ぎゃあぎゃあ、わあわあ、ぎゃんぎゃん!
今日も真選組屯所は騒がし・・・・・幾分かいつもよりも騒がし過ぎである。
廊下を歩いていた局長、近藤勲はひと際大騒ぎを起こしている部屋の障子をばしんと開けた。
幾らなんでも騒ぎ過ぎである。
ここはひとこと自分がびしっと言ってやらねば・・・と息を吸い込んで、
何も言えぬままぷひゅぅと吐き出した。
「え・・・何・・・ちゃん・・?」
「こっ近藤さん!あの、ごめんなさい、た、助けてくださいぃぃ・・!」
「ああ!何だてめえ!やんのかくそがき!!」
「おれぁくそがきじゃねぇ!ばーか!ロン毛!!」
「ふたりとも、けんかはやめてくださいよう!」
「・・・・えと・・・どうなってんの・・?」
いつからここは保育園になってしまったのか?!
わらわら子どもに囲まれて涙目になっているを見て、近藤は開いた口がふさがらない。
**フラグビームよもう一度**
「ええっ、この間のあの銃を?!」
そう言いながら近藤がはがいじめにしているのは、長髪を後ろで束ねた目つきの悪い少年。
「はい・・・ごめんなさい、話題に出した私が悪いんです・・」
そう言いながらが抱きかかえているのは、亜麻色の髪が揺れる小さな子供だ。
「おきたさんが倉庫から勝手にくだんの若返りの光線銃を持ち出して、ふくちょうを撃ったんですよ。それにおれも巻き込まれて・・」
そう言いながらちょこんと間に正座をするのは、目もとの垂れた黒髪の子供。
「待て!!お前ザキか?!お前どんだけ冷静な子供だったんだよ?!」
思わずツッコミを入れた近藤に、小さな男の子はぷるぷると首を振った。
ふわふわと柔らかそうなほっぺたが、さらさら黒髪と一緒に揺れる。
「違いますよきょくちょう、からだはこんなんですが、おれは精神はそのまんまです」
「どゆこと?!体は子供、頭脳は大人?!」
「それです。どーやらこの銃、からだは幼児化させるけど、精神まで幼くするかどうかはらんだむみたいなんです」
話を整理すると、こういうことだった。
先日、天人由来の奇妙な銃で撃たれたは体も精神も十といくらばか、幼くなってしまった。
それを見た土方は思いっきり反応を示し、彼の言う事には、
「いやぁー、はっきりと思い出した訳じゃないんだが、すげぇ懐かしかったわぁ」
ずるいずるい。だってあの頃のお兄ちゃんにまた会いたい。
その銃は未だ屯所の押収物品の倉庫にしまわれている。土方に撃ったらまたお兄ちゃんに会えるのかなあ・・。
なんて言う話を、勿論冗談で山崎と話していたのだ。
それをあざとくも聞き付けた総悟が、面白そうだと倉庫から銃を持ち出して土方に向けて撃ったというわけ。
止めようと慌てて割って入った山崎も謝って流れ玉(流れ光線?)に当り、次の瞬間光景はまるで幼稚園か保育園に。
えーっと・・と総悟はしばらく考えた後、自らにも向けて撃った、と。
「自分を打ったのは明らかにきょくちょうからの大目玉から逃げるためですよきっと」
そんなことをつらつらと喋る小さな子供を見て、近藤は大きなため息をついた。
改めて見てみると、光線は子どもにする、というよりは一定期間の年齢を巻き戻す効力のようで、子土方は12、3歳ほどなのに対し子総悟はどう見ても5、6歳だ。子山崎はその中間と言ったところか。
小さな体を抱きしめながらちらりと目の前で牙をむく黒髪の少年を眺めたは、はわわ・・と頬を赤くした。
お兄ちゃんだ。お兄ちゃんだ。
「はなせ!てめえどこのゴリラ星のあまんとだ!」
「ゴリラは確定なの?!オイやめんかトシ!ああ、まだ俺と会う前の年なのか?」
「しらねーよはなせ!」
「うごっ」
「じゃ、じゃぁ、あのぅ・・・」
『ねこ』って女の子の事、知りませんか?
殴られながらも必死に押さえつける近藤に歯をむき出していた土方が、ぴたりと止まる。
そしてを上から下までじっくり見て・・・。ぱちぱちと瞬き。
「・・アンタ、雰囲気似てるけどあいつのねーちゃんか誰かか?」
「・・・・・!!」
はわああああああ!!
ぎゅううう、と思わず小さな体を抱きしめていた腕に力がこもる。
お、覚えててくれた。
しかも、この子土方は、遥か未来の姿の自分の中にも、『ねこ』の面影を感じ取ってくれたのだ。
しかし、そんな感慨にふける間もなく、腕の中の栗色の頭が苦しそうにうごめく。
「いてえ!」
「あっ、ご、ごめんなさい沖田さん・・」
そこでも気づく。先程までとうって変わって、腕の中の体は借りてきた猫のように大人しい。
ちらりと上目遣いで不安げに見つめられる。ちび総悟はきょろきょろとあたりを見回して・・・
・・周りがごつい大人や知らない子供たちであるのを見て、今度はぎゅっと総悟からの着物を握った。
「お姉ちゃんは・・?」
おや、と首をかしげる山崎の隣で、近藤はやけに納得していた。
そう言えば総悟は幼いころは本当に姉であるミツバにべったりだったのだ。
ミツバ殿は仕事に出ているよ、と言えば、しぶしぶ総悟は納得した。
はてさて困ったことになった。
放っておけばそのうち元に戻ることはで実証済みとはいえど、それまでのこの子らの子守りを誰に任せるか・・・。
と言っても、適任は一人しかいないわけで。
土方は可愛がっていた妹分の知り合いという事で、警戒はしているが襲いかかるほどではないし、総悟も何だかんだ言って大人の男たちよりはがいいとくっついている。
山崎は心配いらないとして・・・お願いっちゃん!しばらくこいつらの面倒見ててあげて!
そんな感じで局長に頭をさげられて、はしぶしぶOKしたのだった。
勿論「自信ないですよ」とは付けくわえた。
そして自分の時は本当にご迷惑をおかけしました、とも。
早速喧嘩しそうな総悟と土方をなだめながらはため息をつく。
山崎が気を利かせて「そうごくんいっしょにお絵かきしてあそぼ〜」なんて仕掛けてくれたが、
「うぜえ」と一蹴されていた。おつかれ退くん。
土方は土方で一向に警戒を解こうとせず部屋の隅でこちらを伺っている。
はぁぁ・・とちび山崎の頭を撫でながらため息をついていると、ちょいちょいと袖を引っ張られた。ちび総悟である。
「あんたなんて名前?」
「です」
「へー、おれぁそうごってんだ」
「そうごくんっていうんだ」
「あんたとだったら遊んでやってもいーぜ」
「まあ」
「酷い!」
山崎が悲痛な叫びを漏らすが、あいにくはそれどころではなかった。
いま撫でられているちび山崎もそうなのだが、年少組のちびっ子化した姿は、何と言うか、破壊力がやばい。
特に総悟は、18の姿ですら整った可愛らしい顔をしているのだ。
さらっさらの栗色の髪をぱさぱさゆらしながら、ふにっふにのほっぺたをほんのり赤らめて。
ちっこい体をぺたんと畳におろして、にやりと歯を見せて笑う。いつもよりも幾らばか無邪気な笑顔。高く幼い声。
さぞかし可愛い子供だったんだろうなあと思う事はあったが。まさか、これほどまでとは。
「おい、きーてんのかっ」
「聞いてるぅぅぅぅうううう!!」
「わあっ、なにすんでぃ!」
流石にもう我慢ならず、はその小さな体を思いっきり抱きしめた。
何だコレ、何この生き物。何だこの可愛い生命体は!!
驚いた総悟の小さな手がむぎゅ、との胸を押し返すが、その小さな感触もまたキュンキュンきてしまう。
くるりと胸の中の頭が上を向いて眼と眼が合う。
ほっぺたをぷくーっと膨らませて真っ赤になった総悟が一言。
「つぶれちまいまさあ!」
「ぎゅはぁぁぁぁぁぁあああっ!」
の心にダイレクトアタック!!
何なのこの生物兵器はあああ!
「ちゃん?ちゃん?!」
「退くん、ヤバイ、ヤバイ、沖田さんが、沖田さんが超可愛い。いや退くんも可愛いけど」
「あ、ありがとう・・・じゃなくて、だいじょーぶ?!顔真っ赤だよ」
「大丈夫じゃない・・おそるべしそうごくん・・・!」
「おいー、あそぼーぜぃ」
にこにことすり寄って来るちび総悟に、緩む頬を引き締められないまま「いいよー何して遊ぶー?」なんて答えれば。
ちっこい天使は本当天使のような笑顔のままで、こう答えた。
「んーじゃあね、「ご主人さまとげぼくごっこ」!」
・・・・・・・・・・。
「どんな子供だよ?!!」
ちび山崎の叫びがこだました。
続きます。
>>next>>