真選組の一日の業務はハードだ。
朝の稽古から始まって、日中は見廻り、テロ事件の収束、要人の護衛から交通整備まで。
日が暮れてからもお江戸を守るために巡回は怠らない。あとは、討ち入りとか書類整理とか。
隊長の自分ともなれば、部下の稽古だって面倒見てやらねばならない。
朝から晩まで働きづめだ。
そんな朝から晩まで真面目に働きづめの俺を、副長のアホは勤労時間を超えた時間に偉そうに呼び出すのである。
まったく、労働委員会に訴えてやろうか。残業代はしっかりつくんでしょうねィ?
そんなことを考えていたら口に出ていたようで、「いつお前が真面目に仕事したよ」と殴られた。職権乱用だ、この鬼上司め。
「それにしても何の用ですかィ土方さん。こんな夜更けに呼び出して」
風呂も入ったしさっさと寝たいんですが。大きく欠伸をした口をふぁあ、と片手で仰ぎながら、面倒臭そうに前を歩く駄目上司を伺い見れば、土方は歩く速さは緩めずに「黙ってついて来い」と言った。
別に今日“は”総悟は何もしていない筈だ。
文字通り、見廻りもスルーして何もしていなかったのだが。それでもこの男に向けてバズーカを放ったのだって朝の一回だけだったし。
真選組屯所は広い。そんな屯所の中、滅多に人も寄りつかないような離れの屋敷に連れていかれて、総悟は眉をひそめた。
普段から優秀な自分の勘が、何かありそうだと警告を告げる。
「刀から手を離せ、総悟」
土方に言われて、無意識に腰の刀に手をかけていた事に気付いた。
滅多に人なんて来ない筈の離れの中、目の前のドアの向こうには、確かに人の気配。
こちらに向かって手を差し出した土方を、総悟はいぶかしげに睨みつけた。刀を渡せと言う事か?何のつもりだこの男。
「何企んでんですかィ」
「総悟」
真意の読めない顔で促されて、しぶしぶ刀を渡す。
これでも土方のことは一応は信頼していたということか。後で後悔する事になるのだけれど。
受け取った刀をドアの横にある刀差しに立てかけて、ゆっくりと土方がドアを開いた。入れと促されて部屋の中に入る。
その部屋はなんとも異様だった。床は畳、和室のようだが、窓が一つもない。まるで外と隔離されているような。
明かりは小さな傘の付いたスタンドが一つだけ。そんな部屋の真ん中には、一人の女が座っていた。
ゆっくりと顔を上げた彼女と目が合う。さらりと零れ落ちた前髪が頬を滑る様子がとても奇麗に見えて、訳も分からず総悟は息をのんだ。
同時に背後でガチャリと鍵のかかる音。しまったと思った時にはもう遅かった。
「はじめまして、沖田総悟さんですね。どうぞおかけください」
「土方さん。一体こちらはどちらさんで」
「んなに警戒すんな、俺のツレだ」
「 と申します。どうぞ、かけてください」
「どうぞおかけください」と言われて大人しく従うほど自分は人懐こくないのだ。
そんな総悟を無理矢理座らせて、その隣に土方も座った。
こんな隔離された部屋に閉じ込められて、よからぬ類の香りがばんばんする。
部屋のカギは恐らく土方が持っている。殴り飛ばして奪い取る分には問題ないのだが。
あの野郎俺の刀は奪ったくせに自分はちゃっかり帯刀してやがる。これだから大人はずるい。
不満気に睨みつければ、土方はため息をひとつ吐きだした。
「総悟、お前今年でいくつだ」
「はァ、18になりますが」
「18つったらもう立派な大人だ。言ってる意味、分かるな?」
「イヤ、全然わかりやせん」
「お前にはこれから毎晩この人のもとでセックスを学んでもらう」
ぶっふぅぅぅぅうう!
“立派な大人”がみっともなく思いっきり吹きだしてしまった。どゆこと?!
いや、何となしに隣の男の真意を悟って、総悟は頭が痛くなった。
つまり、自分に今からこの女を抱けと。そう言いたいんだろうかこのアホは?意味が分からん。
「勘違いすんなよ、これはお前のためを思っての事だ」
涼しい顔をしてしれっと土方が言葉を吐きだす。これはれっきとした拷問耐性のレッスンだ。
真選組で働く以上、いつどんな不運が重なって敵の手に落ちるや分からない。
切り捨てられれば被害は自分の身で済むが、とらえられて情報を聞き出されたらそれは組織全体の死活問題につながる。
隊一番の剣の使い手である総悟がそんなヘマをすることなんてそうそうないだろうし、
また捕まったと言え並みの拷問程度で真選組が不利になるような情報を吐くなんて疑っているわけではないが。
拷問にもいろいろあるのだ。いろいろと。真選組ではあまり用いられないが、それこそ体を使った性的なものも。
手玉に取られる可能性がある。女に耐性がないのではなおさら。
そうでなくても、これから年齢を重ねていけば、幹部と言う事でそういう仕事が回ってきてもおかしくない。
そういうわけで、今回自分は快感に耐える修行と一通りの行為のレッスンを受けることになったのだそうだ。この女に。
「あんま迷惑かけんなよ」
「イヤ誰なんでィこの女」
「“この女”じゃありません」
「私のことは“先生”と呼ぶように」
じゃぁ始めましょうか、沖田さん。
愛想のない顔で呟いて、女は涼しげな顔で「まず、いくつかお聞きしたい事があります」と口を開いた。
「沖田さんは本当に童貞なんですか」
「・・・・・・」
「女性とお付き合いしたことは?キスしたことは、胸を揉んだり、手を握ったこともありませんか?」
「・・・・土方さん、斬りてェコイツ」
「“コイツ”じゃありません、先生と呼びなさい」
うぅぅうっぜぇぇぇぇええええ・・・・!!
刀を持っていたら間違いなく目の前の女に向けて抜刀していただろう。
そして「ちびのころから見て来てんだ、コイツにそーゆうなァ一切ねェよ」と律儀に返す土方にも。
「そう言う事に関しての知識は?エロ本とかって読んだことあります?」
「服引ん剥いて縛り上げて火で炙ってやればアンアン言うんでしょう」
「ふむ・・・・どうやら偏った知識しか持ち合わせていないようね・・・・」
「リアルに受け止めた!そこはギャグとして流せよ。知ってらァそんくらい!!」
「じゃぁやってみてください」
すい、と体を差し出されて、そんな突然どうしたものかと戸惑ってしまう。
おろおろもたづいてから、とりあえず両手で相手の胸をわしづかみにすれば、すぱーん、と叩かれた。
「土方さん。どうやら一から必要なようです」
「ん・・まァ・・勘弁してやってくれ。コイツも今まで剣一本で他事にかまけてる暇もなかったんだ・・」
「憐みの瞳で見んな!何なんでィてめーら!」
頬を押さえながらギロリと睨みつければ、それでも女は総悟のことなど眼中にないように淡々と話しを進めていく。
「今日のところはイントロダクションですね」女が言えば、土方は面倒臭そうにぽりぽりと額を掻いた。
くるりとこちらを向いた女が愛想のかけらもない表情で総悟を見る。
「レッスンは明日からです。今日はイントロダクションとして、全体的な手本を見せるから、よく見ててください」
土方さん。
名前を呼ばれた土方は、ため息をつきながら立ちあがった。
動けぬ総悟をよそに、の前に腰を下ろす。
そのまま無言で唇を合わせた二人に、総悟はただただ息をのんだ。
「え、ちょっ・・・ま、マジで?」
土方の伸ばした片手が女の髪を掻き上げるようにして頭を掴み、貪るようにその頭を自分の頭に押し付ける。
髪が掻き上げられたせいで見える女の細いうなじや首筋。
キスなんて唇と唇がくっつくだけだと思っていたのに。
何度も何度も、角度を変えて深くつながる、訳の分からない女といつも見ているムカつく男の唇。
繋がった角度を変えるときに僅かに離れた唇の隙間からは、絡み合った舌がちらりと覗く。
くちゅ・・と粘性のある液体がかき混ぜられる音。っは・・、と湿った吐息。伸びる銀の糸。
目の前で起きている光景が信じられなくて、それでも気味が悪いほど目をそらせなくて、総悟は瞬きも出来ずにごくりと喉を鳴らした。
しゅる・・・とキスをしながら後ろに回された開いた方の土方の手が、女の帯を解く。
ゆっくり唇が離れれば、女は誘うように自ら着物を肌蹴させた。
真っ白な肌が覗く。目がそらせない。
肌蹴た着物の間に土方が顔を突っ込んで、ぴちゃぴちゃと音を立ててその肌を舐めた。かぷ・・甘噛みすれば、女の体が小さく跳ねる。
そうしている間にも、土方の指先が正座をした女の足の間に伸びる。
総悟の位置からでは太ももが邪魔で中は見えないが、見える部分の土方の手の動きでどんなことをしているかは想像がついた。
ゆっくりなぞって、擦りあげて。ちゅぷ・・・、卑猥な水音が密室の中に響く。
土方が腕を引いた時にちらりと見えた彼の指先は滴るほど透明な液体で潤っており、一体どうなってんだ、と総悟は無意識に頬を熱くした。
びくり、と女の体が跳ねる。
先程の愛想のない無表情は歪められ、何かを堪えるような鼻にかかった呻きが漏れる。
はぁ・・・、と、熱を逃すように吐きだされた女の息が、耳から侵入して総悟の頭の中で何か悪い作用でも起こしているかのよう。
そんな彼女を覗き込むように見上げる土方の頬もうっすら上気しており、吐きだされる吐息もいつもよりも熱を持っていた。
「ア、」
きゅぅっ、と切なげに眉を寄せ、きつく閉じられた瞼の隙間がうっすら光る。
ひく、と体を震わせながら絞り出された声は、さっきまで会話していた偉そうな態度はどこへやら、とてもか細く、余裕のない、・・・・艶のある響きだった。
「ひじ、かた、さ」
「あ?」
「舐めるのも、見せたいから」
「ああ・・」
胡坐をかいて座りなおした土方の股の間に、女が顔をうずめる。
さらりと垂れる前髪、ジー、と、ズボンのチャックの開く音。ゆっくりと、開く口、そこから覗く舌。・・・閉じられる瞳。
(・・・・マジかよ)
うずめられた女の頭から、ちゅぱ、と言う水音が聞こえた。
土方のイチモツなんざ見たいわけなかったが、そこから、目が離せない。
一応総悟に気を使ってか、土方のそれを掌で覆うようにして口に含んでいるため隠れて見えないのが唯一の救いだ。
しかし、その手の向こう、小さな口の中に、ナニが包まれているのかと思うと。
土方本人の視線から見ると、一体どんな光景が広がっているのかと思うと。
頼んでもいないのに、何度も唾が音を立てて喉を通る。自分の息が僅かに上がっている事に気づいて、総悟は驚きとともに困惑した。
「ぅ・・ふ、くっ・・おま・・・ヤなんだよ、上手ェから・・」
「そぉ、ありあとぅ」
女の髪を掴みながら漏らした土方の声が震えている。その表情を見て総悟は目を見張った。
アレのあんな顔なんて見たことねェ。はっ、はっ、荒く吐きだされた息遣いは余裕が失われかけていることを感じさせる。
じゅ、じゅぅぅ・・・絞りとるように吸いつく音に合わせて、ぎゅっと目を閉じ歯を食いしばった土方の体がびくびくと跳ねた。
「オイ、ちゃんと見てんだろーな?文字通りオメーのためにヤってんだぞ総悟」
「ひ、土方さんが見られて興奮する嗜好があるとは、しりや、せんで」
「ハッ、んな状態でよく言うぜ・・・」
浴衣の上からでもわかるくれーおっ勃てやがって。
眼下の女に注入を繰り返しながら、横目で総悟を見やった土方が息だけで笑う。
あー、いかんいかん。自分でも言ったがこれはレッスンの一部。気を抜くと外野のことを忘れそうだ。
「声出せ」とか、「見られてんぞ」とか。言いたい気持ちをぐっと抑える。
ぎゅぅぅぅ・・・とナカを狭めながら、組み敷いた女はそんな土方を見てくすりと笑みを零した。
「へぇ・・・土方さん、見られて興奮するんだァ・・・」
「・・・ぐ・・・!いいかげんに、しろ、このドS女・・・」
土方の動きに合わせて女が腰を浮かせる。開いた両足は土方の腰に絡ませて、より奥までつながるように。
悔し紛れに思いっきり突いてやれば、女は息をのみながらも口角を持ち上げた。
そして、土方の奥で真っ赤になりながらこちらを見ている少年に向かって。
「心配しなくても、順番に教えていってあげるから」
ごくり、と、少年が唾を飲み込む音が聞こえた。
まったく・・またねこったら謎なものを・・・・
えっちぃお話は書くのにものすごい労力を消費するので更新は長い目でお待ちください><
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