!!
アレ限定じゃなかったのか?!そんなしょっちゅう起こるもんなの精神スウィッチって?!
とりあえず、チャイナ娘に鳩尾を殴られるのが紙一重自分じゃなくてよかった・・・などと思いつつ眺めていると、すい、としたから細い腕が伸びてくる。
そして、そのままむぎゅっと頭を抱きしめられた。
「あはは・・・もしかしてこれ定春ですかぁ・・?また入れ替わっちゃったんだ。あはは、よしよし」
「・・・・・・!」
自分の胸に総悟の頭を押し付けるように腕を回し、ぐしゃぐしゃと遠慮なく総悟の髪をかき回す。
「もう、いつも飛び付いちゃヤダって、言ってるでしょ定春」なんて言うの表情はそれでも笑顔だ。
おうい、大丈夫か、なんて万事屋の旦那の声が聞こえる。
ちょっぴり申し訳なさそうに「悪かったな、なんかまた・・そうなんだよ、お江戸は不思議がいっぱいなんだよ」
なんていう声を聴きながら、総悟は自分の置かれた状況を把握しようとぐるぐる頭を巡らせつつ、微動だに出来なかった。
・・・あれ・・戻ったこと気づいてない・・?
まぁ、巨大な体で力いっぱい抵抗しようとしていたところを神楽に殴られる瞬間切り替わったのだから無理もないのだが。
本物の定春は現在夢の中だ。
「今回はイボ春じゃないんですねぇ。よかった」
「・・・お前たいがい江戸の不思議にも慣れてきたよな」
「あはは・・・。凄い音しましたけど、沖田さんは大丈夫ですかね?」
「ま、心配ねェンじゃね。そんでよ、お前、一人で立てる?」
よいしょ、と総悟の下からを抱き上げた銀時は、ぼりぼりと頭を掻きながらの服についた汚れを払ってやる。
「本当、悪ィんだけど万事屋に客が来てるみてーで、俺達早く帰らなきゃならねぇんだわ」
「この前と一緒でしばらくすれば元に戻ると思うからさ、そのままそいつ連れて帰ってちょっとの間預かっててくんね?」
「ええ?・・私はいいですけど・・」
定春、一回近くに寄っちゃえば大人しいし・・・。
なでなでと総悟の髪を撫でながらが言う。
「でも沖田さんの方が大丈夫ですかね・・・?お客さんの前で暴れられても困るんじゃ」
「大丈夫アル!その時はもう一発沈めるだけヨ!」
(俺には容赦なしかあの女!)
心配いらねェ俺はとっくに元の体に戻ってる。そう言おうとした総悟は、次の瞬間その言葉を飲み込んだ。
うーん・・としばらく悩んでいたが「分かりました」と言って息を吐き出したからだ。
「じゃぁ、戻るまで屯所で私と一緒に居よっか。定春」
・・・・・・
わしゃわしゃと撫でる指先。
ずいっと近づけられた顔。
滅多に総悟には使わない親しげなため口。
「ちゃんと大人しくしてなきゃだめよぅ?ね?できるっ?」
「・・・・・・・・わん」
沖田総悟。人生で初めて犬になった瞬間であった。
「このドSが!重いアル!銀ちゃぁん、早く行くヨ〜!」
「おう〜」
仲睦まじく歩き去ってゆくと「沖田総悟」を見送りながら、銀時はにやにやと頬をゆるませて笑いをこらえた。
これで借りは無しだぜ沖田君。せいぜい甘やかされ戸惑うがいいわ!
お読みいただきありがとうございました!
つづくかも。