スパン。
一番隊隊長の部屋の障子が開かれる。
しん、と静まり返ったその部屋を見渡して、副長であるその男は咥えていた煙草を噛み潰した。

「チッ!」



「こんばんは。あら、今日は・・・」
「あの野郎とんずらしやがった」

滅多に人の立ち寄らない、真選組の離れ屋敷。
その一角の部屋から漏れた苛立ちの声に、総悟は右手のひらをぐっと握った。
(おっしゃぁぁぁぁぁ!ざまぁみろ!)
やった、やった、ついにやってやった。いやむしろ、ついにやってしまった。
気配を押し殺しながら総悟は顔をひきつらせる。

俺が本気で隠れればこんなもんよ!今までは本気度が足りなかったのだ。
こういう時は逆に相手の盲点を突く。まさかいつも無人の離れ屋、レッスンが行われるまさにその部屋の隣に総悟が身を潜めているなどとはつゆほども考えないだろう。

すぐ戻る、と言い残して土方が女の部屋を出る。
カチリ、小さな振動がして、そんな少しの間空けるだけなのにきちんと鍵をかうんだ、と心の隅で思った。
カラリ、先ほどより少し大きな振動がして、総悟の顔に蝋燭の薄暗い光が当たる。

・・・・・・・・・・・・

「・・・・・・・・・・・なんで?」
「そろそろばっくれる頃だと思ってなァ」

ぐい、と胸ぐらを掴まれる。
開いた合わせ目の熱い布の裏側に、小さな黒いカラクリが見えた。
は、ハメられた・・・・・!!!



「あらあら、沖田さん。遅刻なんて、悪い子ね」
「ひ?!や、やだやだこっちくんな死ね!変態教師!!」
「痛ってえ!ガキかお前」

例の部屋に放り込まれた総悟は一目散に入口へと逃げ帰る。
それを土方が止めようとすれば腕をかまれた。ケモノかオマエは。
男二人による取っ組み合いの力比べが行われている横で、黒髪の流れる女が静かに割って入った。

「そう言えば、先日のお薬のお話ですけどね」
「はァ?!嫌だっつってんだろーが!てめーのレッスンなんざもう真っ平御免でィ!」
「沖田さんには3種類を試していただいたんですが、実はもう一種類あるんですよ」
「だから何度も・・・・!・・・」

女を振り返った総悟がギョッと肩を飛び上がらせる。
そのすきを突かれて土方の腕で羽交い絞めにされてしまえば、もうなすすべがない。

「体内に直接注射するものなんですけどね。凄いらしいですよこれは」

「大丈夫、一番細い針を使ってますから痛みも少ないし、"どこにだって"打てます。これだけは使いたくなかったんですけどねぇ・・・」

「選択権は、あるんですよ?一応」


つぅ・・と手に持った針の先から透明な液体が流れ落ちる。
腕の中真っ青になってカタカタと震え始めてしまった総悟に、土方は気まずそうに眼をそらした。
大人しくなった総悟の足の付け根を撫でながらがくすりとほほ笑んだ。

「レッスンとお仕置き、どちらがいいですか?」
「・・・レッスン・・受けさせて下せェ、先生・・」
「ファイナルアンサー?」

古いな!
そう思いながらもコクコクと頭を振れば、締め付けていた腕の力が緩んだ。





「はい、じゃぁまずは、キスから」
「ん・・ふ・・」

合わさった唇はちゅ、と音を立てて触れるとすぐに離れて行った。
てっきり濃いのが来ると口を開いた総悟は、自分だけががっついているように見えて舌打ちをうった。
なんだよ今のフェイント(?)。かと思えばすぐに息もできないような深いのが来て。
神経は研ぎ澄ませたままだ。この女の事。選択権はあると言いつつもいつ何かしら仕掛けてきてもおかしくない。

「はぁ・・・体がガチガチ」
「誰のせいだと、思っ・・んっ」
「きちんとレッスンに励んでくだされば無体な事なんてしませんよ」

嘘をつけ!!

「そんなに身構えなくとも、今回はサービス回です」
「は?サービス?」
「今日のレッスンは・・・・・」

ぽそぽそと耳元でささやかれて、総悟は顔を真っ赤にさせた。

『わたしに入れて』


がばっ、と土方を見れども素知らぬふりだ。
恋人同士とまではいかなくとも土方の女という認識がどこかにあったのだが。
前々から思っていたことではあるがこの女相当バカなド淫乱だ。前から思っていたことだが。
そのくせ自分の下半身に期待と好奇心で熱が集まっていくのは事実で。

「じゃぁ、まずは脱がせてください」

今まで一方的に弄られるばかりで嬲らせて貰うことすら全くなかったのに。
手を取られ誘うように胸元の合わせに導かれ、総悟は息をのむ。
「さっさとしなさいこの童貞が」
そしてほんと一発ぶん殴らせろ、と目の前の女に思った。

あらかじめ緩められていた帯はあっさりと解けた。
するりと布が滑り落ち、あらわになった肩。
撫でてみればやはり自分たちのものとは違う、絹のようなさわり心地。
真っ白で柔らかなそれは蝋燭の灯りを受けてゆらゆらと揺らめいているようだった。
そして形の良い二つのふくらみ。
チラリと目で伺えば若干蔑むように微笑まれて、イヤいらっとしたのも確かだがやはり10代の好奇心には抗えなくて手が伸びる。
先ほど触れた肩よりもあったかくて、柔らかくて、形をたどるようにおそるおそる撫でれば「くすぐたいです」と小さく抗議された。
ふわっふわの焼きたての食パンよりも柔らかいそれは、それでも持ち上げるように手を添えればそれなりの重みが手にかかる。
思わず漏れた感嘆の息はあっけなく見抜かれ、笑われたような気がしていたたまれなくなった総悟は手を引っ込めた。

「・・・・・で、次は・・」
「そうですね。沖田さんにも、脱いでもらいましょうか」

え、俺も脱ぐんですか。
そう声をかける前に伸びてきた指先が首元のスカーフを解く。
「今日は隊服なんですね」なんて言いながらしゅるりと引き抜く女の動作はやけに手馴れていて、少し考えてしまった総悟は反応が遅れた。
柔らかい塊を存分に押し付けながら、ゆっくりとジャケットが脱がされる。
ベストに伸びた女の手を、総悟の手が止めた。

「あ、いや・・」
「どうかされましたか」
「俺、今晩まだ風呂入ってねェんで・・」

早い時間からずっと土方に見つからないように立てこもっていたのだからしょうがない。
するとは何がオカシイのかくすりと笑った後、体を寄せて余計に密着してきた。
胸に顔を埋めてすんすんと匂いを嗅ぐ動作。たったそれだけの事で、どうしてここまで血の巡りが早くなる必要がある?

「どうりで。汗臭いと思った」
「・・悪かったな、だから・・」
「構うほどの事でもありません」
「わ、」

構わずベストのフックを外して、慌てて押さえる力を強くしようとしたその手をの手が握り返す。
ファスナーを唇で挟んで、ゆっくりと下げていく動作と「ジーッ」という音が。
つきんと痛みが走って唇を噛めば、目の前の娘はたいそう楽しそうに笑った。
ズボンの下、いつもの浴衣とは違い狭い中で主張するいやしい自分を恨む。
「もうちょっと待っててね」と細い指先でつい、と撫でられて、思わず腰が引けた。

ぷちん、ぷちん、ゆっくりとシャツのボタンが外されていく。
仰け反るように後ろの床に手を突いた総悟の腰の上にその腰をおろして(たぶん狙ってだ)、半分ほどボタンをはずしたところでが総悟を見た。
「暇でしょう。好きに遊んでていいんですよ」
むにゅ。のしかかる重みは柔らかくて暖かくて、動いてしまいそうな腰を押しとどめながら、目の前の胸に手を這わせる。
柔らかいそこに舌を這わせれば、女は満足そうに頭を撫でてくれた。

ぴくり、女の身体が跳ねる。
シャツのボタンをはずし終えたその手がベルトの留め金に伸びたところで、総悟が舐めていたふくらみに歯を立てたからだ。
「痛い」と困ったように眉を寄せるに、総悟も苦しそうに顔をしかめる。いい加減開放してほしい下が暴れ気味だ。
噛んでいた胸が離れて唇でふさがれる。
カチャ、と腹の下で音がして、一気に楽になった体に熱いため息が出た。

「ふ、ぁ・・・」
「だらしない顔」
「だ、まれ・・」

ファスナーの間から取り出した総悟のものを、両側から柔らかい塊で挟んで抜く。
足りない成人誌情報のなかにもその行為についての知識はあったが、
その行為にではなく、刺激でもなく、何よりその絵面が目に毒だ。
はみ出した先端をの舌がちロ利と舐める。かあぁ、と朱くなった顔を見られたくなくて。
総悟は熱のこもったため息を何度も吐き出しながら、片手で自分の顔を覆った。

「相変わらず、体の方はとっても素直なのに」
「うるせぇうるせぇ・・」
「大人しく縮こまってなくても、好きに動けばいいのよ?」
「チ・・・」
「ホラ、ここ・・」

起き上がって総悟の手を女がとる。
誘導されて触れたの中心は熱くて、しっとりわずかに湿っていた。
の指先に促されてくるりと周りをなぞった後、指の先だけ挿し入れる。
まとわりつくような粘度の高い水気と、小さくぷちゅ、と響く卑猥な水音。息が上がる。
の中は、差し込んだ指がそのままと化されるのではないかと思うくらいに熱くて、中指を根元まで加えこんだそこからとろりと溢れた蜜が総悟の掌を汚した。

「入れる場所は、分かったわね?」

コクリ、喉の奥を唾が通る音が小さく響く。

「初めてだから、尻込みしちゃいましたか?」
「・・・なめんじゃねーや・・!」

少し力んでしまった手で女を畳に押し倒して、はちきれそうな熱の塊をその割れ目に押し当てる。
ぴく、と少しだけ女がこわばったのが感じてとれた。



みち、

ねじ込んだそこは信じられないほど狭くて、熱かった。
熱くて、熱くて、苦しい。構わずまた少し進めばこすれた肉と肉の摩擦が電気ショックのように脳をダイレクトに揺らす。
ハッ、ハッ、と吐き出される息は到底自分のモノとは思えない、どこからどう聞いたって、飢えた肉食獣のソレだ。
根元まで力ずくで押し込めば、はぁぁ・・・・と熱く湿った息を吐き出して、総悟はにしがみついた。
きゅうきゅうと生き物のようにうごめきしめつけてくるそれは今まで受けた手とも口とも違って。
くんっ、自然に打ち付けるように腰を返せば、腕の中の身体がびくんと跳ねた。

きもちいい、キモチイイ。

「んあっ、・・はぁぁ・・」
「っ・・」

もっと奥まで。
少しだけ引き抜いて、角度をつけてもう一度勢いよくねじ込めば、先ほどより少しだけ奥に触れる。
再び組み敷いた女がぴくりと跳ねる。視線を落とせばうっすら頬を赤らめながら、辛そうに眉を寄せ唇をかんでいて。
・・いつも冷徹で、かわいげもなくて、見下してくるのその面を見て、もともとの本質が熱くなった。

味を知って締まった体はいたって本能に忠実に動く。
腰を引いてまた違う角度に打ち込めば、「きゃんっ」と女が鳴いた。その眼に涙がにじむ。

「はっ・・・、へへ・・いつものお返しでィ・・」
「ん、・・っぐ、ぁ、」
「う、は、あぁ・・・・・きもちー・・・」

「と、・・・し、ろ」



突然自由に動かなくなった体。
腹に回された固い腕の感触に、総悟はハッとした。
未だ息を乱しながら振り向けば、ほんのり香る煙草の香りと、わずかに険しい顔をした男の姿。

「・・・土方・・」
「そこまでだ、総悟」
「・・へへ・・なんでぇ、ここまで来て結局嫉妬心にでもかられやしたか」
「んなんじゃねェよ」

ぐい、と腹に回された腕を引き寄せられれば、と繋がっていた部分はあっさり離れた。
いかんせんこれでは総悟の方が不完全燃焼だ。どう始末つけてくれるのか。
息を整えながら舌打ちをうった総悟は、視線を下げた状態でビクリと体を凍りつかせる。

「オイ、オイ。生きてるか」

「・・・・・・っ・・」
「バカだなお前。初心者に挑発なんてするからそうなんだよ」
「ぃっ・・ぅ・・・」

縮こまって動かない娘の上に、土方が着ていた羽織をかけてやる。
隠れてしまったそこに確かに見たのは、多量の血痕。

「・・・・えっ?」

見れば自分のも真っ赤に染まっていて、総悟は血の気が引いた。
なにが?なんで?だって、土方の時はこんな出血なんて・・・。

「・・・・・・・あっ、あの日・・?」
「アホか」
「そ、そいつ、大丈夫なんですかィ・・?」
「大丈夫なわけねェだろ。ったく・・・見張っといて正解だ」


「あのな。女からしたら内臓ん中に異物ぶち込まれてるんだぞ?」


デリケートなんだよ。テメーが力の限り突いたらぶっ壊れるに決まってんだろうが。
黙ってしまった総悟に土方がはああ、と息を吐く。
まさか一発目からぶっ壊すとは。

ふと下から見上げる女と目があって、土方は女の身体を抱き上げた。
「沖田さん」
キチンと正坐したまま頭を垂れる子供の姿は、最近じゃほとんど見慣れないものだ。

「ごめんなさいね・・慣れてないのに、私が煽ったから」

貧血で若干青くなった娘にそう言われて、総悟は結局頭をあげなかった。








久しぶり過ぎて何が何だか。

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