※このお話は夢小説サイト「Seiru」の設定をお借りして書いています。
・真選組に一〜十のほかに「女子隊」がある設定です。
・主人公はそこの副隊長です。(メガネです)







午前中の見回りをいたって不真面目にこなして帰ってきた沖田は、至極ご機嫌だ。

「あ!沖田隊長よ!」
「今日もカッコいい!」
「沖田隊長ーおかえりなさーい!」
「きゃぁっ、今こっち向いた―!」

屯所の門をくぐった先で出迎えられた黄色い声にもビクともしない。
それどころか軽く微笑んで片手をあげて応えてやった。
なんて優しいんだ俺。ああ余裕って素晴らしい。





*=*ふぁいなるあんさー!*=*





つい最近、松平のとっつぁんによる「粋な計らい」という名の「悲劇的ビフォーアフター」により、隊内に大きな異変が起こっていた。
松平片栗虎プロデュース・真選組番外隊の設立。しかも隊士は全員「女」である。
ヤツらがやってきてからというもの、沖田の毎日はめちゃめちゃだ。
メガネ女に蹴られたり、土方と映画に行くことになったり、お江戸の外周をマラソンさせられたりと踏んだり蹴られたり蹴られたり・・・。
そんな沖田が本日はご機嫌に昼食の唐揚げ定食を食している。

彼に声をかける隊士などいない。
ぶっすりと箸の先に唐揚げを突き刺して、くっくっく・・・!と敵なのか味方なのか区別のつかなくなりそうな笑みを浮かべる沖田はものすごく不気味で、触れないほうがいいと決めた隊士たちはそそくさと食事を済ませて我先にと食堂から立ち去っていく。


良いものを手に入れた。

もっくもっくと口を動かしながら、沖田は隊服の内ポケットに潜ませた怪しげな小瓶を隊服の上からそっとなでた。
脳裏に浮かぶのは出会ってからこっち何度も自分を足蹴にしている銀縁メガネの生意気女の顔。女子隊の副隊長。
あの女、出会った時からかたくなにメガネをはずされるのを拒み、そのたびに総悟の腰から太もものラインをを回し蹴りでピンポイントに狙ってきやがる。
何なんだ一体。あのラインに恨みでもあるのか。

きっとメガネをとったらものすごく不細工なんだ。写真にとってばらまいてやろう。
そう思いを巡らせくつくつと肩を揺らす沖田が今回“手配”した代物は、無煙性の催涙弾である。

『きゃっ、なにこれ!目が痛ぁい・・・!』

いくらあの女であろうとも。
そうなればあふれる涙をぬぐうため、自ずとメガネを外す他ないだろう。
外さぬなら、外させて見せようホトトギス。これなら自分も蹴られる心配はない!
やばい。今日の自分は冴えてる。キてる!

後はこの催涙弾をどうやって奴に浴びせるかなのだが・・・。
普通に渡しても怪しまれること確実。どうしたものかと腕組みをしながら廊下を進めば、“いままで”の真選組では聞き慣れなかった高い声が響いた。


「だめ!絶対駄目です!」
「駄目じゃありませんー。これは隊長命令ですよちゃん?」

ふと声のした方を向けば、真選組屯所の庭・・・に最近突如出現した女子棟のそばで、何やら隊士たちが言い合っている。
・・・この場合の隊士たち、とは、女子隊の隊士たち、だ。
小柄な黒髪の娘がえへんと胸を張る前で、栗色の髪をまとめたメガネの女が渋い顔をして食い下がっている。

「今日は人出が少ないのでぇ、午後からの見回りは別々の箇所を回りましょう」
「何言ってるんですか。ちえさんを一人で見廻りに行かせるなんて・・・・・そんなの危険過ぎます!」
「やぁだちゃん、心配してくれるの?大丈夫、ちょっとやそっとの事でやられる隊長さんじゃないよー・・」

イヤあんたのこと心配してる訳じゃねェだろ。
少しだけ聞こえてきたその会話から大まかな概要を把握した沖田は、心の中でツッコミを入れた。
、と呼ばれたメガネ女が心配しているのは、目の前であどけなく笑う虫も殺せないように見える美少女が刃物を持った途端「バーニングぐれいとぉー!」なことになり歯止めがきかなくなることに関してだ。

女子隊の隊長は整った顔立ちをしておいて超ど級の危険人物。
綺麗な薔薇にはトゲどころか見境なしの殺人衝動背負ってますけど、何か?実際目の当たりにした時はさすがの自分でも引いた。
副隊長殿の心配ももっともだ。多少の同情のこもった眼でメガネ娘を見やる。あの隊長が一人でいるときに間違っても街中で暴れだしては、尋常じゃない被害が出ること間違いない。

「とにかく、一人は駄目ですっ」
「うー、ん?あ!わかった、大丈夫!一人じゃ行かないから!」

と、ぼーっと眺めていた先の顔がこちらを向き、メガネの奥の瞳と視線が合う。
隣では女子隊隊長が無邪気な笑顔でこちらを指差していた。
・・・・ん?

「沖田隊長と一緒なら、問題ないでしょ!ちゃん」
「・・・・は?」





そして、どうしてこうなるのか。
10分後、沖田は江戸の町を黒髪の少女と歩くことになる。

『沖田隊長・・・なら、別にいっか(死んでも)』
『オイィィ今聞き捨てならねェワード括弧付きで聞こえたんだけど!(死んでも)って聞こえたんだけど!』
『いいですか、ちえさんが覚醒したら、何が何でも押さえ込んでくださいね。大切なのは命です・・・・市民の』
『俺の命は?!』

・・なんて全く参考にならないアドバイスと問題児を押し付けて、は一人見廻りに行ってしまった。
見廻りなんて・・・午後のそれもガッツリサボろうとしていた沖田はなんだか損した気分だ。こっちだって暇じゃない。どうやってあの女に仕掛けようか考えねばならないのに。
そんなことを想いながらため息を吐いていると、隣を歩く黒髪にちょいちょいと袖を引かれた。

「沖田隊長」
「何でィ」
ちゃんに何か渡そうとしてますよね」
「ごほっ!」

突然図星をつかれて沖田は飛び上がった。え?なに?顔に出てた?コイツエスパーか?!
ごほっ、ごほ、な、なんの事でしょうねィ・・?
咳払いに交じらせて沖田が答えれば、女子隊隊長苺井ちえは了見を得たとでも言いたげに、とてもうれしそうな笑顔になった。
「やっぱり・・!隠さなくてもいいんですよ」


ぐいぐいと引きずられるようにして連れ込まれたのはこじんまりした洋風の甘味屋。見廻りのコースからは少々外れている。
まさかサボり?隊長がサボりとかやべぇだろお前とか思いつつも店内を見渡せば、見たことあるような顔がちらほら。
ええと・・・どこで見たんだっけ。

「沖田隊長?!」
「え、苺井隊長、どうして沖田隊長まで?」

そうだ、女子隊の隊士たちだ。

「えへへー実はですねぇ」

苺井は人差し指を口元に持って行ってくすくすと笑いながら顔をかしげた。
しばらくこそこそと何やら話し合っているかと思えば、くるりとこちらを振り返る。
「ここ、ちゃんのお気に入りのケーキ屋さんなんです」

「だから、ここのケーキならちゃん喜んで受け取ってくれると思いますよぅ」
「あー!じゃぁあたしも協力するっ。副隊長はねぇ、このケーキが好きなんですよー!」
「そうそう!先輩これ好きだよねー」
「ちなみにですねぇー苺井隊長はこっちの苺のケーキのほうが・・・」
「だれも苺井隊長の好みなんて聞いてませんんー!」
「きゃはは」

きゃいきゃいと沖田そっちのけで沖田がにプレゼントするケーキが選ばれていく。
そんな光景を横目で見ながら、沖田は呆然と考えていた。
・・・・・よくわからんけど・・。

天命を得たり!!!





独りぼっちの見回りを終えて、は屯所への帰り道を歩きながらん、と伸びをする。
いつも凶悪な猛獣の鎖を片手にしっかり話さぬよう握りしめながらの巡回のため、一人の巡回は思いのほかのびのびと過ごせた。
隊長は大丈夫だろうか。隊長は大丈夫だっただろうか。
そんなことをそれでも他人事で考えながら屯所の門をくぐれば、その瞬間パンパン!と発砲音。

思わず瞑った眼を開けば、の周りには色とりどりのカラーテープが散らばっていた。

「「副隊長お誕生日おめでとー!」」




・・・あれ?・・おや・・?
どうしてこんなことに?
女子に囲まれ微妙に所在なさげにたたずみながら、総悟は頭を捻る。
た、誕生日?誰の?

「・・・もう、ちえさんが急に変なこと言いだすと思ったら・・・こういうことでしたか」
「お誕生日おめでとうちゃんっ!これ、わたしからのキ・モ・チ☆」
「ありがとうございます。なんですかこれ」
「じゃーん!前一緒に見に行った映画の前作DVDなのだ!」
「・・・・ああ・・あの18禁スプラッタの・・・」
「副隊長ー!これ私たちからですっ、いつもお疲れ様ですー!」

そんな黄色い声を聴きながら、沖田は一筋の汗が背中を伝うのを感じた。
いつも無表情なあの娘が多少戸惑いつつもうっすら微笑んで後輩からのプレゼントを受け取っている。
・・・・このシチュエーションで“コレ”を渡すのはどうだろう。
流石に空気ぶち壊し過ぎにもほどがあるのではないだろうか?!
ちらりと視線を向けたのは、手に持った洋菓子屋の箱・・・・の中に仕込まれた“催涙弾”だ。

「なんとですねぇ・・・沖田隊長からもプレゼントがあるそうなんですよっ!」
「キャー!副隊長モテるゥ!」
「憎い!」
「・・・え・・?」

くるりと振り向く、眼鏡越しにも分かる意外そうな瞳。
沖田の手に持っている箱が“お気に入り”だと気づいて少しだけその目が輝く。

「せ、・・・せっかくなんで、いただいときます」

差し出された手に果たして自分はこのびっくり箱を渡してもいいのか。
ぐい、と背中を押されて振り向けば、自分よりも二回りほど小さな黒髪の少女がアイドルさながらのキラキラスマイルでにこ!と親指を立てていた。
渡すんでしょプレゼント!今よっ!


「・・・・・?あれ、・・沖田隊長・・?」
「・・・・・・・・」
「あの、・・手放してもらわないと受け取れないんですが・・・」
「・・・・・・・・」

表彰台の校長先生と生徒よろしく、受け渡すポーズで固まってしまっている沖田とに、隊長苺井がハッと口元を覆う。
沖田隊長・・・これはあれですね!
シャッターチャンスって事ですね!!
カメラァーーー!だれかカメラ持ってきてェーーーー!


渡さなければ、非道。渡せば、外道。
パシャパシャとまばゆく焚かれるフラッシュの嵐の中、沖田総悟はただただ迷っていた。


渡すべきか、否か!!









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seiru美緒嬢様に捧げます。
なんか、いろいろとキャラがつかめてなくてごめんなさい。
沖田さんが誰だよお前状態でほんとすみません。
本当誰だよお前。

こんなんでよろしければもらってやってください><
これからもよろしくお願いいたします*^^*