その日はちょっとした討ち入りがあって、屯所に帰ってきたのは日も暮れた後だった。
「今日は無しだ。さっさと休んどけ」
それだけ言って去って行った土方を見送り、まぁ「何が」と聞き返すほど総悟も勘が鈍くもなかったので、大人しくシャワーを浴びて布団に入る。
目を閉じて考えるのは他でもない、先日与えられた「ゴホウビ」の使い処についてだ。
『何でもひとつ私に命令できる権利、というのはどうでしょう』
いつも通りの無表情、無感情で、いとも簡単にあの女はその身を差し出してきた。
いくらなんでも自分の体を安売りしすぎではとも思わない事も無いが、自分がいざされた数々の仕打ちを思い出してうーんと呻る。
イヤ、やっぱそれと同等のものくらいはした気がするし、失った気もするし。
総悟はごろりと寝返りを打った。
(土方の痴態を見学するのも確かにおいしい案ではあるが・・・)
一応あそこまでの仕打ちを見事耐え抜いた自分は折角だからいい目をみたいし、辱めを受けさせたいのは今回に限り土方よりもいっそあの女の方だ。
改めて一回抜いて貰おうか、なんて思ったところでぶんぶんと首を振った。それは頼み方によって危険すぎる、し、そもそも「何でもひとつ」の権利を使って性的な報復を望むのは男としてどうかとも思うし。
・・・まぁ、あの女からしてみたら性的なものの方が「カモン」なのかもしれないが。
「はーあ・・」
閉じていた瞳を開けながら、総悟は息を吐き出した。
瞼の裏に浮かんだのは、自分をズタボロに追いつめ倒したあとに褒めてくれた時の微笑んだ顔。
むかつくのに、それでもキレイと思ってしまうあたりあの女は相当この職に向いている。外見だけは。
内面はそれはそれはドエスで、人をおちょくるのが好きで、時々本当に食われるんじゃないかと思うくらいものすごいドエスで。
もしも出会い方が違ったら気も合って話も弾んだかもしれない・・・。
レッスンでしか顔も合わせないし、会ってもまともな会話などほとんどしない相手だが、レッスンの「外」では。
一回講師生徒抜きにして、話してみたいなァなんて思いつつ、総悟は暗闇の屯所を一人歩いていた。あ、厠です。
ちらりと屯所の離れを見やる。今日は休みだからそもそも屯所には来てはいないだろうし、本当にただ何となく見やっただけだったのだが。
「・・・・・土方さん・・?」
滅多に使わない、誰もいないはずの離れ屋敷。
その廊下でひらり揺らめいたのは小さなろうそくの灯り。うっすら見えた持ち主はよく知る上司だ。
『今日は休みだからそもそも屯所には来てはいないだろうし』
先ほど自分が考えたことが思い起こされて、総悟は胸がざわついた。
そもそも毎日屯所を訪れているのなら、女に免疫のない隊士たちが話題に出さないのはおかしい。実際総悟は今日の今まで隊士たちのそんな会話は聞いたことがないのだ。
あんなんでも副長土方は気配に聡い男だ。普段の捕り物以上に慎重に気配を殺し、総悟は明かりを追って離れへと足を向けた。
がちゃりと鍵穴が捻られる音がして、重い扉が開く。
自分が入った後に再び鍵を閉めながら、土方は窓のない部屋の中を見渡した。
持ってきた蝋燭と盆を畳の上において、部屋の隅へと足を運ぶ。
そこには黒髪の女性が壁にもたれかかりながら体を丸めて目を閉じていた。
「オイ、起きろ。・・寝てんのか?」
「・・今起きました」
「・・・寝るなら横になればいいだろ」
土方の言葉には返事をせず、女・・・は壁に持たれていた体を持ち上げる。
じっ、と、見つめるというよりは睨み返されて、土方はため息をついた。
「メシ」
「・・こんなに食べられません」
「こんくらい食え」
「無理です」
「食え・・・食べれるだけでいいから」
「じゃぁ、いただきます」
そう言って女が手を伸ばした先にあった土方の持ってきたお盆には、小さな握り飯が3つ。
そのうちの一つを手に取り、端っこの端っこにはむ、と食いついた女を、土方は黙って見ていた。
「今日は総悟の稽古は無しだ。ちょっと仕事が立て込んだ」
「はい。そんな事だろうと思ってました。お疲れ様です」
「・・ああ」
「ご馳走様です」
はそう言って食事の乗った盆をすい、と土方に返す。その上には握り飯が二つ残っていた。
もっと食えよ。土方が顔をしかめれど、食べれません。とは首を横に振る。
はあぁ・・・・。大きく息を吐いた土方の手が伸びて、女のほほを撫でた。
「・・どーやったらそんだけのカロリーで生きていけんだ?」
「タンパク質は別のところでちゃんと取ってますので」
「ウワァ、言ったよ。最悪なこと言っちゃったよこの女」
・・・・。
そう言って名前を呼べば、女は首をかしげて視線をよこす。
「最近“外”では何か面白いこと起こりましたか?」
「・・・いや・・どうだろうな」
「この間4丁目の駄菓子屋が取り壊されたって言ってましたよね」
「ああ、チェーン店のファミレスになるんだと」
「・・そうですか。だんだん、変化していくものですね」
「・・・・」
「きっと今で歩いても右も左もわからないんだろうな」
「」
ぐい、力強く引っ張られて、バランスを崩したの頭が土方とぶつかる。
おでことおでこがくっついた状態で、目の前の土方が低く呻く。
「・・・・外に、出たいか」
「そんな事言ってないです」
「・・・・・・・・・・・そうか」
「十四郎、酷い顔」
掴んでいた手が離される。
絞り出されるようにつぶやかれた「そうかよ」は本当に小さなものだった。
「何でそんな顔するの?」
「・・悪ぃ」
「私は平気よ」
「・・・平気じゃなさそうだから」
「平気だってば」
「あはは、十四郎がよくしてくれるおかげだ。いつもありがとう」
「・・お前な」
の髪を撫でた土方は大きくため息を吐いた。
そして、そのまま腕で包み込む。
「一年前と比べて、随分笑わなくなったぞ」
「ねぇ十四郎、セックスしよう」
「うるせぇ、こちとらずっとテメーの世話見てんだよ。一年もこんな狭いトコ閉じ込められて、平気なわけねェだろ」
「土方さん、」
腕の中、クスリと女が笑う。それを見た土方は一瞬の間の後表情を険しくさせた。
「ついに私の事好きになっちゃいましたか」
「あいにく、俺はお前みたいな女が一番嫌いなんだよ」
「・・・なんだ、残念」
「けど、お前とやんのは嫌いじゃねェぜ」
・・ふふ、私も。
そう言ってわずかに微笑んだの唇に、土方は噛みついた。
無抵抗な体を畳に押し付けて帯をほどく。
「相変わらずド変態な身体だな。触る前からどんだけぐしょぐしょにさせてんだテメー」
「・・あらやだ、褒め言葉でしょ?」
「そーだよッ」
「っん、」
つぷ、指の先端だけわずかに差し入れ、浅いところをぐるりと回す。
女の腰がもの欲しそうに揺れたので、血液の集まる突起を押しつぶしてやった。
きゃんっ、と女が跳ねる。
乱れた髪をかき上げるようにして耳の裏側を舐めてやれば、お返しとばかりに首元を噛みつかれた。
「馬鹿、見えるところはヤメロ」
「スカーフつければ見えないでしょ」
「着流しンときどーすんだよ・・・・」
「私も・・っ十四郎とセックスするのは、好きよ」
「オメーは誰とヤってもイイんだろ」
そう言って
呆れ交じりに中指の根元まで埋め込めば、女は小さく呻って「ドエス!」と言った。
「そうかも。でも、流石に嫌いな人相手には濡れないわ」
ウン、でもお前には負けるわきっと。
額の汗をぬぐい、ニヤリ歯を見せて、土方は腰を進めた。
なんか早くもぐだぐry
(すぱんすぱんと話が進むように書けたらなぁ)
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