ハァ、ハァ、ゼイ、ゼイ、
息を切らして向かうのは、腐れ縁のカラクリ技師のもとへだ。
1階のスナックに姿のなかったカラクリ娘。ヤツの行きそうなところと言ったらここしかない。
バァン!とけ破るようにカラクリ技師の店のドアを開ければ、目的のロボっ娘と一匹は果たしてそこにいた。

「お、オイ・・・たま・・・・お前・・・・」
『銀時様。どうなされましたかそんなに息を切らして』
「わんっ」

ぶはぁぁぁ〜〜〜〜!
銀時は息を吐く。よかった。コイツラは相変わらず自分を覚えているようだ。先週のアニメ銀魂をYoutubeで要所だけ押さえておいて、本当に良かった。
この世界に何が起こったのかは、おそらく本誌と同じであろう。
しかし今の銀時にわずかでも利があるとしたら、それは自分の協力者となる彼女らとこの時点で合流できたことだ。
人の誕生日にヘイヘイしゃしゃり出てきた奴には一刻も早く天誅を下さねばならない。さあ俺とともに行くぞ戦士たちよ!!
先ほどまでの不安はいづこへやら。燃えたぎる闘志をその眼に差し出した銀時の手を、たまとポチはちらりと見ただけで顔をそむけてしまった。

「イヤですけど」
「ぁおぁ〜ぅふ・・(欠伸」

何でだァァァァァ!!!

「なんでだよ!オメーら原作でもアニメでも俺の味方じゃなかったのかよ!!」

銀時は叫んだ。そう、事態は一刻を争うのだ。早くしなければ俺のホールケーキが関係ない金髪とガキ3匹に食い散らかされてしまう。
一緒に俺のホールケーキ取り返してくれよ!!悲痛な叫び声をあげる銀時に、たまはいたって冷静な視線をよこした。

「そんなに行きたいなら銀時様一人で行ってください。私は今定期健診的なアレがアレなので」
「アレがアレってなんだァァァァ!隠語かァ!!なんで?!俺何も悪くないよ!!」
「今回の場合、他シリーズにかまけてまったくこっちのシリーズに顔を出さなかった銀時様が悪いと思われます」
「それ俺悪くないぃぃぃ!!悪いの管理人んんん!!!」

そして他シリーズでもそれほど出番まわってきてる訳じゃないんですけどォォ!





この世界でたった二人の協力者がいないのはつらい。
独りぼっちになってしまった銀時は、とぼとぼとかぶき町の道を歩いていた。
先ほど見たホールケーキはきっといつか昔に無くなってしまっているだろう。俺のケーキ・・。
多少順番は前後してしまったが、ここは本誌アニメをならって気を紛らわせるために、「逆SM」の店にでも行くか・・・
とそんなことを考えながら大人しめの快楽街の角を曲がった瞬間、銀時は体をこわばらせて反射的に傍の電柱の陰へと身を滑らせた。

宿敵坂田金時。彼と手をつないで小さな娘が歩いている。だ。
お散歩中だろうか。未だ一人では不安がって外を出歩けない少女のために、銀時もよくああして散歩に連れて行ってやったものだ。
そんな二人の前に一つの黒い影が現れる。
真選組。その姿を見て銀時はひらめいた。銀さんの代替品ということは、真選組とも仲が悪いのではないか?

原作には確か出てこなかったはず。異端分子の銀時を始末しようと金時がかかわりのある仲間を集めたあの中に、ヤツらの姿はなかった。
たまと定春が戦力外になってしまった今、心外だが今回だけ手を組んで邪魔者を始末するのもやぶさかではない・・・そんな危険思考を巡らせる銀時の視線の先で、
黒い影・・・真選組の沖田総悟は、万事屋坂田金時と向き合った。

「や、沖田君」
「・・・どーも」

総悟はちらりと金時の隣にいるを見やった。ぺこり、はお辞儀をしただけで何もしゃべらない。
それはいつもの事だ。この娘は過ごしてきた環境や経験してきたつらい過去から、外ではあまり声を出したがらない。
影から見守っていた銀時は首をかしげた。二人とも偶然会ったという風ではなさそうだ。かぶき町のはずれ、こんなところでこそこそと何を・・・・

「相変わらず外だと無言ですねィ、このおじょーさんは」

「・・・まァ、今日ばかりはソレもちゃんと保つかどうか、危ういでしょーがねィ・・・」

ぞくぅっ!!
突然顔に影を作って凶悪に微笑んだ総悟に、眺めていた銀時は身震いだ。なんだ、なんだ。これから何が行われようとしているのか。

「旦那ァ・・・コレ、約束のブツでさァ」
ブツ?!ブツって何?!

「アア・・・確かにいただいたぜ」
「それじゃァ約束通り、コイツぁ借りてくぜィ・・・オラ、来なァ」
えええええ?!ちょっと何この雰囲気?!

「ぇ・・・で、でも、きんちゃん・・・」
「俺はいいから、沖田くんとアソんでやってきな?ちゃんということ聞くんだぞ」
「そーいうワケでぃ。アンタのダイスキな旦那のためだろ・・?キめちまえよ・・案外楽しいぜ・・・?」
「・・・ぅ、ん・・・頑張る・・・」
「いい子だ」

ちょおおおおおおお!!!
コラァァァァアアアアア!!!!
金の裏は真っ白じゃなくて真っ黒だったんですけどぉおおおお!!!!

皆の人気者金さん裏ではとんでもねえ身売り屋営んでんですけどォ!!身売り屋金ちゃんだよ!!
信じられないほどどす黒い笑みで笑い合って別れた二人を見やって、銀時は叫ぶ。
こっちの金さん黒すぎ!!!
そしてなぜか共鳴して沖田総悟も漆黒の闇と化しているんですけどォ!!

総悟とはいくばくも歩かぬうちに、ビルの隙間にある小さな店へと入って行ってしまった。
何の店だァ?ここをどこだと思っている。
おテントさんが上ってるからって舐めんな!ここは欲望渦巻くチュウヤ夜の街かぶき町だァァァァ!!!
流石にこれは見逃せん!そして沖田君マジ見損なったわ!!
物陰から駆け出した銀時の肩は、次の瞬間力強いてのひらにガシリと掴まれる。


「よォ兄弟。盗み聞きたァ感心しねェぜ」
「!!てめぇ・・・」
「邪魔しねーでやってくれや・・・アイツら今頃中でお楽しみだァ」

にゃああああああああんん!

「!!」

がばりと振り向いた先の店の扉の向こうで、かわいい可愛い飼い猫の悲鳴にも似た黄色い声が上がる。
さーっ、と血の気が引くのを銀時は感じた。マジか。マジでやったのか沖田。信じらんねえ・・・!
それでも銀時が動くことができないのは。
の上げる悲鳴に含まれるのが確実に「拒絶」だけではないことであるのがわかるからだ。

やぁぁぁぁぁぁ・・んむっ・・・!
コラコラ、興奮すんのは分かるが音量落としなせぇ・・他のお客さん方に迷惑だろーが・・

微かに聞こえてくる総悟の言葉尻も、それでも笑いを隠せていない。
他のお客さん?他のお客さん??!
それは一体何プレイのお店ですかッッ!!?


「・・・な?お前がわざわざ行かなくても、俺達はうまァーく回ってんだよ」
「・・・・・・・畜生・・・」

肩を掴む強い力が離されると同時に、銀時は回れ右をして駆け出した。
このまま立ち尽くして、店から出てくる総悟とを見る事になるのだけは耐えられなかった。





あてもなくうろうろとかぶき町をさまよって、一体どれくらい歩いたのだろう。
通りの団子屋の椅子に腰かけうつむいた微動だにしなかった銀時の視線が、ゆっくりと上げられる。

「こんなところにいた」
「・・・新八」
「探したアルよテンパァ。さっさと帰ってくるヨロシ」
「・・・神楽」
「すみませんおねーさん、わざわざ通報してくださって・・・ホラ、立ってくださいよ銀さん。みんな待ってますよ」
「・・・・・??」

団子屋の娘(通報したらしい)にぺこぺことお辞儀をしながら、子供ら二人に首根っこを掴まれずるずると引きずられていく。
目前の赤く染まった夕日を眺めながら、銀時の頭には???が大量に飛び散っていった。

・・・・あれぇ・・・??







「「銀さん(ちゃん)お誕生日おめでとー!」」

ぱんぱんぱーん!
降り注ぐクラッカーの雨。
その向こうによく知るその姿を見つけて、銀時は体をこわばらせる。
「・・金・・・・!」

「よぉー兄弟っ!遅かったじゃねーか」
「え?えぇぇ・・・???」

連れ帰られた万事屋の部屋。
机の上に並べられたのは様々な料理と色とりどりのケーキ。
その向こうで総悟とオセロをやっていたが銀時に気づいて一瞬で飛んできた。

「ぎんちゃんっ、お帰りー!」

「・・・どゆこと??」
「どういうことって、こっちが聞きたいですよ。てっきり源外さんのところにいると思ってたのに」
「たまと定春がそこに居れば絶対銀ちゃんもそこにいくと思ってたヨ!」
「せっかく金時さん使って芝居してまで追い払ったのに。今度は行方が知れずだなんて」

つまりはこういうことだ。
準備
銀時
邪魔
それでスーパー金時DXを呼び寄せて一芝居うって、混乱した銀時に準備ができるまでの間かぶき町の端っこのカラクリ技師のところで待機していてもらおうと。
とりあえず一呼吸おいて、銀時は自分の腹にしがみつく娘をじと目で睨み付ける。
で?お前は沖田君とどこで何してたわけ。

「ケーキ屋さんでケーキ選んでたよ!」
「そいつの興奮ぶりといったら・・旦那にも見せてやりてェくらいでしたぜィ」
「だってぇー!苺がいっぱいで美味しそうだったんだもん!!」
「紛らわしいわァァ!!!主に顔が!!」

真っ赤な顔をして兄弟を睨み付ければ、まったく自分にはまねできないほど澄んだスマイルで金時は舌を出した。

「てへ」
「いっぺん爆発しろやてめぇぇぇええええええ!!!」




その後金時DXは跡形もなく洞爺湖によって破壊された。
ちなみにその20分後、「ふぅ〜バックアップを取っておいてよかったぜ〜」などと言いながら再参加を果たした坂田金時は、
額の汗をぬぐいながらこういったらしい。






――――――― ノリノリで書き始めたのに途中から迷走していく空知先生の気持ちが分かった気・・・げふんげふん。






END





銀さんお誕生日おめでとうございます!
なんか全力で祝われてないような気がするのは私だけか。
何とか間に合ってよかったー!ほんと、本当におめでとうね、銀ちゃん!だいすき!


「金のスプーン」は10月末くらいまで開催されていると思います。

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