「ぅっ・・ぐぁ・・・」
がぶり。
押しつぶすようにのしかかった体に首筋を噛みつかれて、はぐっと眉をしかめた。
肩口にうずめられた亜麻色の髪がさらりと頬をくすぐる。どうしてこうなったのか。
日も暮れたころ、アポも取らずに警察官の恋人が家を訪ねてきた。
玄関を開けた瞬間彼の口から飛び出してきた言葉は「トリックオアトリート」。そう言えば今日で10月も終わりだった。
トリックオアトリート。訳せば「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ」。
ただこの男が言うと「悪戯させろ」としか聞こえない。それはもうなんか流石としか言いようがないけれど。
目の前に掲げた紙袋を揺らしながら男が言う。「ほれ、お菓子くれねぇんなら、これに着替えなせぇ」
どうでもいいような表情をしておいて、やる気のないような声を出しておいて、その眼はわずかにわくわくと輝いている。
「上がってもいいですかィ」
「ん、あぁ・・・どうぞ・・・」
ずかずか我が物顔でリビングへと上がりこんだ総悟はぴたりと足を止める。
そして、渋い顔をして大きく舌打ちを打った。チイッ!
・・・・・・舌打ちされた!!
**クッキーなんて最初からなかった**
リビングのテーブルのうえに置かれたのはこんもり山積みになったクッキー。
どうだ恐れ入ったか。こう来るであろうことはこちらだって予測済み。伊達に何度も今まで振り回されてきていない。
そんなことを考えながらはソファに腰かけた。穿き慣れていないロングスカート、締め付けるような腰回り。
胸元で揺れるリボン、・・そして、背中から生えるコウモリの羽。
そんなを眺めながらもぐもぐとクッキーを頬張るのは、カーペットの上に腰をおろしたミルクティー色の髪をした男である。
・・あれ、なんで?
「総悟。いくつか質問させて」
「へぇぃ」
「このカッコ何」
「ヴァンパイアコスでさァ」
「何でこんなの持ってんの」
「知り合いのちょっとしたツテで手に入れやした」
「総悟今何食べてんの」
「え、アンタが焼いたクッキー・・」
トリックオアトリートじゃなかったのか?!
悠々とクッキーを口に運びながら着替えさせた私を眺める男を睨み付けながら心の中で叫ぶ。
あれこれ結局お菓子用意してもしてなくても展開に変わりはなかったって事?
「この程度のトリートで俺が満足すると思ってんのかィ。あ、残りはお持ち帰りで」
「すでにお腹満足してんじゃん!!」
「お前スカート似合わねェのな」
手に持ったティーカップ。こくりと一口紅茶をのんで、総悟はニヤリとこちらを見上げた。(その紅茶ももちろんあたしが出しましたとも)
そりゃ総悟はのスカート姿なんて見慣れていないだろう。スカートでアンタの彼女が勤まると思わないでほしい。
たんに一緒に街中を歩くだけでどんだけアクロバットだと思っているのか。他人に見られて興奮する性質は持ってない。
「んじゃ、もう一個の甘いモンも頂きますか」
「ちょっと待って。総悟隊服だよね。仕事は?」
「イヤだなァそれを俺に聞くかィ」
「この税金泥棒!」
あらら吸血鬼さんはご機嫌斜めですかィ。
そんなことを言いながら伸びてきた男の掌が後頭部を引き寄せる。
これだけ用意させておいてこの男はが仮に「トリックオアトリート」なんて言っても甘味の一つも持っていないのだろう。
ただの自分勝手なのか、はたまた「悪戯上等」なのか。こっちは吸血鬼にまでなってやったのに!
頭の後ろの手を払って自分から唇を合わせそこにがぶりと歯を立ててやれば、男は一瞬驚いたように目を開いた後、それはそれは楽しそうに口角を持ち上げた。
「・・てェなァ。なにすんでぃ」
「彼女吸血鬼にしてニヤニヤしてる方が悪い」
「ん・・」
「むぅっ」
仕返しとばかりに唇全体を覆うように噛みつかれる。痛い。
肩を押し返そうとすれば、逆にそのままソファに押し倒されてしまった。
「いっ・・・たい・・総悟、痛、」
「ん、」
「いぎゃ!」
肩口にうずめられた男の頭が笑うように揺れ、首筋に鋭い痛み。食い込む犬歯の感触。
少なくとも甘噛みでは決してない。確実に歯形が残るレベルだ。痛い。すっごく痛い。まあ、痛いのはいつもの事なんだけれど。
本当に痛い。
「痛ぁ・・!ほんと痛い、痛いってばぁ・・!ちょ、血出てるんじゃ」
「ん。出てる」
「ちょっとぉぉ!」
「アンタのせいだぜィ」
「吸血鬼に噛まれたやつも、吸血鬼になるって知ってやした?」
がぶうっ。食いちぎるように歯を埋められて反射的にびくりと体が跳ねる。解放されればじくじくと激しく焼けるように痛んだ。
ご機嫌そうに目を細め傷跡を舐める総悟に、はため息を吐く。
この男の愛情表現はいつも過激である。
キスマークをつけるくらいなら全身に歯型をつけるようなドエスである。
彼女の感じてる顔よりも痛みや苦痛にゆがんだ表情に興奮を覚えるような変態である。
付き合わされるこっちの身にもなってほしいものだ。
ずきんずきん痛む肩に眉を寄せれば、それを見た総悟の口元がにやりと歪む。・・・あぁ、やっぱりこの男はドエスだ。
噛みつくようなキス、なんて比喩じゃない。本当にキスというより唇を噛みつかれて、くぐもった声が出る。
胸元のボタンを珍しく一つ一つ外していくのは、この衣装をまたの機会にも使用したいからか。
フロントフックをぱちんと外して意外と大きな男の人の掌が乳房を掴みあげる。手加減してください痛い。
ガリ、と先端に思いっきり爪を立てられて、はぎゅうと歯をくいしばって耐えた。
「・・・痛い?」
「・・・」
うっすら目を開けば総悟の顔。表情の乏しいこの男だが、細めた瞳の奥がうっとり潤んでいるのは明白に見て取れる。
吐き出された息が熱いのも、いつも引き締まっている口元がわずかに緩んでいるのも、みんなみんな私が苦痛に悶える姿を眺めてだ。
うん、なんか微妙に嬉しくない。
ぺろりと頬を舐められた後に、そこにも歯を立てられる。
はいはい、心配しなくてもちゃんと痛いから大丈夫。
片方の足を大きく持ち上げられ男の肩にかけられる。
ロングスカートの裾から入った指が広げられた股の間を撫でれば、ちらりと視線をよこした総悟と目が合った。
当たり前だろうが。
「あんま濡れねぇのな」
「自分の行いを、振り返りなさいなッ!」
「知ってまさァ。アンタぁMじゃねぇ」
「いひゃ、ぁっ・・!」
下着の上からさすりあげる手は緩めずに、降りてきた頭が胸の突起を口に含む。
そして、そのままちぎれるかと思うほどの力で歯を立てる。ぴちゃぴちゃと音を立てて舐めた後にまたガブリ。
どんだけ口さびしいんだこの男。
「痛い」などと言ったところで手加減を期待できないことは重々承知しているので、顔をゆがめて刺激に耐える。
きっとその表情がこの音にとってはどんなアヘ顔よりも胸に来るのだろう。いやアヘ顔というものが胸に来るものなのかはおいておいて。
「そんな噛むと唇切れますぜィ」
「・・っ、どの口が、んなことを・・・痛ッァ!!」
ぺろぺろと唇の端を総悟の舌がなぞる。
悔しくて口を開けばその瞬間、下で動かしていた指が弱いところをぶちゅりと押しつぶした。涙が出る。
性的な涙では決してない。イヤ生理的な物では確実にあるのだけれど。
大きな痛みに対して涙があふれることは当たり前の事で、それはがMとかそう言うことでは間違ってもないはずだ。
愛や快感は感じなくとも、そんなところをこねくり回されれば自然濡れてくる。男だって一緒の筈だ。そういう風にできている。
唇をなめていた舌が離されて、はァ・・・とこぼれるようなため息。
たかが溜息なのに、酷く甘い。
「濡れてきやした」
「・・ったのし、そうね」
「ん、」
塞ぐように合わさった唇の隙間を縫って舌が侵入してくる。
好き放題絡ませてくる舌をカリ、と甘噛みしてやれば、目の前の顔はたいそう嬉しそうに目を細めた。
息だけで笑う、その吐息が熱く湿っている。絡め引き寄せられたの舌が、今度は総悟に噛まれた。噛み過ぎだ、めっちゃ痛い。
顔をしかめたを見て総悟がまた笑う。
下では撫でていた指がするりと下着の中に入り込んで直接濡れたそこをさすった。
「んっ」
ぺろ、仰け反った喉を総悟の舌が這う。
くちゅくちゅと音を鳴らして指がうごめく下半身をひくりと震わせて、はぎゅっと目を閉じた。
耳元に聞こえるのは、吐き出された溶けるような熱い吐息。
「ぅっ・・は、ぁっ・・」
何度も言うがはMじゃない。
痛みは快感にならず残念ながら痛みのままだし、家庭内暴力はお断りだし、一度言われたことがある「雌豚」という言葉には心底イラッとしたし。
耳たぶを噛みながら、総悟が喉で笑ってささやいた。「すげぇ。どんどん濡れてきまさ・・」
・・・耳たぶ痛い。
「・・・・」
耳元でささやかれた声に、は無意識に歯を食いしばった。背中のあたりをぞわぞわと得体のしれないものが駆け上がる。
うっすら目を開いた先にあった男の顔は、それはそれはなんともいじわるな顔をしていて、
頬は真っ赤で、吊り上った口の端はだらしもなくわずかに歪んでいて、
きれいな弧を描いて細められた瞼の隙間から覗く紅い瞳は、熱い欲にうるんでいて。
低く名前を呼ぶ声の甘いこと甘いこと。
きゅ、と突起をつままれて体が跳ねる。
反射的に目を閉じていても男が興奮の熱を上げたことがはっきりとわかって、のからだも一層熱を増した。
こんな、自分を見てこれほどまでに熱くにじんでいく相手を見るだけで、多少痛かろうがドキドキしてしまう自分も、もしかしたら変態なのかも。
「ふぁ・・・」
「なァに、その声・・」
「ん、ぅ・・」
「感じてんの・・?」
ふる、ふる、と首を横に振る。「じゃァもっと痛くても大丈夫か」なんてレベルアップされても困る。
二本、奥まで埋め込まれた指が別の方向に動き回る。先ほどまでとは違う涙がぎゅうと瞑った眼尻から溢れた。
・・・うわぁ・・これは、
「たまんねェや・・」
「っく・・」
ふるふると、体の熱を逃すように頭を振る娘を眼下に見ながら、沖田総悟は満足げに息を吐いた。
今アンタ自分がどんな顔してるか、分かってねェんだろうな。
「・・・?」
「こうやって、」
「っあ・・!」
「弱いところ突くと」
「気持ちいい癖に、アンタ凄く苦しそうな顔すんだぜィ」
総悟の声を聴いて、一瞬での体中の熱が上がった。
俺がアンタのそういう表情好きなの、体が知ってんだな。
とろけるような表情無理やりしかめて、痛ェふりしてんだよ。
ちゅぷ、先端まで引き抜かれた総悟の指が卑猥な水音を出す。
「健気じゃねェかィ、俺のために」
「っ・・」
「こっちは正直だ」
「んぁぅ・・!」
それでも、耐えきれていない快感の端がうっすらもれ出しているのだけれど。
そんな表情が、しぐさが、たまらない。
いい拾い物したなァ・・。
片手と歯を使って小さな袋を破きながら、総悟は一人ごちた。
どこでどう拾ったかなどを今思い返すつもりもないが、ここまで相性が良い女もなかなか出会えないんじゃないだろうか。
総悟のためにイヤがって痛がって厭がってくれるのに、けして嫌がりはしない。
なんて理想の相手だろう。
とろとろに滴ったそこにゆっくりと自身を沈めていく。十分に慣らしてやったおかげで、含んでいく女の体に抵抗はない。
根元まで埋め込んだところで、女の身体がぴくんと跳ねた。そのまま再びゆっくり腰を引けば、真っ赤になったが顔を覆いながら呻く。
「ひ、ぁっ・・やだぁ・・変な気使わないで・・いつもみたいに乱暴についてよ・・っ」
「エェ?いつも『痛いからもっと手加減しろ』って言ってるのにですかィ」
「んんっ・・・」
「今別に痛くねェだろ?」
「なァ、ナンで・・・?」
「や、ぁあっ!」
「あー・・・やべ、にやけちまう」
痛みには耐えられる人間でも快楽には逆らえない、なんてよく言ったもんだ。
今にも崩れかけのような表情をしたをぎゅうと腕でつつんで、一気に貫く。きゃんっ!と子犬が鳴いた様な声。
まァ、アンタが望むなら?
理性も虚勢も完全に崩れたでろんでろんなを見るのは、また今度にとっておこう。
ちらりと目が行った首元の噛み傷からにじんだ血はすでに固まりかけていて、
にたりと口角を持ち上げた総悟は追い打ちをかけるようにそこに喰いついた。
「・・痛いッ!!!」
これだけ組み敷いても主従を分からせたつもりでもとろける寸前まで追いつめても、
行き過ぎたオイタにはちゃんとゲンコツが降ってくる、この女は、本当に、相当自分と相性がいいと見た。
お疲れ様でした。50000hit裏編「コスチュームプレイ」でした。
ガタッ。
コスプレする意義はどこですか先生ッ!(本当にスミマセンでした え?ハロウィンって何?
おそらく今までで一番幸せものな沖田さん(笑
ご拝読ありがとうございました!