「・・・ん?」


気が付くと、総悟は自分の部屋の布団の上で横たわっていた。
外はまだ暗い。起きる時間を間違えたかと寝がえりを打とうとして、総悟は固まった。


・・・あり?


固まったのではない。現在進行形で固まっている。

体が、うごかない。






21.飼い猫に腕をかまれる





何だ何だ?
体中がしびれて指一本動かせない。
動かそうともがいても体力を消耗するばかり。
ふぐぐぐぐ・・・!と何とか片手を布団から10cmほど浮かせ、そこで諦めて力を抜いた。
それだけのことで息が乱れる。ぜいぜい、ぜいぜい、
どーいうこったこれは。


「こんばんはぁ沖田さん。いらっしゃいますか?」
「ねえ、さん」


襖の向こうで聞こえたその声に、総悟は安心した。
思ったよりもかすれた自分の声には不安になったが。
ナイスだ姉さん!これで助けが呼べる。
ただの風邪か?それとも新種の侵略型ウイルスか。・・・江戸は何でもありなのだ。


「あれ?どうしたんですか?入ってもいいです?」
「どう、ぞ・・」


天井を見つめながら何とかそれだけ声を出せば、すぅっ、と障子の開く音がした。
しかし、「沖田さーん?」と覗きこんでくるの姿が視界に入った瞬間、総悟はなんだか嫌な予感がした。
何か、違和感。
が総悟の部屋にいることが、違和感。


「・・ね、さん・・?」
「動けないんですかぁ?」
「・・え・・?」


笑っている。が笑っている。
イヤ笑っているのはいつものことだから不思議はないのだけれども。
笑い方が。いつもと、違う?
いや、
いや、

まさか。


「ほんとに動けないんですかぁ?もしかして呂律も回ってません?」
「ま・・まさかとは、思いやすが、・・な、なんか、盛りやした?」


姉さん?


「さあ。どうでしょうねぇ?」



てめえええええええええええ!!!



総悟はぐったりと力が抜けた。なんだ、なんだ。どういうつもりだこの女は。
どういうつもり、でぇ、とかすれた声を上げれば、悪戯の仕返し、出来るもんならやってみなせェって言ったのは沖田さんですよ?と言われた。


「だからちょっと痺れ薬でも盛って動けなくなったところをなぶってやろうかな、なんて」



ええええええええ!

飛躍しすぎだろうがァァァァァァァ!!!!



「姉さん・・アンタこんなことしてタダでぇえっ・・・!」
「はーい総くん、お薬盛られただけでタダで済むとおもわないよーにぃっ」


が突然総悟に覆いかぶさり、唇を塞いできた。
ぴくりとしか動かない体では抵抗の使用もなく、その軽い体にあっさりと押しつぶされる。

むううううううう??!!

え?!
え?!
姉さん?!
・・・・なぶるってそっちィ??!!


「あ、アンタ何考えて・・・ぬ、脱がすなぁぁァァ!!」
「んー?今の沖田さんなんて怖くもなんともないんだけどなぁー?」


にこにこと、いやにやにやと総悟の隊服を脱がせたは、プチプチとベストのボタンをはずしにかかる。
しゅるり、と抜かれたスカーフの感覚にひやりとする。


「目隠しでもしてあげようか?」


いるかァァァァァァァァ!!!!



待て、おちつけ、落ち着け、俺。
確かにさっきとちゅーした。ちゅーした。
それはご馳走様だ。うん、ご馳走様。
でも、
これ以上はまずい。
ていうか現在進行形でこれはまずい。
立場が逆ならどんと来い、マジでうんマジでどんと来い寧ろどうぞいらしてくださいな展開だが、いかんせん「逆」だ。

総悟がを押し倒すことがあってもが総悟を押し倒すなんてあってはならない。
自分がを襲うことがあっても自分がに襲われるなんてことあっていいわけが・・・


「ね、ねえさん・・?何してんですかぃ・・」
「んー、ベルトを」
「どこまでやるんでぇ?!」


そうだねぇどうしようかな、なんていいながらはだけた胸元をつい、と指でなぞられれば、それだけでぞくりと体が震えてしまう。
待て、待て、逆、逆、逆!!
あらくなる呼吸をに悟られたくなくて、何度もつばを飲み込む。
むりやり呼吸を押し殺して、ゆっくり深呼吸なんてすれば、もう一度に口をふさがれた。


「余裕ないねぇ・・早くない?」
「誰が盛った、薬のせいだと!思ってんでえっ」


呼吸を塞ぐかのような口付けが離れれば、ぜいぜいと乱れる呼吸。自分だけだ。かっこ悪い。
心臓がバクバク言っている。お前これ痺れ薬じゃない薬も混ざってんじゃねえの?!


「ヒっ・・・」


するりとズボンに入ってきた手が総悟自信を握り、思わず声が裏返る。
なんだこれ、なんだこれ。
おかしい、おかしい、おかしい!
が総悟の耳に口をつけながら「真っ赤」と息だけで笑う。
それだけで頭の中がぐるぐるとかき回された。

自分が一度パニックに陥ると情けないほど弱い、というのは痛いほどよく知っている。
ドSだからこそ撃たれ弱いって奴だ。


「そお、くんっ」
「はッ・・・ん・・・!!」


耳元でささやく声に、ゆるゆると自分をさする指に、時折耳の中へ侵入してくる舌に、総悟は面白いほど翻弄された。


「おんなのこみたいだよ?」
「や、め・・・」
「やぁだ」


甘ったるい声で耳の中で囁かれれば、腰のあたりにじぃんと鈍い痺れが走った。たいがい総悟も何も考えられなくなってきている。
さっきから頭の中をめぐってるのも、やばい、やばい、ばかりだし。


「あらあら、こんなになっちゃって・・・苦しい?」
「ぅ・・・」
「ねぇ。イきたい?」
「ぃ・・き・・」
「なあに?きこえないよぅ?」


総悟はフルフルと頭を振る。少ししか動かなくてフルフルとまではいかなかったけど。
ははたしてこんなにドSだっただろうか?!
ぐるぐる回る頭で必死に考えたのはそんなことだった。

は総悟の上半身を半分起き上がらせ、背中をまくらでかう。
そして自分はその下半身に顔をうずめて・・・・


「舐めてあげよっか。『お口でしてください』って、言ってみ?」


うっすらと上気した頬、上目遣い、うっとりと歪んだ口元。


「ねえ、さ・・・・」
「言うの」
「・・・ぁ・・・」


ぁ・・・


あっ・・・



あほかァァァァァァァァァァァアアアア!!!!!!!








総悟は布団から飛び起きた。





チュンチュンと雀の鳴く声。
ハァハァと荒い息。体中から噴き出した脂汗。


ゆ、夢。夢か。よかった。イヤよくない!


総悟はそのまま頭を抱えた。な、なんつー夢見るんでぇ・・・
夢は深層心理に潜む願望を映し出す・・なんて聞いたことがあるが、冗談じゃない!
自分がを犯す妄想は毎晩・・・げふんげふん、たまーにはするが、今のは違う。完全に逆だ。逆!
逆です!!!


「沖田さん?!今通りかかりざまになんか悲鳴が聞こえたんですけど、大丈夫ですか?!」


弾かれた様に振り向けば、障子の向こうに少し小柄な影。
大丈夫ですか?何かありましたか・・?ああでも危ないから部屋には入りたくないし・・・なんて聞こえてくる。
そうだ。
現実のはあんなに簡単に総悟の部屋になんて足を踏み入れてこない。




「あ、あの、障子開けますよ?」

「入ってくんなァ!!この痴女がァァ!!!!」
「ええええええ??!!痴女?!」


こんな夢見た直後で、どんな顔して会えっていうんでぇ。


うるさい障子の向こうを無視して、総悟は再び布団へもぐった。













初の裏(?)に挑戦・・・うわぁ・・・・どん引きだわ。アンタ誰。
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