以外の取り調べが終了し、最後の取り調べは総悟が行うことになった。

土方は別に自分がやることになっても構わなかったが、山崎と総悟にどうしてもととめられたから。
更には取り調べしている様子も見るなとの事だ。
そんなわけで真撰組副長は取調室からも追い出されてしまい今は外で待機している。


「もしかしたら結構手荒な取り調べになるかもしれねーから土方さんは外で待ってて下せぇ」


自分を試すように、しかしなぜか恐る恐る聞いてきた総悟が眼に浮かぶ。
山崎といいコイツといい、テメェらの女が摘発されたわけでもあるまいになんでお前らの方が顔色が悪いんだ。

土方が自分の女が相手だからといってぬるい取り調べをするとでも思われているのだろうか。
そうだとしたら余計な心配もいいところだ。こんなことで冷静を掻くようでは、戦場でいくつ命があっても足りない。

むしゃくしゃしているのに煙草を吸う気にもなれず、土方は咥えていた煙草を箱へ戻した。




しばらくすると取調監視室から幾分か顔色のよくなった山崎が現れた。 「終わったか」と聞けばもう少しだそうだ。
「それより・・」と続けようとした山崎の言葉は、続いて出てきた総悟の手によって阻まれた。
総悟はと言えば取り調べの前よりも浮かない顔をしている。

取り調べは総悟の得意分野であり大好きな仕事の一つ。こんなに楽しそうじゃない取り調べ(の総悟)は初めて見るので「どうした?」と問えば、

「あの女ァ・・・とんでもねェ女ですぜ」
「・・・は?」
「とにかくもうちょっとで終わるんで土方さんは引き続き絶対に入らねェで下せぇ」

もう容赦しねえ。

そんな捨て台詞を吐いて山崎を引っ張り取り調べに戻っていく総悟を見送り、土方は無意識に溜息が出た。



思い返してみれば自分の女・・・は、いかにも普通の女だったように思える。

普通に笑い普通に泣き、会う約束が仕事でぱあになることが続けば拗ねて口をきいてもらえない時もあった。
たまにしか会えないことには何も言わなかった。その代り会う約束を破れば物凄く怒られたが。

私の事本当に好き?という問いを何度もされた記憶がある。そしてそれに当たり前だろと答えた時の満足そうな顔は、それだけで心が落ち着いたものだ。

何もないところでよくこけるしテレビの何気ない会話で声をあげて笑う、無垢と言えば聞こえはいいが、多少抜けた性格。
そこに自分も惹かれた。はずなのに。

そこまで考えて土方は自分の体の異変に気付いた。何か、得体のしれない何かがこみ上げてくる。


刹那刀で突き刺されたかのような痛みが左胸に走り、訳も分からず右手で掴むように押さえる。
足元がぐらつき壁に手を付けば、その手がかなり汗ばんでいて土方は驚いた。


考えてしまった。

考えないようにしていたのに、はそんなことする人間ではないと、したとしても何か理由があったはずだと、思ってしまった。


「もう容赦しねえ」
ふいに総悟の言葉が頭をよぎる。

そうなると頭に浮かぶのはおぞましい光景ばかりで。
でも、総悟が言っていた「とんでもねえ女」がの本当の姿だったのなら。
が本当は血も涙もない、自分が手のひらでまんまと踊らされ上手く利用されてしまうくらいの悪女なら、この左胸の耐え難い痛みも少しは退くかもしれないと、

あ、確認のために、俺が今から取調室に入るのは決してが心配だからじゃなくて、真撰組副長として、もう二度ととんでもない女に騙されないようにだな・・・

「えええ!ちょっと沖田隊長!!!!!」

土方の朦朧とした考えの堂々巡りは、突如取調室の中から聞こえた山崎の悲鳴によってかき消された。

理由なんて、今の山崎の声で十分足りる。というか、ここは普段からしても入らなければいけない場所だろう。



「どうした?」そんな考えで入った土方は、その状態で固まった。

山崎が取り調べ監視室の窓に張り付いている。のは置いておいて、問題はその窓の向こう、取調室だ。
何がどうなってそうなったのかは全く分からなかったが、とにかく、

総悟がを押し倒している。

土方の頭に?が大量に浮かぶ。
なんで?本当に何がどうしてそうなった??!

そして続く総悟の次の言葉を聞いて、土方の体は無意識に取調室に飛び込んでいた。


「それじゃぁ、アンタの体に聞いてやりまさァ」
「待てエエエエエエええええ!!!」
「と、十四郎くんっ?!」

自分を見上げる、総悟との4つの瞳。飛び込んだはいいがどうしたものかと土方が途方に暮れていると、にやりと総悟の口角が上がった。


「どうしやした?」
「え、いやァ・・・えっと・・・」

「そ・・・そいつの体に聞くなら・・いいアドバイスができそうだなァと・・・・」
「・・・・・」


刹那ゆでダコのように真っ赤になる。ぶふっと噴き出す総悟。慌てて右手で口を押さえるも、堪え切れてない。

爆笑してるのにこらえてるよこいつ。

そして土方はそれだけで十分に状況を把握することができた。よかった。それくらいは冷静さがこの身に残っていて。

とりあえず、総悟にこの娘を襲う気は感じられなかった。




「つまり、宿の経営には関わっていたけれど何も知らされていなかったと」
「宿屋の親父も言ってやしたぜ。こんなどんくせぇ娘に大事な計画離してうっかり洩らされでもしたら大事でぇ。よかったなアンタの女がどんくさい女で」
「ほうほうよぉく分かった。んでお前は俺を外に待たせてる数十分の間確認程度で潔白が分かってたと何話してたんだ」
「あ、知りてェですかィ?」
「・・いや、いい・・・・」

どうせ俺への愚痴だ。自分の女が捕まったというのに心配して様子を見に来てくれすらしない。
本当に土方は自分が好きなんだろうか。じゃぁ試してみますかぃ?
的な流れだ。もう読めた。絶対これだ。それであの状態とセリフだ。

現に今現在はそう言った眼で睨んできている。
私の事心配してくれてた?信じてくれてた?総悟に襲われそうになってて嫉妬した?そんな目だ。

土方は大きくため息をつく。どっと疲れが出た気分だ。知らないうちに随分と緊張していたのかもしれない。
そんな土方を見てわざとらしくとぼけた声で聞いてきたのは、山崎だった。


「たばこ、吸わないんですか?」
「アァ?そんな気分じゃねーんだよ・・」
「こいつアンタが来てから一本も吸ってねぇんですぜぃ?態度は全然普通のくせによ、気持ちわりィ」
「え」

土方ははっとした。
そんなこと自分でも全く気が付かなかった。は煙草の煙が苦手なのだ。
はまたしても顔を真っ赤にする。確かに、こうも顔に出ちゃぁ機密事項なんて話したくもなくなるわな。


「ね。もし何か理由があって、私が本当に悪いことしてたとしても、嫌いにならなかった?」


赤い顔で恥ずかしそうに、しかしはっきりと言われて、土方は今度こそ本当にめまいがした。
総悟の言っていた「とんでもない女」は、あながち間違いではないかもしれない。

にやにやと見る総悟と山崎を気にしながらも「当たり前だ」と答えた土方に、は満足そうにほほ笑んだ。



end









平静を装った心の底でぱにくりまくり状態な土方さんでした。沖田さんが別人です。(オイ)