「ちいーす、、見舞いに来てやっ・・・・・・・・」
真選組一番体隊長沖田総悟は、病室のカーテンを開いて・・・そこで停止した。
「・・・・・何やってんですか旦那・・」
「おっ、沖田くんっ?!ち、違うんだよこれはッ!!」
カーテンの向こうでは、ベッドの上でに覆いかぶさった銀時が、真っ赤な顔をしてこちらを見上げていた。
その顔が青くなる。
・・・あ、刀握ってんのか、俺。
=あいするあなたに子守唄を=
「流石にそれは犯罪ですぜ」
「違う違う違う!全く持って全然やましいことなんてこれっぽっちもないからね!」
そう言いながらも銀時はベッドから退こうとせず、の隣に横になった。
待ってましたとばかりに隣の銀時にしがみつく。
「病院生活なんて初めてだったらしくてな。他人の気配がいっぱいして一睡も出来てなかったんだと」
「へーアンタと一緒ならぐっすり眠れるんですかィ」
当然だ、と何故か誇らしげにふふんと鼻を鳴らす銀時を見降ろして、引っ張りだしてきた椅子での前に座る。
は早くもとろんとした表情で、しかし一応の来客にくるりと総悟の方に向き直った。
その目の下には大きなくま・・・まぁ確かに、彼女の場合知らない人間に囲まれて眠れるほど周りを信じられる環境で生きていなかったため当たり前か。
「寝てーなら邪魔しねェけど」
「・・・・」
ふるふると首を振るに、総悟は手に持ったコンビニの袋から小さな四角い物体を取り出した。
・・・一応緊急事態だったとはいえ、自分に抱きつくまでにはこの娘は総悟を認めてきていることは確か。
寝ようとしていたところ悪いが、今なら総悟の手からもチョコを食べてくれるかもしれない・・・
・・・なんて自分でも子供みたいだと思うような思惑を持ちつつ、今日は総悟は見舞いでキューブチョコを買ってきたのである。
「ん。食え」
「・・・・・」
フィルムをはがして苺チョコを口元に持っていけば、眉をしかめる。
ちっ、今日もダメか。
彼女の後ろで大口を開けるおっさんの口にそのチョコを放り込んだ後、総悟は再びガサガサと袋をあさりだした。
「うんめー沖田くん、さんきゅー」
「別に。俺ぁ苺チョコより抹茶の方が好きなんでぇ」
残念を隠しきれないままに若葉色のパッケージをはがす。それを自分の口に入れようとしたところで・・と目があった。
え、何それ。何その黄緑のチョコ。
そんな声が聞こえてきそうな、興味津々の瞳。何お前苺チョコしか見たことねーの?
「・・・・食ってみる?」
「・・・!」
の口が僅かに開く。あーんか?あーんなのか?!
人には絶対懐かないはずのキツネリスが指を舐めてくれたような、そんな果てしなくきゅんきゅんした気持ちを表に出してたまるか、的な複雑な心境で、自分の口元にあった抹茶チョコをへと移動させる。
つ、ついにか?ついにか?
食べて。食べて。食べて。
ドキドキしながら差し出した総悟の指から、はふんふんとチョコの匂いを嗅いだ後、ぺろりと一口で口に含んだ。
もく、もく、とゆっくり動かす口。目線はずっと総悟を見ている。
きゃあああああああ!!
総悟は心の中で黄色い悲鳴を上げる自分にツッコミを入れた。どこの女子高生だお前、いや俺!!
野良猫が、こちらを警戒しながらもぺろぺろと自分のやったミルクを美味しそうになめているのに、「いやーん、かわいいー!」と顔をにやけさせる女子学生が想像できて、ぶんぶんと頭を振る。
・・ま、まさか自分の中にそんな感情が存在していただなんて。
こくん、と美味しそうに喉を鳴らすと、口を半開きのまま頬を染め、きらきらとを見つめる総悟を交互に見やって、銀時はくすりと息を吐いた。「沖田くん」
「もう一個欲しいってさ」
「え?ぁ、もっもう一個食う?」
「・・・・」
こくり、とが頷く。自分用に買ってきた3個の抹茶チョコは、全ての口におさまった。
うふふ、なんて聞こえてきそうな満面の笑みで、少女の頭をなでなでと撫でている一番隊隊長の姿を部下が目撃したら、数日寝込むかもしれない。
しかしそれほどの感動を今俺は味わった!わーい!やったぜ!
くるりと銀時の方を向き、その胸にしがみつき大人しくなる。
どうやら寝る態勢に入ったようだ。
「そういや、気になってたんだけど何で土方くんはのこと知ってたの?」
「昔書類で見たことあったらしいでさ」
ほとんど記憶にも残っていなかったが、「鈴の音が響くような声」という単語はなんとなく頭に残っていたらしい。
そこで、普段ほとんど言いまわしなんて気にしない総悟が「万事屋の猫が鈴の音が響くような声だった」なんて洒落た例えを使うものだから、まさか、と思ったらしい。初めての声を聞いた日には土方に自慢したものだ。
そう説明すれば、自分から聞いてきたくせにさして興味のないように「ふうん」と銀時は頷いた。
「気になることと言えば、俺も一つ旦那に聞こうと思ってたことがあるんでさぁ」
「ん?何?」
「アンタらの歌聞いたんでしょう・・・どうでした?」
歌、というのはが万事屋を飛び出して行った時の事だ。逃がしてたまるか的な気持ちであふれていたはずの万事屋がすぴすぴと気持ちよさそうに爆睡していたことから、相当眠気を誘う歌だったんだろう。
きゅう、とその時、が銀時の服を掴んだ。
それを見た銀時は、ふふっ、とほほ笑む。
「退院したらお前にも聞かせてやるってよ」
「・・・今のでよく分かりやしたねぇ・・」
当たり前だ、と再び鼻を鳴らす銀時に呆れながら、んじゃ楽しみにしときやす、と言って総悟は席を立つ。
聞いた話では退院まで一週間。来週が楽しみだ、と総悟は肩をすくませた。
「」
眠っているものとばかり思っていたその肩は、名前を呼ぶとピクリと反応した。
「俺ももう一回聞きたいなァ〜の歌」
「・・・・・」
「どうしたら聞かせてくれる?」
「なァ?」わざとらしいといえばわざとらしいそのもの言いに、は顔を銀時の胸に押し付けたまま、その肩をぴくぴくと震わせる。
・・・笑っているのだ。
くすくす、銀時も堪え切れなくなって笑いをもらした。
この娘の考えていることは言葉を使わなくたって分かる。
『何もしなくても、いつでも聞かせてあげるよ』
「絶対だぞ?いつでも聞かせられるように、いつでも側にいるんだぞ」
銀時におでこで頭をぐりぐりと押し付けられて、はくすぐったそうに首をすぼめた。
fin.
最終回です。神楽と新八が出てこないという=-ω-=
もし気が向いたら番外編なんてのも増えるかも。
応援ありがとうございましたっ! 管理人:ねこ