「あらあらァどうしやしたァ?そんなに怯えてぇ」




鼻より上にできた影、見下すような目、これでもかと言ったくらいつりあがった口元。

半年も。
半年も一緒にいて、今まで一度たりとも見たことのないようなどす黒い表情に、は鳥肌が立った。


ぎゃああああああああああああ!!!!

「きゃむぅっ・・・!!!」
「こらこら、でけー声出さねーでくだせぇ。土方が来ちまう」


ぐい、と起こされてするりと後ろに回り込まれ、悲鳴を上げようとしていた口を片手で塞がれる。足を投げ出して座ったまま、後ろからがっちりホールドされているような体制だ。
ちらりと見えた彼の服装は、稽古着のままだった。


ふぇ、フェイクかァァ!!!!


ふぇいふふぁぁぁ!!!もごもご口を塞がれたままが叫べば、総悟はの耳元でくつくつと、実に楽しそうに笑った。
・・こんなに楽しそうな総悟も、は見たことない。
今まで自分といる時も十分楽しそうだったが、なんというか、これは「楽しそう」の種類が違う。

「ん?」と再び耳元で声がして、口を塞いでいない方の手がの足元に伸びる。


「・・・・・いいモン持ってんじゃねェかァ・・・」

にたぁ・・と音でも聞こえてきそうなくらい、総悟が笑顔になったのが分かった。彼の手には先ほどまでが持っていた小型の隠しカメラ。


ぴゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!

やばい!まずい!殺される!!いや、殺されるより恐ろしい目にあわされる!!!
じたばたと暴れるを総悟は口を押さえた片手と両足でがっちりガードし、もう片方の手でふむふむとカメラを調べている。


べろり。と、急に耳の中を舐められた。
びくゥーーー!!!と体をこわばらせるの耳元で、聞いたことないくらいの低い声で総悟は囁く。


「――コレで、今からアンタがむちゃくちゃにされるのを撮ってやりやしょうか」


殺せぇぇェェェェェェエエエエ!!!!いっそのこと殺してくれぇぇェェェエエエエ!!!!

むちゃくちゃにされる!むちゃくちゃにされてしまう!!
やばい!やばい!死のう!そうだ舌噛んで死のう!!
そう思って舌をかもうとすれば、ずる、と口内に入って来た総悟の指によって舌を掴まれた。


「いひゃいいひゃいいいい!!」
「舌噛んで死のうなんざ勘弁してくだせぇ。アンタの顎の力じゃ痛ェだけで死ねねーよ」


ぶにぶにと舌を引っ張りながら総悟は言う。「まァ、冗談は置いておいて」
冗談は置いておいて??!!どこが?!どの辺が?!どこまでが?!!

「アンタ、別に俺の事好いてねェだろう」
「!!!!!」

ばれてる!ばれてる!!いつから?!なんて肩を震わせながら真っ青になって考えるの後ろで、総悟はほくそ笑んでいた。


くくく、ばーか。

そんなの、最初からでぇ。







一目惚れって本当にあるんだなァ、と総悟は考えていた。
自分の目の前で、真っ赤になって目を釣り上げ、「泥棒猫がァァァ!!!」と叫ぶ少女。
何事かと思ったら、どうやら遊んでやった女の妹分だとか。

あーそれで泥棒猫か。レズかこいつは。

そんなことを想いながら、総悟はその娘から目がはなせなかった。
強気な態度、潤んだ瞳、赤らめた頬、その全てが・・・・

・・・ドストライク・・!!!

総悟は頬が赤くなるのを感じた。恥じらいの赤ではない。興奮の赤だ。
目の前で自分に向かって「泥棒猫が!!」と吐き捨てるこの女に、物凄くぐっと来てしまった。
変態か俺は。いや、変態だ俺は!!

それからの行動は早かった。
一度調教してやった女は全て自分の思い通りだ。
のねーちゃんを巧みに操り、に総悟の彼女を演じさせるところまで総悟の作戦通り。
後は時が来るのを待つだけ。


この俺が自分の部屋をノーマークで他人に放りだすかぃ。

テメェが持ってきたオモチャよりも高性能な隠しカメラくらい既に設置済みでぇ!!


だから、俺が出ていった後にきょろきょろと不審な行動をとっているのも、押し入れの中身を見た瞬間のアンタの顔もばっちり見てやした!!ニヤニヤしながら!!

物事にはギャップが大事。
そのために今日までには思う存分優しく接してきた。
街で会えば笑顔であいさつしたし、躓いて転べば(半分くらい自分がさりげなく誘導して転ばせていたのだが)優しく手を差し伸べた。
が猫を被りやすいように。

そして総悟もまた、猫をかぶっていたというわけだ。



「――まァ、ここでアンタをむちゃくちゃにするのはわけねえが・・・」

それじゃぁ折角今まで俺に尻尾振ってくれてたアンタがかわいそうだしなァ。
ひとつ、逃げ道を用意してやりまさぁ。
・・・ま、選択の余地はありやせんがねぇ。

「俺の女になりなァ。アンタはこれからも、朝昼晩と俺に尻尾振って生きていくんだよ」

は震える目で総悟を見た。真っ赤な瞳、震える口元、上目遣い。
うっはぁあーその顔!!どーもご馳走さん。


「さァて、・・どちらにしやすかぃ?」

答えは聞いてやせんけど。

の口から返事を聞くため、ゆっくりと口に入れた指を引き抜いてやる。涙と唾液でべとべとだ。
この返答が終わったらさっそく綺麗にしてもらおう。


今まで散々尽くしてきたんでぇ。
今度はアンタが俺に尽くす番だ。


そんな考えに緩む頬を隠しもせず、総悟はぎゅぅとを抱きしめた。

せいぜい、これからも可愛がってやりまさぁ。




end







なんだかとんでもない話に。す、すみませんでしたァ!!
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