「しん、ぱち」
「うわァァァアアアア!!銀さんんんん!!!何なんですかこの胸にこみあげて来るものはアアアア!!!」
「分かる!分かるよ新八ィィいい!銀さんもそうだった!!経験したことないけど娘に初めて「パパ」って言われた時みたいな気分になったァァァあああ!!!」
「分かりますぅゥゥゥウ!!多分そんな感じですぅぅぅぅ!!」
「うっさいネお前ら」
今日も万事屋は騒がしい。
=犬は喜び庭駆け回る=
「神楽ちゃん、ジュース飲む?」
「ほしーアル!」
「ちゃんは?」
「のむ」
「・・・うはぁーなんかいいですねぇコレ」
新八が机の上に神楽の分との分のオレンジジュースを置く。
「はい」
「ありがとう、しんぱち」
「新八のくせに気がきくアル!なぁ!」
「うん、」
「銀さん・・・何か僕今、家庭というものに改めて憧れを感じました」
「ほーそりゃぁよかったな」
が万事屋に来てひと月半が過ぎようとしていた。
今では新八にも喋るようになったは、こうして万事屋の建物の中でなら銀時たちと会話も出来るようになっていた。
「ぎんちゃんも、のむ?」
半分残したジュースを銀時に持ってくる。そんな一つ一つの行動が可愛い。
銀時はの頭をくしゃくしゃと撫でながら、いいよ、全部飲みな、と言った。
相変わらず目の下には大きなくまがある。
「ぎんちゃんぎんちゃん、しんぱちが苺ババロア作ってきてくれたって!」
銀時の事を銀ちゃんと呼ぶのも、新八の事を新八と呼ぶのも神楽の真似をしてだ。
「おねーちゃんも待ってるよ、いこ」
神楽の事が自分の事をおねーちゃんと呼ばせていることには驚いたが・・。
神楽は神楽で、本物の妹が出来たみたいに相変わらずを可愛がっている。
毎日一回は散歩もするようになった。まぁ、4人一緒にじゃないと嫌がるが、最初の頃のように首輪がないとどこかへ飛んでいくことも最近はなくなった。
ただ、万事屋の外ではは一言もしゃべらない。
「あ、新八君に、万事屋の旦那じゃないですか。お久しぶりです」
「山崎さん!」
「よージミーじゃねーか。何だこの人だかりはァ?」
その日も4人で散歩をしていた銀時たちは、大通りの前で真撰組の監察と出会った。
目の前には大きな人だかり、その向こうにはパトカーが何台も止まっており、道を塞いでいる。
「実は天人が来てましてね・・護衛を依頼されたんだけど、江戸の町を観光したいって言うから、仕方なく道を封鎖してるんだよ」
面倒臭いけど、何かあっても困るしね、と苦笑いで言う山崎の後ろの人だかりの向こうでは、犬の顔をした天人が我が物顔で道を歩いていた。
まったく、いつ見ても偉そうな奴らだ・・。銀時は頭を掻く。
突然の銃声にそちらを向けば、先ほどの天人が「見せもんじゃねぇんだ、見物人は失せろ」と怒鳴り散らしていた。
「ぎ、銀ちゃん!がいなくなっちゃったアル」
「何ィまたか」
今の銃声にビビったか?最近は外の音にも慣れてきたようだったが、流石に今の大きな音はびっくりしたか。
「探すぞ」
山崎に適当に挨拶をしてその場を去る。万事屋の猫探しが始まった。
がむしゃらに走りまわったせいで、自分がどこにいるのかさっぱり分からなくなってしまった。
いったん立ち止まって乱れた息を整えながら、はきょろきょろとあたりを見回した。
完全に大通りに出てきてしまった。
周りには目を回しそうなくらい高いビルが立ち並び、見上げた空は狭かった。
は先ほど見た犬の顔をした二足歩行の生物を思い出す。
天人、あまんと、・・・・怖い。
ふいに、がしり、との腕が何者かに掴まれた。
「!!!!」
「やァっぱり。誰かと思えば万事屋の猫じゃねぇですかぃ」
驚いて振りほどこうと思い切り腕を振ったが全く離れる気配がない。
青くなってじたばたもがくを、真撰組一番体隊長沖田総悟はやる気のなさそうに見降ろした。
ど、
どえすの人だ!おねーちゃんがそう呼んでた。
は心の中で思った。
一度しか会ったことはないが、に攻撃を仕掛けてきた。敵だ。この人は敵。
ぶんぶんと振りほどこうと腕を振ると総悟の横から、もう一つ声がした。
「あァ?誰だそれ。お前の知り合いか総悟」
「土方さん。この前言ったでしょう。コイツがその万事屋で飼われてる娘でさぁ」
「ふーんそいつがねぇ」
土方さん、と呼ばれたその男はどえすの男と同じ格好をしていて、口にくわえた煙草からは一筋の煙が立っている。
「真撰組、何をしている。さっさと行くぞ」
そしてその後ろから現れた、先ほどよりも高級な服装に身を包んだ犬顔の天人を見て、の息が止まった。
「?なんでぇ急に」
慌てて総悟の後ろに隠れる。がたがたと震えが止まらない。
どえすは敵だけど、ぎんちゃんたちの知り合いだ。
でもこっちは。
天人は、怖い。怖い。怖い。怖い。
「分かった今行く。あァ総悟、俺パトカーに忘れ物したから。アレ、とって来い」
「へーい」
尋常じゃない震え方に何かを察したのか、土方は適当な指令を総悟に残して天人とさっさと行ってしまった。
土方の姿が見えなくなるまで見送っていた総悟は、ちらりと後ろを向く。
今度会ったらぜってー泣くまでいじめてやる!と思っていたが、そんな気分でもなくなってしまった。
よくわかんねぇけど、もう行っちまいやしたぜ。
の震えは止まらなかった。
「はぁ・・・・・・」
「・・どこに行ってしまったアルかぁ・・」
「銀さんも神楽ちゃんも、ほら!一人で先に帰ってきてるかもしれないじゃないですか!」
あれ。
ガラガラとひらく玄関を見て、新八は疑問を抱く。鍵、掛けて出てきたと思ったのにな。
次に神楽が新八を押しのける。そこにあったのは、
「の靴ネ!!!」
「何ィィィ!!帰ってきてたのか!!」
どたばたと靴を放り出して入っていく二人。
よかった、とほほ笑みながら、散らばった靴をきちんと揃えて遅れて居間に入った新八は、その状態で固まった。
「よーう旦那ァ。遅かったですねぃ」
「沖田君んんん??!!」
「、ーーー!!」
ソファーにどっかりとくつろぎながらコップに入ったオレンジジュースをすする一番体隊長。
その隣にちょこんと座ったに、神楽が飛びついた。
「ドS!!お前が、お前が!を誘拐したアルかァァァ!!!」
「道に迷ってたとこ家に送り届けただけだろーが」
「あの・・あの、沖田さん・・玄関の鍵って・・」
「あァ、それなら」
ピッキングさせてもらいやした。さらりと言ってのける総悟に、お前それでも警察かァァァーー!!という銀時のツッコミが見事に決まった。
総悟ならピッキングじゃなくて実力行使で玄関を破壊して入ってもおかしくなかったのでは・・・なんて新八は感じたが、とりあえず今はが無事だったことを喜びたい。
「とりあえず、ちゃんが無事でよかったじゃないですか。ありがとうございます沖田さん」
「そーでぇ。こいつ俺が送ってやったのに礼の一つもいわねぇたぁどういう教育してんですか旦那ァ」
「あーそいつかなりの人見知りだから。慣れてこねーとしゃべんねーんだよ」
「テメーがと口聞こうなんざ100年早いんだヨ!!100年たっても聞かせてやらないネ!の声聞いたら惚れるに決まってるアル!!」
「んなことねーや」
そう言うと総悟はひょいとを抱き上げて自分の足の間に座らせた。座りながら後ろからだっこしているような状態だ。
はじたばたと嫌がったが、総悟が耳元で何かをつぶやくと、とたんに大人しくなった。
な・・・・、
何だとおオオオオオ!!!???
が、あのが、会って2回目の人間にあっさりと調教されてしまっている!!!!
真っ赤になった神楽が総悟に飛びかかったせいで総悟の膝から離れたは、てとてとと走って言って銀時の腰にしがみついた。
が震えているのに気づいて銀時は血の気が引くのを感じる。
「ちょ、ちょっとちょっと沖田君??に何言ったの?この子震えてるんだけどッ!!」
「何ィィィいィィいい!!ぶち殺したろかァァテメェ馬鹿ドSゥゥゥ!!!!」
「あり?怖がらせすぎやしたか」
青い炎でも纏いそうな雰囲気の神楽をひらりとかわし、悪ィ悪ィ、と総悟はの前までやって来た。
「さっきのは冗談でさぁ。んなことしねーよ」
「・・・・・・ほんと・・?」
ココが万事屋の中だからだろうか、しがみついているのが銀時の腹だからだろうか、腹から漏れた鈴の音が響くような声に、銀時はぎょっとした。、お前声出てるよ!!
そしてちらりと総悟を見てもう一度ぎょっとする。
沖田君、なにほっぺ赤くしてんのォォォォ!!!
なんて可愛い声!!守ってやりたい!!なんて絶対思っていない。
なんて可愛い声!!この声で嫌がられたい、罵られたい、それで泣かせたい、挙句の果てにわめかせてやりたい!!とか思っているのだこの男は絶対に。
その証拠に、沖田君、君半笑いのまま震えてるよ・・?
「本当でさ・・・ね、ねぇ、もっかい喋って?」
「・・・ばかどえすっ・・」
「おぉ・・・!!!」
おぉ・・じゃねえよ。
目を獣のように輝かせる少年から守るように、銀時はを背中に隠した。
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