宇宙の片隅に、ある種族がいた。
森に覆われたその星で、彼らは獣のように飛び交い、その美しい声で仲間とコミュニケーションをとって生きていた。

その声は、まるで鈴の音が響くような。

聞く者の心を穏やかにし、その歌声は泣いている赤子も一瞬で眠りにつかせるほど。

知能も高く友好的な彼らが、開拓にやって来た他の天人によって乱獲され絶滅への道をたどるのに、そう時間はかからなかった。








=返事をするときは腹から声を出して=









「つまり何だ?がその種族の生き残りだっつーのか」
「生き残りか・・・少し違うな。その種族は何年も前に絶滅したんだ」
「どういうことアル?」

絶滅したはずの種族によく似た種が生き延びている。
それが何を意味するのか、ピンと来てしまった銀時と総悟は渋い顔をした。

「・・・『人工物』か」

・・そうだ。土方は目を細めた。
そもそもその絶滅した種属は人と獣の間のような生き物。
彼らの美声を気に言った天人たちが、このまま絶滅させてしまうのは惜しいと、品種改良を加え人間に近い形に作り上げたのだ。

ちなみに、何故人間だったかと言うと、
地球が天人によって開国された当初は賢く言葉も使える人間が安く手に入ったから、だとか何とか。
実験に実験をかさね、家畜のように、愛玩動物として養殖されてきたのだ。

「猫じゃなくてモルモットだったってこった」
「品種、改良・・?」
「ちっ・・・えげつねェ事しやがる」

養殖してんなら一匹くらい逃げたって目くじら立てるほどでもないだろうに、と銀時が言えば、品種改良したせいでメスが生まれにくくなっちまったんだと、と土方が返す。
その言い方には含みがあり、今度はその場の全員が意味する事に思いあたった。
うげ、と総悟が苦いものを飲み込んだような顔で舌を出す。


数少ないメスは、貴重な繁殖の「道具」だ。



一家に一匹、オーディオのかわり?ふざけんじゃねぇ。
ぎり、と拳に力を入れて、銀時は新八と神楽を見やった。
二人とも、覚悟を決めた、まっすぐな瞳で銀時を見ていた。
銀時は頷く。

「奴らの情報をくれ。頼む」

背筋を伸ばし、真剣な表情で真選組に向かう銀時に、土方は瞳を伏せ、総悟は僅かにほほ笑みながらため息を吐いた。






「おかえり、験体5425番。随分と手間をかけさせてくれたようだが・・・無事戻ってきてくれてよかったよ」
「・・・・」

大きな宇宙船の中、中心に一本の柱のある大きな白い部屋で、服のかわりに体中に鎖を巻かれたは転がされていた。
その瞳は光を移さず、言葉を発している天人の顔も見ようとしない。
僅かに覗く彼女の肌は、捕まる時の暴行によって紫色の痣で覆われていた。

「久しぶりに聞かせておくれ。お前の眠りに誘うような美しい鳴き声を」
「・・・・・・」
「フッ、心配はいらない。放っておいてもこの船は間もなく自動で出発する。前回みたく眠らせて逃げることなど無理。目が覚めるころには我々の星・・・お前の小屋だ」
「・・・・・・」
「鳴く気がないなら、力ずくで鳴かせるまでだがね」

天人がくい、と手を裏返せば、その後ろから長い鉄の棒を持った部下たちが現れる。
棒の先は赤々と輝いていて、天人の部下たちはためらいなくそれをの体に押し付けた。


「!!!!あっ、あああああああああ!」
「相変わらずよい声で鳴くね、5425番。いいぞ、とてもいい」

あああああああ
あああああああああああ

じゅぅぅぅ、と煙を上げるの腰。
通常なら騒音と変わらない苦痛の叫び声も、の喉から出れば美しい音色と変わらない。
指示を出した天人も体に鉄の棒を押し付けた天人も、うっとりと頬を歪ませた。
押し付ける手の力が強くなる。

「喉と子宮以外はどうなっても構わん」
「ああああああ、やあああああ!!」


あつい、あつい、痛い。
意識を失うことすら許されない激痛。
喉が破れるのではないかという大声を出しながらも、の瞳から涙がこぼれることはなかった。

これでよかった、んだ。
自分のバカげた逃亡生活に大切な人を巻き込むよりも、
大事な大事な家族だ、と言ってくれた大好きな人を欺いてまでも、

わたしには、鳥かごの中で子守歌を歌っているか、分娩室で知らない親戚に犯されているほうが、お似合いだ。

悔いはないよ。

お別れもしてきた。

万事屋での思い出があれば、きっとこの先心折れることなく生きていける。


世界で一番だいすきな、万事屋の、
おねーちゃんと、
しんぱちと、
定春と、

・・・
ぎんちゃんとの、



「ぎんちゃぁん・・・」

無意識にこぼれた自分の言葉に、虚ろになっていた思考がハッと引き戻される。

なにを、今更。

飛び出してきたのに。一緒にいようって言ったのを拒否したのは自分だ。

今更。

今更・・。


「ぎんちゃん・・ぎん、ちゃぁん・・・」


しかし、そんな心の中とは裏腹に、一度こぼれてしまった言葉は、涙は、そのままどんどんと大きくなりあふれだした。
ぎゅうと目をつむっても、口が、喉が、言うことを聞いてくれない。

・・・・嘘だ。口の中も、喉の奥も、心の中も、だいすきな家族への想いでいっぱい。


「ぎんちゃん・・・、ぎんちゃん、ぎんちゃん!うあああああああんぎんちゃぁぁぁああうあああああ!」
「・・ギンチャン?」

天人が首をかしげる。しかしの悲鳴が大きくなったことは、それほど悪いことではない。むしろもっともっと鳴き叫べばよいのだ。
いい調子だ。次の奴、前へ。と言えば、了解の声をあげて二本目の鉄の棒がの太ももに向けられる。


「ぎんちゃああん!!!」





カラン。


耳のそばでそんな音がした。

あてがわれると思った太ももには、熱はない。

力の限りつむっていた瞼をゆるゆると開けば、目の前には鉄の棒が転がっていた。
更に視線を起こせども、の隣にいたはずの天人部下の姿はない。
まるで、棒だけ置いて消えてしまったみたいに。


「ぶえっくしょい!!」


突然、真っ白な部屋に緊張感のないくしゃみが響き渡った。

続いて、コツ、コツ、という複数の足音。



「・・・・・何でこのタイミングでくしゃみするよお前。台無しじゃねーか」
「そうだよ、もうちょっと緊張感持とうよ、神楽ちゃん」
「しょうがないネ!女の子の気持ちとくしゃみと戦隊ヒーローの変身のタイミングはなかなかつかめないものアル!」



つう。

くしゃみを、足音を、声を、聞いただけなのに。

いたぶられている時には微塵も出なかった涙が止まらない。





ぽたぽたと床に音をたてて落ちる涙を止めることができないまま、はゆっくりと声の主の方に頭を向けた。


「いっつもぼそぼそとしか喋らなかったくせに・・・」



「出んじゃねーか。でけー声」



視界がぼやけて何も見えなかったが、そこにいる人物とその表情は見なくても分かった。










い、一応クライマックス(盛上り所)です。シリアスは苦手だ・・・

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