ふにふにふに。肉球を触る。
ああ神様はどうしてこんな生物兵器をこの世に産み落とされたのか。
膝の上で丸くなるのは幸せそうにお腹を見せる仔犬。目元なんかが後ろで練習している男の子にそっくりだ。
きゅーん。と仔犬が甘ったらしい声を上げる。かわいい。超可愛い。
自然に緩んだ頬で仔犬をニヤニヤと見降ろしていると、後ろから物凄い衝撃が来た。
「あ、すみません」
「・・・〜〜!!!(痛い)」
「大丈夫ですか」
「だっ、大丈夫じゃないです何するんですか」
「さんこそマネージャーの仕事さぼって何してるんですか」
「肉球を触ってました」
それにさぼってなんかいない。今日の練習はもうとっくに終了しているのだ。
後ろでは向上心の高い彼らが閉館時間まで各自自主練習の真っただ中。役目の終わったマネージャーが部活で飼っている仔犬の肉球を揉みしだいてニヤついていたとしても、誰も文句は言えないはずである。
誠凛高校バスケ部マネージャー(という名の監督専属パシリ)の彼女、 。
彼女は側に転がったバスケットボールを、取りに来たおっとりした少年に投げ渡した。
「・・よいしょ」
「な、何故隣に座る・・・練習は?」
「休憩です」
「そうですか・・」
「汗かきました」
「・・・・・」
なるほど彼は垂れるほど汗をかいていて、しょうがないのでは膝の上の仔犬 ――― テツヤ二号を落とさないように気を付けながら、限界まで体を伸ばして自分のバッグをあさる。
水色のタオルを取り出してぽい、と投げつければ、「ありがとうございます」といって隣の灰色の髪は額の汗をぬぐった。
自主練習でどんだけ汗を流してるのか・・・なんて思いながら、は再び膝の上に乗ったもふもふを撫でる。
しばらく前に隣の男・・・黒子テツヤが拾ってきたこの子犬は、にとても良く懐いていた。
「あーあ、大胆にお腹見せて寝転がっちゃって・・」なんて黒子が言う。
拾い主の黒子が隣に来たというのに、の膝の上を気に入ったテツヤ二号はその場を動こうともせず、ふりふりとしっぽを振りながらの腹に頭をこすりつけた。
「ちょっと!黒子くん?!何してんの?!」
「・・いえ、なんとなく」
ほっぺを左右に引っ張られきゃぅんきゃぅんと悲鳴をあげるテツヤ二号を黒子から救出して、が言う。
クールな彼は(本当は熱い人なんだけれど)感情が表情として表に出てきにくいため、何を考えているのか分からない。
「羨ましかったので」なんて言う黒子に「だからってこんな可愛いワンちゃんを虐めちゃだめです」なんて返して、は仔犬のほっぺを優しく撫でてやった。
・・・・・・・ん・・・?
「うら、やま・・?」
「あ、よかった。スルーされるかと思いました」
「え?黒子くん、な、撫でて・・?ほ、欲しいの・・?」
「は?何言ってるんですか?」
「え?!」
無表情を僅かに歪める黒子に、はわたわたと手を振った。
イキナリ思いもよらぬ方向からの言葉のパスに対応できずぐるぐると頭が渦を巻く。突然の対応に弱い自分にとっては心臓に悪い。
あれ?!違う?!聞き間違い?うわ、恥ずかしい!なし、今のナシ!!なんて、は真っ赤になって煙を噴き出した。
彼は言葉もバスケも存在も神出鬼没だ。
「可愛いですね」
「えええっ?!」
「え?テツヤ二号」
「あ、あああそうだね!」
なんて流れは日常茶飯事。彼の天然っぷりにはいつも振り回されてばっかりだ。
それとも、計算された上でのわざとなのだろうか。そうだとしたらなおさら立ちが悪い、って言うか私の手には負えない。
中学の先輩だったリコ姉に誘われるがまま(半強制的に)マネージャーとして入部したバスケ部。
同い年の黒子はにとって天敵と化していた。
最初はどこにいるか分からなかった。
どこにいるか分からないのに突然声を掛けられて、何度腰を抜かしたことか。
それからは、なるべく彼から目を離さないようにした。そうすれば驚かされることもなくなるだろうと。
それでも気づいたら死角にいるのだ奴は。第二段階の印象は「恐怖」。
負けるもんかともっともっと目で追っていたら、
なんと言うことでしょう、いつの間にか好きになっていたのだ。
人間って不思議である。もうわけが分からない。
目で追うようになってしまったがために、彼の意外と熱い部分とか、優しい部分とか、仲間思いの部分を見ることが多くなったからだと思うけど。
黒子を気にし始めてからは彼の言動に振り回される数が前より格段に上昇した。
心臓に悪い恋だと思う。だから彼は天敵なのだ。
「おーい黒子、もう帰るぞ」
そんな火神の言葉が背中のすぐ後ろから聞こえてきて、それにすらもはびくぅっと飛び上がった。
振り返った先の火神はを見て「ん、お。驚かせちまった?わりーわりー」なんて言って謝ってくれた。
これ、体育館のカギ。なんて言って鍵を渡される。さっさと片付けて帰るぞ、と火神。
黒子からボールを受け取って片付けに行く火神を見送っていると、「さん」と名前を呼ばれた。
この人はほんともうこの性質を何とかして欲しい。
隣にいても、さっきまでしゃべっていても、突然驚かされたような気分になる。ずっと見張っておかないと直ぐに思考から消える。
結果このように名前を呼ばれただけでびくぅっ!と飛び上がるはめになるのだ。びっくりする。
「今日、一緒に帰りませんか?」
本当、びっくりだ。
彼の神出鬼没さにはバスケの試合中も私生活でも驚かされてばっかりだ。存在が、だけではない。今みたいに、突然不意打ちを仕掛けて来る。
考えることが多過ぎて、多少パンク気味になりながら真っ赤になって了承の旨を伝えると、ぷっ、と黒子はほほ笑んだ。
頬笑みまでどんだけ不意打ちなんですかこの人!?
普段がポーカーフェイスの彼は表情を変えることすら珍しい。
そんな彼の歯を見せてくしゃっと笑った表情に、不覚にも見惚れてしまった。かぁぁぁ・・・と頬が熱くなる。
「・・・凄い間抜けな顔」
「へあ?!」
「鍵も返しに行かなきゃダメでしょう。あんまり遅いと、置いて行きますよ」
「あ、う、うんっ」
これ、洗って返します、なんて言って水色のタオルを肩からさげて去っていく背中をぽかんと見送った後、はっ!置いて行かれる!と思って慌てては鍵を握りしめて立ちあがった。
その拍子に地面に飛び降りたテツヤ二号は、不満そうに一声鳴いた後、表門へと一足先にかけて行った。
「お待たせしました火神君、帰りましょう」
「あれ、お前待ってなくていいのかよ」
校門にもたれかかっていた火神が視線を黒子に向ける。
「さっき一緒に帰るとか約束してなかったか?」という火神の問いに「はい、約束してました」と黒子は即座に答えた。
「でも置いて行きます」
「・・・・・・」
マック寄って帰りません?なんて歩き出す黒子をしぶしぶ追いながら、火神は複雑な心境で後ろの校舎を振り返った。
が黒子を気にかけているのは知っている。
可哀そうに、一緒に帰ろうなんて言われて、はしゃぎすぎて職員室に向かう廊下で転んでるんじゃないだろうか。
ドジで間抜けで可愛らしいマネージャーの姿が浮かぶ。
「はーあ。可愛い子を振り回すのは楽しいなぁ」
僅かに口元を歪めながら楽しそうに笑う今の黒子を見たら、は「誰だよ!」と言うに違いない。
しかしながらこの一年間共に切磋琢磨してきた自分には分かる。コイツはこういう奴だ。
バスケでも私生活でも、人の裏をかくことが楽しくて仕方がない。
「なぁ・・・あんまり虐めてやるなよ」
「火神君はさんの事が好きなんですか」
「違ぇよ。気の毒なんだよ」
そんな火神を見て、黒子はわざとらしくほっ、と胸をなでおろした。
「よかった」
**切り札を使う時がついに来たかと思いました**
「使えよ!もういい加減使ってやれよ!!」
**********
「えっ、いない?置いてかれた!?」
、彼女の恋の行方はどっちだ?!
END
「Fake it」立花さんへ「黒バスアニメ化記念」プラス仲良し記念に捧げます。
黒子のバスケお相手黒子君で「もしも彼がドSだったら」です。そんなお題は貰ってません。
ねこの思う黒子をさらけ出せとのことだったので、さりげないドSにしてみました。火神君がイイ人すぎる。
初めて書いた他ジャンルの夢ですが・・・・ど、どうでしょうか・・?ねこ臭がぷんぷんしますがねこが書いているのでしょうがありません。
こんなものでよろしければ貰ってやってください><
立花さん、これからもよろしくお願いいたしますっ! 管理人:ねこ えんじゅ=*^ω^*=