ぎし・・・
暗い廊下が軋む。総悟は土方に続いて夜の真選組屯所を歩いていた。

勝手にえっちの先生を外に連れ出して。もっとド叱られると思っていたのに、あれから土方からはお咎めの言葉一つも無しだった。
この男が女だからって容赦するような性質じゃないのは分かっていれど、昼間の事が思い浮かばれて。
いつもより早めに入った布団の中で考えを巡らせながら天井を見ていれば、スパンと障子が開かれた。

「来い」

いつも以上にこの男の考えが読めず、ただただ後をついて歩く。たどり着いたのは真選組の離れ屋敷。
今日の昼間も来た。いつもの部屋の前だった。
懐から取り出した鍵を鍵穴に差しこむ土方を眺めながら、総悟は中にいるであろう女の事を思った。
あのあと、戻ってきた土方に連れて行かれた女は今にも倒れそうなほどふらふらしていた。んな状態でレッスンなんて出来るのか?
ガチャリ、金属がこすれる音が響き、うっすらと扉が開く。
「入れ」と土方に目で促され、昼間の事もあり微妙に気まずいながらも総悟は部屋に足を踏み入れる。
部屋の中にはいつもと同じく灯りは一つ、ライトスタンドの小さな光だけ。
その横に腰をおろしていた女がふい、と視線をこちらに向けて、総悟は無意識に口元を結んだ。

「こんばんは、沖田さん」
「土方さん、やっぱアンタやり過ぎでィ」
「あァ?テメーにしちゃ情が移んのはえぇじゃねェか総悟」
「るせぇ」

指示されることなく女の前に腰をおろした総悟はおずおずと女を見やる。
額と左目に巻かれた包帯が、何とも痛々しい。

「・・・・昼間は・・」
「では今日のレッスンを始めましょうか」

なんか、悪いことしちまったみてぇで・・・、
なんて言おうとした総悟の言葉を女が遮る。それもいつも通りのフレーズでだ。

「オイ。大丈夫なのかよ」
「・・・?何がですか」
「・・けが」

首をかしげながら女が距離を詰めてくる。
そのまま合わさるかと思った女の頭は、途中で力を失い、
そのまま総悟の胸の中へと落ちた。
「オイ?!」

「やっぱアンタ今日は寝てた方がいいんじゃねぇの?」
「・・・痛み止め・・飲めば、平気です」
「それ平気って言わねェよ!」

土方、さ・・痛み止め、取って・・・。
ぎゅぅ・・・と総悟の腰に回した手に力を込めながらが呻る。
その腕に抱き寄せられおぞましい目に合わされてきたことはあれどすがられたことなんてなかったような気がして、総悟は何もできないまま途方に暮れる。
もたれかかった軽い体に何もしてやれないままおろおろしていれば、後ろから土方がホレ、と黒い小瓶を差し出してきた。

「な、何でィ」
「薬。飲ませてやれ」
「なんで俺が・・」
「・・・まぁ、俺がやってもいいんだが」
「・・・・」

静かに女に視線を落とした土方が何を考えているのか本気でわからなくて、
しかし土方がそう言った瞬間胸の上の女の頭がわずかに震えた気がして、総悟はしぶしぶその小瓶を受け取った。
「口移しがいいです」なんて生意気言う目の前女はいつもと違ってひどく弱弱しい。
昼間の罪悪感もあって素直に瓶の中身を口に含み女の唇にあてがったところで、女の腕が総悟の首へと巻き付いた。


そして、そのまま油断しきっていた体に体重をかけ押し倒される。

「ん・・・・ッ!」
「ふ・・・っぅ・・・」

突然のフレンチキス。
ごくりと咽を鳴らした総悟は赤くなって青くなった。
・・・・はめられた!
いつも通りといえば恐ろしいほどにいつも通りな淡々と無感情に吐き出された女の言葉に、総悟は先ほどまでの間抜け過ぎる己を3回呪って土に埋めたくなる。


「本日のレッスン内容は、媚薬耐性です」


しゅるり、細い指先が自らの額にかかっていた包帯を解く。そこには痣はおろかかすり傷一つなかったわけで。
ほんっとにテメェ物凄く貴重だった俺の良心を返せ!!!





死ぬほど後悔しても飲み込んでしまった薬は吐き出せない。
せめて本当に一発でも殴ってやりたくて体を起こし踏み出そうとすれば、次の瞬間何かの糸が切れたかのように体の自由がきかかなくなった。
倒れ際に畳についた腕で何とか体重を支える。四つん這いのポーズのまま、総悟はどんどん熱くなる自分の体に戸惑いながら息を荒げた。

「説明はいらないと思いますが、エッチなお薬の事ですね。効果はピンからキリまでありますが、今日は沖田さんのために天人製の強力な催淫財をご用意させていただきました」
「はぁ・・・っは・・・!て、んめ・・・!」
「薬耐性はそう簡単につくものではありませんので、今回は『油断して媚薬なんて浴びるとこんな大変なことになっちゃうんだよ』ということを身を以て学んでいただきます」
「ふ・・・ざ、け・・んな、・・・くっ、そ・・!!」
「言うまでもありませんが、私が刀を持っていた時点でもうあなたは死んでますからね。動悸を引き起こし体の自由を奪う、怪しい人の出した液体に不用意に手を出さないこと」

「しっ・・・ねよ、おま、え・・・っうああ!」
「ちなみに」

しゅるりと浴衣の合わせ目から滑りこんできた女の手が総悟の中心をしごく。
ぬるり。粘度の高い冷たい感触が気持ち悪い。

「一概に媚薬と言っても飲むものばかりではありません。こうやって、直接塗るものや」
「んんぅっ!」
「揮発性の高い嗅がせるものもあるので、注意が必要です」
「ふ・・っ、あ・・は・・っ、はあ・・っ、」

口元を覆われたハンカチから素性の分からない強烈な甘ったるい香りが呼吸器に侵入してくる。
一瞬でもつめたいと思ったのが嘘のように、の手によって粘液を塗りたくられた箇所が焼けるように熱を持つ。
人差し指の爪でぴん、とはじかれただけで、総悟は嬌声を上げた。
呼吸のタイミングがつかめない。苦しい。ひらきっぱなじの口からはぽたぽたと唾液があふれ、目の前の畳に染みを作った。

「・・・ねぇ?気をつけないと、こんな大変なことになっちゃいますよ」
「・・く・・る、し・・」
「ええとても。苦しそうですね、ここも」
「ひああ!」

ぐしゃ、と頭を抱えて、総悟はうずくまった。
軽く触れられただけで信じられない刺激が体中をめぐる。
閉じない口を両手のひらでふさげば、ごろりと横向きに転がされた。

「楽にしてほしい?」
「・・・・・!」
「それでも、この間と一緒で言っちゃいけない言葉は、分かるわね」
「ま、だ・・・続いてんの、それ・・っ、勘弁してくだせぇ・・」
「あら、今日はちゃんとイかせてあげますよ」
「んんん!」

そう言ってはぱくりと総悟のものを口に含む。
溶けるほど熱い。吸い付くように、這う、舌が、もう、ほんと、その裏んとこ、ヤメテ、
じゅぷぷっと根元まで深く加えこんだ女の喉がこくりと鳴る。
ひくん、と砕けた下半身を震わせながら、口を覆う手の力は緩めぬままに総悟は自分の腹にうずくまる女を見た。
こちらを見上げたがぺろりと口元を舐める。
「ごちそうさま」小さく呟かれて、総悟は耳まで真っ赤になった。

飲まれた・・・・!

「畳が汚れたら嫌ですもの」
「だか、らって・・・!」
「大丈夫、まだまだ治まらないでしょう」
「んヒっ・・!」

はじめての手でイかせてもらった、などと、感慨に浸る暇はない。
優しい力で袋を甘噛みされて、びくりと飛び上がった総悟は目を瞑り歯を食いしばった。
ひくひくと自分のモノが、女の与える刺激に合わせるように震えているのがわかる。ゆるゆる腰が動くのを止められない。
しっかりとふさいだ口からあふれた唾液が、指の隙間からにじみ出た。
ぴちゃぴちゃとわざと音を立てながら、女の舌が肌の上を這う。
腰の付け根を舐めた後に甘噛みされて、そんなところ全然性感帯とは違うはずなのに、ぱちぱちと目の前に火花が舞った。

「ココ、すっごい立ってますよ。女みたい。舐めてほしいの?」
「テメェが変なモン・・・や、やだや・・んんぁっ!」
「冷や汗酷いですね。もう一回イっときますか」
「・・・・・!」

ドクンッ。
体の中の余りある熱が外に飛び出る。
終わったら畳、掃除してもらいますからね。なんて、が黒い笑みをして微笑んだ。
耳たぶに口を寄せ、カリ、と歯を立てながら耳の奥へ囁く。

「あーあ・・、こんなに飛び散らせながらイって」
「ぅ・・・んんっ・・!」
「真選組の一番隊隊長は変態さんですね」
「・・・・・っ・・」
「・・ちゃんと息してます?」
「ふ、・・・・はァッ・・!」

口元を塞いでいた腕を取り払われ、どろどろにゆがみきったそこをふさがれた。
お前さっきまで俺の・・・加えてただろうが、なんて、残念ながらそんな余裕などない。
“息継ぎ”させながらもの総悟を嫐る手は止まず、腹の上に飛んだ飛沫を掬い取ってきたものを胸の突起に塗り付けなじる。
「イったばっかなのに、もう勃ってる」
若干蔑むように笑い声を漏らしながらが半身を総悟に擦り付ける。
こちらは裸だがはまだきちんと衣を身に着けていて、こすれる布の感触が痛いほどの刺激を総悟へ与えてくる。

「もう一回イかせてあげましょうか。どうして欲しい?おっぱいで挟んであげようか」
「ん・・・ふ・・・・う、じゃ、ぁ、もっか・・舐め、て・・・」
「あら、気に入ったの、嬉しいです。やっぱりお口でするのは気持ちいいですよね」
「はァ・・・!」

ぺろぺろと舌の先で側面を舐められて、総悟は体を震わせた。
湿った温かい舌が這うたびにぞくぞくと背中を快感が駆け上がる。
キスもそうだったが、舌と、唇の動きひとつひとつが艶やかで吸い付くように。天国というよりは地獄だが。
でもずっとここに居たくなる、そんなおぞましい地獄だ。這っていた舌が止まったので視線を下げれば、そのタイミングで頂点を舌先で突かれた。

「気持ちよさそうですね」
「・・・ぅっ、へぇぃ・・・」
「昼間の事、沖田さんは気にしてらっしゃるようでしたが、そんな気にすることないですよ」

ぴくり、でも総悟でもない気配がかすかに動く気配がする。

「でも、どうしてもって言うなら。お詫びって言う言い方は変ですけど、ふふ、何してくださいますか?」
「ん・・・!」

ぱくりと先っちょを咥えられて、吸い付かれる。
その奥に不機嫌な気配を感じとって、苦しい息遣いに紛らせて総悟はハ、と笑った。

「じゃぁ、土方、ぶっ殺してやりやしょーか」



にっこりとほほ笑んだ、
目の前の女の、目の色が変わった。


「・・・・ほんと・・?」



「・・え・・?」
「ほんとに本当?私のために、人ひとり、殺してくれるんですか」
「は・・え・・・?ん、ひあ!」
「じゃぁ、サービスしないと」
「んあぁ!んぅ・・!」

緩やかに下がっていった女の細い指が総悟の全体を包むように扱く。
今までのとは微妙に違う、「いたぶる」というよりは完全に「奉仕」の手つき。
塞がれた唇から侵入してきた舌が、総悟のそれをからめ捕って甘く吸い付いた。
変な声が出る。

「決行は、いつですか?」
「んんぅ・・!」
「どうやって殺します・・?刀?毒?・・土方さんはそう簡単にやられるたまでもないと思いますが、」
「はぁ・・っ、ん、ひっ・・」
「沖田さんほど親しい間柄なら、気を緩める瞬間も、あるのかも」

しゅるりと布がこすれる音が響く。
うっすら目を開けば、襟元を左右にはだけさせた女が艶のある表情で総悟にしだれかかっていた。
ちゅ、と触れるだけのキス。のびてきた白い腕が腰に絡み、熱い体が密着する。

「・・・・?!」

殺るなら、ちゃんと息の根止めてくださいね。
わたしとエッチしてる時なら、ほんの少しくらいなら隙、あるかも。
後でちゃんと予定、立てましょうね。
約束ですよ。信じていい?

「そしたら私、一生沖田さんの奴隷になりますよ」
「・・・・・・」

微笑むはそれまでに見た事も無いほど媚びていて、熱のある舌が総悟の瞼をなぞる。
ねぇ、いつ殺してくれる・・・?
心から切願されるような声でささやかれて、総悟がどうしたものかと動けずにいれば、女の後ろから伸びてきた手がその頭を掴んだ。


「・・それくらいにしとけ」
「土方、さん」
テメェも阿呆な事してねェでさっさとレッスン続けろ」
「なんだ、聞こえてましたか」
「オイ総悟。コイツの言うこと真に受けんな」

女が身じろぎすれば、つかんでいた手はあっけなく離れた。



「じゃぁ、レッスンを再開しましょうか」
「・・アンタ、土方さんに死んでほしいの」

すい、と距離を詰めてきた女の顔が目の間に来る。
よくよく見たの左目の上にはうっすらとだが擦り傷があって、気になった総悟はそっとその傷に触れた。
何も言われず自分からこの女に触れたのは、もしかしたら初めてかもしれない。
気になったのはその傷だけじゃなくて。

自分でもよくわからないが、無意識に動いた腕で総悟は女の頭をぎゅ、と抱き寄せた。
「はい」と頷いた女の、表情が。


「・・・なんでそんな表情してんですか」

びく、腕の中の体が震えた理由が、総悟にはわからない。
しかし次の瞬間ビクウッ!と飛び跳ねた自分のからだの理由は、痛いほどわかった。

「・・・随分と、余裕ですね」
「んひっ?!」
「ちょっと手加減が過ぎました。レッスンにならず申し訳ないです」
「うあぁっ!」
「まだ薬は切れてないですよね?ずーっと立ちっぱなしで」



それからどんな恐ろしい目にあったか、されたかは、あまり覚えてないし思い出したくもない。
ただ目を覚ましたら自分の布団で寝ていて、意識を飛ばすほど何をされたかを考えた総悟は朝から真っ青になった。








土方さんとヒロインの関係は謎に包まれています。

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