「さんさん、もう本当僕この学級嫌になっちゃって」
「ー!!リコーダーでファの音以外を出すにはどうしたらいいアルかァー!」
「ちゃぁん!一緒にお妙さんを落とす方法を考えて・・・ぐぼハァァ!!」
「なァ。マヨネーズはどうして森羅万象何にでもあうんだろうな」
わいわい、がやがや。
わたしの周りにはいつも人が絶えない。
というのも、わたしがこのクラスの「お悩み相談所」的なポジションであるからだ。
ここ、坂田銀八先生率いる3年Z組は個性的なメンバーが多い、ゆえに、みんな個性的な悩みを日々わたしにぶちまけに来る。
もちろんいやというわけじゃない。寧ろ聞いていて面白い。
新八くんは何だかんだ言って先生もクラスメイトの事も大好きだし、神楽ちゃんは大食いだし、近藤くんはいざというときには頼りにな・・・たまにはなる時もなくは・・・ないとも言い切れないし。
十四郎くんはいつもかわいそうだし・・・。イヤこんなこと本人に言ったら怒られるけど。
いつも何もしていないのに喧嘩の中心になったり無茶ぶりの対象になったりしてて、相当うっぷんがたまっているのだろう。
いつもクールで、なんとなく人を寄せ付けないような怖さを身にまとっている彼が一度、相当困り果てた時に「俺の味方はだけだよ・・」と助けを求めてきた時は本当にびっくりした。
同時にうれしくもあったけれど。
最初このクラスに配属された時はこんな濃いメンバーの中で果たしてやっていけるのだろうかと不安にもなったが、そんなのも杞憂。
たくさん友達も出来たし、皆といると楽しいし。
先生も適当だけれど生徒の事を大切に思ってくれているいい人だ。
「オイ、」
「あ、沖田くん」
この人を除いて。
沖田総悟。甘いマスクにやる気のない性格。
他人とかかわることがあまり好きではない彼だけとはあまり話したことがない。
・・他人とかかわることが、と言っても、沖田くんは親しい人とはよく話すし、からかったり喧嘩もよくしている。
イコールわたしはまだ親しい友達とは認められていないんだなぁとちょっと悲しくもあったが、話す機会がないのだからしょうがない。
そんな総悟が珍しく私に話しかけてきてくれた。
興奮する心を落ち着けて「なあに?」と聞けば、総悟はずいっと顔の近くまで寄ってきて、見下すような冷たい顔でこう言った。
「お前、うるせーんだよ」
「ご・・・ごめんなひゃぃ・・」
・・・超怖かった。ちょっと涙出た。
*=*YESなら瞳を閉じて*=*
第一印象は、かっこいい・・・!だった。
第二印象は、はっ腹黒ぉぉーー!!だった。
第三印象は、意外とやさしい・・?だった。
そして第四印象がこれだよ。
超こえええええ―――!!!!
わたしが何をしたよ?!
最初は一目ぼれだった。目で追いかけているうちに、外見とは想像もつかないような中身を垣間見て、余計に惹かれていった。
クラスになじんだ未だにあまり話しかけられないことを残念に思いつつも、いつか友達として、彼の側にいてもいい存在として認められたらなぁ・・・なんて考えていた。
見事に打ち砕かれたけれど。
沖田くんはわたしのことが嫌いなんだ。しょんぼりしながらそんなことを考えていると、突然ばふ、と頭を教科書でたたかれた。
「ぃー。どした。うかねぇ顔して」
下校時刻がいつの間にか過ぎていたようで、死んだ魚のような目をした担任が無気力に見降ろしている。
ごめんなさい、何でもないんです。先生さよならー!なんて言いながら慌てて帰り支度をして、夕暮れの中一人で帰った。
「オイィ」
「はっ・・・はい、なッ何でしょう・・?」
あれからはお悩み相談所も自重して開く回数を減らしたのに。
総悟に死ねと言われて(いや死ねとは言われてないうるせーんだよって言われた)一週間がたった。
上記の例えはあながち間違いではなくて、気になっていた相手が珍しく話しかけてきたと思ったら「うるせー」で、仲良くなるのはもう絶望的だと、はとても落ち込んでいた。
そして沖田くんは怖かった。
「・・・そんなに怯えんじゃねぇや」
「そそ、そんなことはない・・ですよ」
何故敬語。
「教科書見して」
「ど、どうぞっ」
びくびくしながら教科書を押し付ける。
それを受け取った総悟は少し眉を寄せた。
「俺に渡しちまったらアンタが見えねェだろ。覗かせてくれるだけでいいんでぇ」
「え?!いや、いいです。あの、使ってください。わたし、そうだ、寝たふりするんで」
「オイコラーぃぃー聞こえてっぞォー」
思いのほか大きな声が出ていたのか、銀八のツッコミが入る。
「ま、いいけどォー」と興味のないように授業に戻る先生にオイ、と心の中で突っ込みながら、はうつぶせに机に突っ伏した。
総悟はそれを渋い顔で睨んだ後、突然立ち上がりの首根っこをガシリと掴んだ。
「ひゃああああああ!?」
「せんせーが具合悪いみたいなんで保健室連れてってやってもいーですかー」
何ィィィィィイイイ!!!???
今度は私が何をした?!またいらいらさせちゃった?!挙動不審だったから?!
そんなことを考えながらわたわたしていると、銀八は面倒臭そうに加えていた煙草の煙を揺らした。
「待てー沖田。別に具合悪くねーから。ついさっき仮病だって自分で宣言してたからァ」
「本当に具合悪いや。なァ?」
「なァ?」と耳元でどすのきいた声を浴びせられて、は夢中で首を縦に振った。
気持ち悪いです沖田くんに保健室連れて行ってもらってもイイデスカ。
銀八はため息を一つついて「勝手にしろ」と言った。ずるずると総悟に引きずられて教室を出る。
ど、どこに向かってるんですか沖田さん?わたしはいったいこれからどうされてしまうんですか沖田さん?!
青い顔でがたがたと震えながら、は自分の明日がきちんと存在していることを願った。
「ぎゃんっ!」
連れてこられたのは屋上だった。ぽい、と地面に放り投げられる。
どうしよう、どうしよう、屋上って、あれだ。絶対フルぼっこにされるパターンだ!
「・・・なんでそんなに怯えてんの?」
「ひゃぇっ!?ご、ごめんなさいィィィ」
慌ててその場で正座(何故)するの前に、どっかりと総悟は腰を下ろした。
その表情は呆れ果てている。
だって、やだよ、これ以上嫌われるとかマジ勘弁なんですけど!
「相談に乗ってほしいことがあるんでぇ」
「・・・・へ・・?」
「アンタ得意だろ、そうゆーの」
「え、と・・」
こっそり相談に乗ってほしかったから授業中こうして拉致したの?!むちゃくちゃじゃね?!
そんなことを思いながらも、どうやら彼は今自分に対して悪い感情を持っているわけではなさそうだということを知る。
寧ろこうやって相談に乗っていくうちに彼との距離を縮めたいと思っていたのは自信だ。
もしかして、仲良くなれるチャンス!
は仄かに頬を赤くして、目の前に座る栗色の毛の少年の悩みを聞くために、精一杯空気を和らげた。
「悩みって、何かあったの?」
悩みを聞く上でまず大切なのは、相手の話に興味を持ってやること。
それから何にでもうんうんと相槌を打つこと。
話したくないところには無理に突っ込まないこと。
時折ある沈黙にも気にしてないそぶりを伝えること。
「土方がうっとおしいんでぇ」
えーと・・・。
彼の相談に乗ったことなかったからしょうがないのだが、予想外の総悟の悩みに、は何と答えていいのか分からなかった。
「いつもうるせーし」
「マヨネーズの匂いするし」
「近藤さんも何かあったらすぐ俺じゃなくて土方に行くし」
「うん、うん」
悩み相談室がただの愚痴聞き場になることはよくあることだが、それにしてもよくもこうまぁ土方に対する煩わしさをつぎつぎ暴露するものだ。しかも言い方がどんどん過激になって来る。
「土方死なねーかな」とか
「土方マジマヨネーズで溺死しねーかな」とか
「土方ほんとと頼むからマヨネーズを命綱替わりにバンジージャンプして死なねーかな」とか・・・。
それでも、は親身にうん、うん、と相槌を繰り返した。
「そんなわけで、だからアンタもあんまりあいつに近寄らねー方がいいですぜ」
「あはは、そうだね。マヨネーズの匂いは流石に移ってほしくないしね」
「・・・・・なァ。それとは別件で、もう一個聞いてほしい悩みがあるんだが」
いいですかぃ?と尋ねる総悟に、は大きくうなずいた。
たくさん話を聞いて、いろんな表情も見れて、少しでも総悟と仲良くなれた気でいたのかもしれない。
だから、次の総悟の言葉を聞いて、の心臓は氷でできた手で掴まれたように締め付けられた。
「俺のクラスでよく他人の悩み聞いてる女がいて、そいつの話なんだけど」
え・・・。
「いや、いやいや!本人の前で愚痴言うのやめようよ!わたし目の前で死んでくれねーかなとか言われて耐えられるほど強くないから・・!」
しかし、慌てて立ちあがろうとしたの腕は、ぐあしっ、と総悟の手によって掴まれた。
「いいから聞けや・・・」
超こえええええーーーー!!!
あまりの恐怖にぼろぼろと涙がこぼれる。ちびる!ちびる!!
そんなを見ると、総悟は慌ててぱっと手を離す。
ため息をひとつはいて、困り果てたような顔でぐしゃぐしゃと自分の頭を掻いた。
「これだよ・・・これに困ってんだよ・・」
「ふ、ふえ・・?」
「いらいらするんだよ・・」
アンタが、他の奴と話してる声を聞くと。
の周りはいつも話声で絶えない。
色々なクラスメートがに相談を持ちかけ、はそれを笑顔でうん、うんと聞いてやる。
最終的に聞こえてくる笑い声。男女問わず押し掛けてくるため男との会話。話声。笑い声。
いらいらする。
うるさい。喋るな。笑うな。
俺だってとおしゃべりしたい。
「・・・・え・・?」
「気になるんでさぁ。寝たふりしてても、一番遠い席で他の奴らと話してるアンタの声がはっきり聞きとれちまって。離してる内容が気になって仕方なくて」
「・・・・・」
「そのくせ俺がはなしかけても全然笑顔にさせてやれねェ・・どうしたらいいんでさぁ・・」
苦しそうにうつむく総悟に、の心臓は狂ったかのようにフル稼働し始めた。
どきどきどきどきどき。・・・ちょっと張り切って稼働しすぎではないか?
ちらり、とを見た総悟が固まる。少し驚いたような表情。
え、なに?わたしどんな顔してるの?なんて思っていると、すぅぅー、と総悟の目が細まった。
・・・それと同時ににたぁ、とつりあがる口元。
・・・・・・え。
「・・なんでぇ」
「え?な、何?」
「そう言うことかィ」
「そ、そういうことって?」
「・・・なあ、頼みまさぁ」
俺のこのもやもや、何とかしてくだせぇ。
耳元でそう囁かれて、の頬がぼっと赤くなる。
「な、なななんとかって、どうすれば・・」と震える声で言えば、「さァ?どうしたらいいと思いやすかぃ?」と、先ほどよりも耳に口を近づけて囁かれた。
「とりあえず、ちゅーしてもいいですかぃ?」
「えええ?!そんな、付き合ってもいないのにチューなんてしていいものじゃありませんっ」
「ほぉー、じゃぁ付き合ったらいいんだなァ?」
しっしまったァァァァァ―――!!!今わたし完全に墓穴掘った!!
反対の腕も掴まれる。ぐいとむりやり座らされて、総悟の方向を向かされる。
顔、近い。どんな顔すればいいのか分からない。というかまともに沖田くんの顔も見えない。
「」
びくり。
「アンタの事好きになっちまったみたいでさぁ」
ぐぐぐぐぐ・・・!と思い切り力を込めてみるが、やはりびくともしない。さすが男の子。
「責任とって、付き合っちゃくれやせんかィ?」
けして目を合わせないように下を向いていた視線を覗き込む形で掬いあげられて、流石にも観念した。
沖田くんキミ絶対告白するときの顔じゃないだろうそれ超ニヤニヤしてるんですけど。
そしてめちゃめちゃ楽しそうなんですけど!
諦めたように一つため息を吐き、
肯定の意味を込めて、はゆっくりと目を閉じた。
999hit優唯さんリクエスト、3Z総悟で片思い⇒両思い。
実は3年Z組よく知らなかったり・・・。フル妄想で書きました。こんなものでよろしければ貰ってってくださいな。
自分だけ苦しまされただけでは絶対に終わらせない。それが総悟クオリティー。
ブラウザを閉じてお戻りください。
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