夜も深くなったころ、ここは真選組屯所の監察室。
机の側に腰を下ろす山崎の目の前で、総悟が胡坐をかいていた。

「はあ?怪しい?何がですか」

きょとん、と目を丸にして、素っ頓狂な声を出した山崎に、総悟はなおも真面目な表情で続ける。

「何って、アイツらでィ」
「副長とちゃん?」
「ん」

総悟の話によると、最近彼のお気に入りのからかい相手が副長室にこもる時間も頻度も急上昇なのだそうだ。
銭湯について行ってやろうかと言っても遠慮される。あろうことか、今日なんては土方を連れて銭湯に行ってしまった。
これは、確実に何かある。確実に二人の間に何かがあったのだ!

「何かって、何ですか」
「何って言ったら・・・ナニだよ」
「ええええええええ?!」
「シッ、声がでけェぞ山崎」
「いでっ!・・・いや・・あ、でも、そう言えば最近ちゃん俺のトコにも来なくなったな・・・前は副長のとこ持ってく愚痴の3割くらいは俺のところにも来てくれたのに」
「だろ。ぜってー二人だけの秘密的なアレだって」
「でも、あの二人に限ってそんなんあるんでしょうかね?副長そう言うのに関しては、言っちゃなんですが超奥手じゃないですか」

総悟に蹴られた内腿をさすりながら、山崎は二人の様子を思い描いた。
幸せそうに土方にすり寄ると、鬼の副長という異名からは想像も出来ないくらい穏やかな表情で娘の頭をなでてやる土方。
土方はのことを、恋愛感情と言うよりは、大事な飼い猫というか、可愛い妹のように思っている節がある。
で全身で土方を慕っているが、それも恋愛というよりは尊敬の念に近い。
そこまで考えて、山崎はふ、と笑みを零した。

「何でィ」
「や、俺は相手が副長なら問題ないんですけど」
「何ィ!山崎!この裏切り者!」
「いや意味分かんないですよ。それにしても・・・」

あの二人が恋仲になるとか、ちょっと想像できないや。
そう言いながら笑う山崎の前で、総悟はため息をついた。







**壁に猫耳障子に鬼の目**







ここは副長室。
いつものように机に向かって筆をとる土方と、それにもたれかかるようにして寄り添うの姿がそこにあった。
コトリ、スラスラと動かしていた筆を止め、硯へ置く。
自分へもたれかかる娘をちらりと見た土方は、呆れたような溜息を吐いた。

「オイぃー。寝るんなら自分の部屋行け」
「ん、ぅ・・・はぁぃ・・」
「たく・・」

言いながらも土方の表情は穏やかで、筆を置いた方の手での頭をくしゃくしゃと撫でてやる。
と言えば、頭を揺らす感触に幸せそうに瞳を閉じて、ねこのように首をすぼめて喉を鳴らした。
全く、コイツは本当に・・・、
くすりと土方が心の中でほほえんでその頬に手を当てれば、多少寝ぼけながらはすり・・、とその手に自分の頬を押しつけて来る。
本当に・・・・、
・・・・なぁんにも分かっちゃいない。
するりと手を移動させてその顎を持ち上げ、無防備に晒されたその唇に、土方は自分のそれを重ねた。

「んっ・・・」

触れるだけのそれが離れていく様をぼーっと眺めていたは、次の瞬間にはボッ、と真っ赤になる。
顔から湯気を吹きだし、頭には「!」とか「?」を大量に浮かべている彼女をもう一度引き寄せ、今度はずっと深く唇を合わせた。
驚いて逃げ惑うの舌を捕まえ、からめ、吸いつく。
くちゅくちゅと粘液の混ざる音。口端から溢れたそれを気にもせず、からめとった彼女の舌をかり、と甘噛みしてやれば、はぎゅぅっと目を瞑ってぞくぞくと背を震わせた。

「ん、はぁっ、・・・あ・・ひじ・・お、お兄ちゃん・・・?」

ようやく解放されたは、酸欠で息を荒げながら、真っ赤な顔で恐る恐る土方を見上げて来る。
その目に溜まった涙を舌ですくい取ってやれば、びくん、との体が跳ねた。

「まっ、て・・・お兄ちゃんは、こんなこと、しな、あっ」
「誰がお兄ちゃんだって?」

ぎゅっと抱きしめてやれば小さいの体はすっぽり土方の腕の中だ。
逃げられないようにしっかりと包み込んで、土方の唇は今度はの耳へ。
耳たぶをぺろりと舐め上げられながら吐息交じりに低く囁かれた言葉に、の全身をびりびりと弱い電流が駆け巡った。

「なあ、誰が、誰のお兄ちゃんだ?」
「え、あッ・・・んっ、そ、それは」
「・・お前ももう分かってんだろう。俺は“もう”お前のお兄ちゃんじゃねえ」

いつまでも妹として見られてると思ってちゃァ、大間違いだ。


「俺はお前の事・・・とっくに妹としてなんて見ちゃァいねェよ・・・・」







ぎゃははははははははは!!!
バシバシと監察室の床を叩きながら、真っ赤になって転げまわって笑っているのは、総悟である。
その前で正座をしている山崎も、口元は緩みほっぺたは真っ赤。
イヤ、イヤ、イヤ。

「何その台詞?!『とっくに妹としてなんて見ちゃァいねェよ・・』ナニ?!なんて少女マンガ?!は、は、腹痛ェ・・・!!」
「えぇー?結構いいと思ったんですけどねぇ」
「『とっくに妹としてなんて見ちゃァいねェよ・・』・・・やべえ、ツボった・・!うははは・・っ」
「でも副長なら言いそうじゃありません?あの人、そういう王道的な展開好きですから」
「た、確かに・・・ぐふふっ・・!」
「笑い過ぎですよ隊長」

いや、いや、と総悟は一通り笑い転げた後に首を振る。
そんなんじゃまだまだ甘い。
「やっぱ、そう言う関係って言うのはこうでなくっちゃァ」






「失礼しまーす。書類をお持ち・・・あれ」
「山崎か。御苦労」

副長室の扉を開けた山崎は、一瞬キョトンとした後にふふっと柔らかい笑みを零した。
土方に抱き抱えられるようにしてすやすやと眠るのは可愛い親友の姿。
その顔は土方の胸に押し付けられているため表情は見えないが・・・きっと幸せそうな、安らかな寝顔なんだろう。
隊士達には鬼の副長と恐れられているこの男の胸の中でこうも安らかに眠れるとは、なんとも彼女らしい。
そして土方も。小柄とは言え娘一人胸の上に置きながらも、彼女越しに机に向かって筆をとっているのだから。
もう本当、彼らしいとしか言いようがない。

起こしても悪いし、簡単な報告だけにしておこう。
机越しに土方の前に腰かけようとしたその時、んく、と子供がしゃっくりを我慢した時に漏れるような、そんな変な声が小さく聞こえた。

「?副長、今何か言いました?」
「イヤ?」

気のせいか、と思い持ってきた書類を広げ読み始めれば、特段変わったこともなく、
土方もいつも通りのしかめっ面で報告を聞き終え、駄目だしはキッチリされ、次の指示を出す。その間も、はずっと眠っていた。

「これで報告は以上です」
「うむ、御苦労だったな。次もヘマすんじゃねぇぞ」
「ハイハイ」

ぴくり、とが動いた。起きるのか?と思いきや、やっぱりそのまま。
どんだけぐっすり寝てるんだよ、と山崎は苦笑いを零し、土方の胸にあるの頭に手を伸ばす。
どんな幸せそうな顔をして寝てるか、ちょっと興味があったのだ。
頭を撫でられたはぴく、と動き・・・びくぅっ!と飛び上がり、もぞもぞと動いて余計に土方の胸へと顔をうずめてしまった。
・・・なんか悪い夢でも見てるのだろうか。
山崎は手を引っ込め、その場を立ちあがる。

「あ、副長、寝かせるなら、毛布かけてあげてくださいね。最近寒いから」

山崎が去り、その気配が完全に消えるのを確認した土方は、「たく、テメーに言われなくても分かってるよ・・」と零した後・・・・・、
・・・・ゆるやかに、その口角を持ち上げた。


「大したモンだ。よく我慢したなァ」
「・・・っく・・ん・・」
「寒いから毛布かけてあげて、だとよ。こんなに熱ィからだしといてなァ」

胸の上にある頭の耳元でそう囁けば、娘の体がびくり、と跳ねる。
土方の胸に顔を押し付け必死に声を殺そうとしているを楽しそうに見やり、土方は彼女の中心に付き立てていた指をぐにっ、と曲げた。

「きゃ、はあ・・!んっ」
「でもなァ・・・上の口は黙ってても、下の口がぐちゅぐちゅ喋りっぱなしじゃァ意味ねーなァ・・。気づかれたんじゃねーの」
「あっ、ぃやぁっ・・」
「イヤ?」

の中心を掻き回していない方の手で娘の髪を乱暴に掴み、ぐい、と上を向かせる。
抵抗なく向けられた娘の顔は真っ赤で、目じりは涙で滲んでいて。
切なげに寄せられた眉、虚ろな瞳。だらしなく開いた唇からは唾液が垂れており、浅い呼吸が漏れていた。
土方はにっこりと優しい笑顔を浮かべながら娘に問う。

「俺にこんなことされるの、嫌か?」
「んぁ、ひっ、ひじかた、さぁ」
「正直に言ってみ」


「俺のこと嫌か・・?・・・ねこ」
「んんっ!あぁああっ」


きゅぅぅぅぅ、との中が締まる。
髪を掴んでいた手を放し、頬にあてがってやれば、こんな状態でもはその手にすがりついてきた。
こんなことされて、こんなこと言われて、が抵抗出来ないのを土方は知っている。

「・・・ねこ」
「あぁぁっ、土方さんっ、土方さぁあっ・・す、き・・」
「ん。良く言えました」

土方は満足そうに目を細め、最奥まで指を付き立てた。
ひゃあんっ、と可愛らしい声で鳴いて、可愛らしい猫は体を仰け反らせびくびくと震える。
そして仕上げだと言わんばかりに熱く滾った自分のモノを、その小さな体に・・・・。







「って、それ副長じゃなくてアンタの邪な願望じゃないですかっ?!」

ばんばんと監察室の机を叩きながら、真っ赤になった山崎がツッコミを入れた。
ちょっとドキドキしちゃったじゃないですか!と文句を言う山崎の頬は緩んでおり、ドキドキ具合がちょっとどころじゃなかった事を表わしている。

「イヤ、土方さんはせめ方も王道が好きかなァと思って」
「全然王道じゃねーよそれ?!アンタにとってだろ!外道の王道だよ!!」
「何でィ、山崎もニヤニヤしてたじゃねーかィ」
「うっ・・・ま、まぁ、最近ちゃんが副長室に転がり込む量がハンパないってことは確かですよね!」
「そーなんでぃ。何かあったんじゃねーかと思ってねィ・・・あ、今度直接聞いてみるか。それも面白そーだ」

ここまで盛り上がっておいてなんだが、総悟も山崎も、と土方がどうにかなっているなんてこれっぽっちも思っちゃいない。
全部冗談。の様子が変だけど何か聞いてない?から派生した程度の笑い話。
妄想だって、年頃の男二人で話していれば珍しくもない下のお話。
ところが、

「エッなになに?何の話ですかぁ?」
「面白そーな話してんじゃねーか。俺達も混ぜろよなァ」
「え?ああ、だから副長とちゃんの、はな、・・・・し・・?」

突然後ろから割り込んできた話声に、振り返り笑って今の話題を説明しようとした山崎が固まる。
同様に、総悟もである。

「ええ?雑用娘が副長室に顔出し過ぎじゃないかって?まぁ・・否定はできませんよね」
「そうだなァ。確かにここ最近は毎日のように長い事副長室にこもってることは認めざるを得ないなァ」


「でも、こうは考えられないでしょうか。副長室に行く頻度が高いのは、どっかの誰かさんの悪戯が最近度を超えて酷いから、と」
「ね、姉さん・・・」
「こうは考えられないでしょうか。相談に行かないのは、楽しみにしていたプリンをこっそり親友に食べられたことを、実は未だ根に持っているから、と」
「ふ、副長・・・」


振り返った先にいたのは、隊士達がであったら絶対に「何かあったんですか」と尋ねたくなるような・・・・・・二つの笑顔。


「「他人を話題に出してエロい話で盛り上がるのはやめていただきたいッッ!!!」」


ばこぉぉぉん!ばっちぃぃぃん!
気持ちのいい二つの音が響き、監察室に男二人の死体が出来上がった。
イヤ、副長に殴られた俺はともかく沖田隊長はに殴られたんだから、俺よりも確実にダメージは少ない・・・はずだ。
そんなことを山崎が思う前で、“噂の二人”土方とは、はん!と鼻息荒く吐き捨てた。

「ったく・・・なんつー話で盛り上がってんだコイツらは・・!」
「ほっ、ほほ本当ですよ!!」

ん、と思って土方が隣を見れば、は立ちあがりフルフルと震えていた。
その顔を真っ赤にさせて。

「ん。オイ?」
「わ、私と、ひ、ひひひひ土方さんが、そんな関係になる、ワケ、なっ、ななな・・・!」
「オイ、なに動揺してんだ」
「ひいっ!?」
「・・・・え?」

いっ、イヤ!!ちち、違うんですよ?!
け、決してさっきの話に感化されて意識し出しちゃったとか、そんな私がいくらアホでもそんなことととttt・・・!!?

ワケの分からないことを口走りながら、完全に混乱して(とりあえず目は漫画のようにぐるぐるになっていた)何故か土方に掴みかかって来たは、そのまま自分の勢いに押されて土方を巻き込んで監察室の床にダイブする。
その結果。
総悟・山崎曰くの、「土方の好きな王道・お約束」な展開になってしまったわけで。

かああああぁぁぁぁぁ・・・・!!
と、真っ赤になったの顔の直ぐ前で、負けず劣らず真っ赤になる土方。

「い、いや・・なな、なんで土方さんまで赤くなってんですかぁぁ・・あのっ、ふつーに、スルーしてくださいよう・・!」
「いっ、いやいや・・・なんでって・・・お前が赤くなるから、つい、その、・・・う、うつって・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「「・・・・・・・・・」」


ごちそうさまでしたッッ!!コノヤロー!!


ばああああん!!
障子を蹴破って、総悟と山崎は監察室を月夜の晩に飛び出す。









はいお疲れ様でしたー!そしてお待たせ致しました!申し訳ございません。
10000hitリクエストで、「土方さんと甘ーなうらねこ」でした!あ、甘ー・・・・?
裏の部分は何故か全て妄想ですが、なかなか好きなお話になりそうですwヘタレな土方さんも、妄想の中でなら!(おい
遅れてしまったお詫びと言っては何ですが、本編にupしちゃおうと思います。
こんなものでよろしければ貰ってやってください。リクありがとうでした!!