えええええええええええ??!!
犬顔の天人(部下)は、今現在目の前で繰り広げられている状況に、恐怖と驚愕とどん引きとがまじりあった悲鳴を上げた。
彼らの目の前・・・フロアの入り口付近に立つ、カタカタと震える小さな少女、が。
ぐァしり!!
と片手で扉の横を掴めば、メキメキと音を立てて扉の横の壁が崩れ去ったのだ。
恐怖も驚愕も通り越してむしろどん引きだ。どんな怪力だよ?!
そのまま少女は手に残ったこの船の一部の破片・・・いや、破片と言うには大きすぎるその鉄の塊を、ぽいと軽く真上に放る。
それが落ちて来るタイミングに合わせて、少女はもう片方の腕に持っていた傘を思い切り振りぬいた。
「・・・・を泣かせた悪い奴は、どこのどいつだァァァァアアア!!!!!!」
=ミーちゃんはペットじゃありません、家族です!!=
野球のノック練習のように、否、ノックにしては全力すぎるそのショートゴロに、天人の部下の一人が思いっきりふっ飛ばされた。
先ほどの体に赤く焼けた鉄の棒を押し付けようとしていた部下も、これで吹き飛ばされたのだ。
銀時は、怒りによって赤と青が混じってむしろ紫色の炎を体から放出しているチャイナ服の娘を見やった。
「5425をすぐに確保しろ」と天人の上司が叫んだのと、鎖で縛られたの肌が痣だらけなのを発見した神楽がぷっつんしたのと、ほぼ同時だった。
「アタイの大事な妹傷物にした罪、その体を持って償えやゴルァァァアア!!!」
「神楽、神楽、そんなむちゃくちゃに打ちまくったら危ないから。に当たっちゃうから」
「アァン?!舐めんじゃねーヨ!私が可愛いにぶつけるワケ・・・あっミスったアル」
「ちょっとォォォォ!!!」
ガコォォォンン・・・!!と神楽の打ちこんだ鉄塊がに直撃して煙を上げた。
銀時と新八が真っ青になって「ーーー!!!」と叫ぶ中、その煙が真っ二つに割れた。
「あぶねーじゃねーかぃ。このノーコン」
「沖田さん!」
「オイ総悟、お前はあんま暴れんじゃねーぞ」
煙の中から出てきたのは、を庇うように前に立った、刀を構えた総悟。
更に銀時たちの後ろから煙草を咥えた土方も現れた。
「ぎ、ぎん、ちゃん・・・」
ぽろりと、涙と一緒にの口から言葉が漏れる。
それは鈴の音が響くような。
「しんぱち・・・おねーちゃん・・・」
「どえす・・・ひじかたさん・・」
「待てやァァァ!なんで俺は『ドS』で土方は『土方さん』なんでぇ」
そんでもってチャイナお前オネーチャンとか呼ばせてたの?!キモッ。なんて、珍しい総悟のツッコミが冴えわたる。もちろん、その顔は本気ではなかったけれど。
「くっ・・・真選組・・!貴様ら護衛の分際で刃を向いて、どうなるか分かっているんだろうな?!」
「へん、護衛の解約はすんでんだろィ。人んちの猫窃盗した疑いがあるってんで調べに来ただけでさァ」
「そーだよそれ待ってたからこんなに遅くなっちまったんだよ!どーしてくれんのォ?!」
「その娘はもともと我々の飼い猫だ。窃盗などにはならん!」
鼻先に皺をよせ牙を見せる天人が「それにこの船は間もなく出港する。助けなど来ないぞ」と言えば、「あーこの船のメインコンピュータ、さっきぶっ壊してきたから問題ねェよ」と銀時が言い、天人は怒りで余計に顔を赤くさせた。
「何の権利があって貴様ら!!」
「アァ、確かに俺たちにゃぁアンタらを裁く権利はない。だが、そろそろ到着するころだろうさ」
「!!・・まさか」
地球の、幕府おかかえの武装警察ごときでは、禁止されていようが天人の人体実験を裁く権利など持ち合わせていない。
そこで土方は、国際的に取り締まりの権利を持つ宇宙連邦を呼んだのだ。
非公式に生物の品種改良、人体実験を行うことは禁止されている。ばれたら目玉を食らうのは自分たちだ・・・。
ぐぐう、と天人の上司は歯を食いしばり、部下たちに慌てて撤退を命ずる。
「ふ、ふん、そんな娘の一人くれてやる。我々は帰るぞ!」
「いやいやいやァ、そりゃ困るぜ「あまんとさま」よォ」
それを遮ったのは、万事屋のメンバーたち。
「人んちの猫好き勝手なぶっといてくれて、ハイさようならたぁつれねーな」
「腹ん中煮えくりたぎっておさまんねーアル!」
「ここは通しませんよ!」
「チッ・・・何している、ねじ伏せろ!」
大勢の天人が遠吠えを上げながら万事屋に襲いかかっていく、が、神楽が傘を振り上げれば何人もの犬が宙に飛ばされ、新八が竹刀を振り下ろせば一人ずつ地に沈んでいった。
次第に青くなり、汗が噴き出してきた天人の上司の前に銀時がたつ。
「な、何なんだ貴様ら!自分の家畜をどう扱おうが関係ないはずだ!」
「関係なくねーよ」
ペットだって家族なんだよ。
イヌでも、ネコでも、
「子供産ませたならその一匹一匹まで愛情持って育てんなァ当たり前だろーがァァァァァ!!!!」
銀時の放った木刀が、犬顔の天人の眉間に大きく食い込んだ。
「動くんじゃねーぜ」
真選組一番体隊長、沖田総悟がひゅんひゅんと軽く刀を振れば、の体に巻きついていた鎖はいとも簡単に砕け散った。
動くな、と言われても動ける状態でもないのだけれど。
その鮮やかさに感心する暇もなく、の上にぱさりと上着が落ちて来る。
「なんでぇ素っ裸だったのかィ。着な」
・・て言ってもその怪我じゃ動けねェか。総悟はそう言っての上半身を起こし、前のボタンを留めてやる。
女の裸を見るのは別に恥ずかしくもなんともないが、・・・鎖におおわれていた部分の肌もほとんど紫色の痣で覆われていて、それを外に見せるのが忍びなかったのだ。
しかし、二つ目のボタンを留めたところでその行為は中断された。
が、総悟に抱きついてきたのだ。
そんな体では少し動かすだけでも激痛が走っているだろうに。
この総悟に抱きついてくるくらいなのだから、強がっていても本当は死ぬほど怖かったんだろう。
そう思っていたので、次にの口から放たれた言葉に、総悟は目を丸くした。
「ごめん、なさい・・」
「・・・はァ?」
はぽろぽろと涙をこぼす。
本来なら真選組は関係ないはずなのに。
は総悟に酷いことしかしてないのに。きらい、って言ったのに。
それでも銀時たちと一緒に助けに来てくれた。
「ありがとう・・どえす・・」
「泣きながらお礼言って『ドS』かぃ」
「・・ありがとう、そうご」
・・・・。
えらい報酬もらっちまった。
いつか言わせようとした自分の名前を、この娘は覚えていてくれたのか。
そんなことが柄にもなく無性にうれしかったので、柄にもないついでに総悟はの頭を撫でながらこう言ってやったのであった。
「もう、大丈夫でさぁ」
「・・うん・・」
「・・・やっぱもう一回言いなせぇ。今度は『ご主人様』で」
「・・・・」
・・ばかどえす。
目じりに涙をためながら言うに、やっぱりそっちの方が調子出るや、と総悟は笑った。
「オイコラ沖田くうん、青春繰り広げてる場合じゃないんですけどッ!!」
「早くここから離れましょう!」
銀時と新八の声に振り向けば、動かなくなった天人と傍らに何やら赤いボタンの箱。
証拠隠滅のために自爆とは、なんてはた迷惑な。
行くぞ、と道を示す土方にせかされるまでもなく。
総悟はひょいとを後ろ向きに担ぎあげて、前を走る万事屋を追った。
「ちゃん、大丈・・・ブフゥゥゥゥ!!!!」
「どうした新八」
ゴゴゴゴ、と僅かに振動する廊下を走りながら、新八は鼻を押さえて慌てて前を向いた。
総悟に逆向きに担がれたは、裸に真選組のジャケットのみであるので、まあ、当たり前のように・・・
おしり丸出しなんですけどォォォォ!!!
「何にも穿いてないの?!」
「そりゃァ当たり前だろ、ペットなんだから・・・ほら、たまにイヌに洋服着せてるおばちゃんとかいるだろ?銀さんあれはいただけないなァそもそも犬の気持ちってもんが「言いながら何マジマジと見てんですか銀さんんんんん!!!」
「オイ総悟、逆にしろ逆に」
「アンタらが振り向かなけりゃいいんでさぁ土方変態」
つい先ほどまで戦闘だったとは思えないようにぎゃぁぎゃぁと騒ぎ立てる声を後ろで聞きながら、
は自分の檻だった船が壊れていく様を、総悟の背中から見つめていた。
さようなら。
檻は壊れた。
これから私は、檻の外で生きていく。
戦闘なんて・・・かけません
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