コンビニのレジでジャンプ片手に並んでいた銀時は、ふとレジに隣に積まれたキューブ型の小さなチョコレートが視線に入った。
しばらく考えた後それを一つだけつまみ、ジャンプと一緒にレジに出す。

20円分だけ多い出費になった。







=海老で鯛を釣るけど海老は海老で上手い=







万事屋に帰るとリビングで定春と神楽がソファで遊んでいた。
その向かいのソファには。神楽と定春の様子をじっと見ている。
「あ、銀ちゃん、お帰りアル!」神楽の声にハッとしたようにふりむいて振り向いたは一瞬体をこわばらせ腰を浮かせたが、神楽が気にせず定春と遊び始めたのを受けて大人しく腰を下ろした。

は少しずつ押し入れから出るようになってきていた。
最近ではやっと銀時が持って行ったご飯も食べてくれるようになり、見かけても押し入れに飛び込むようなことはなくなった。
あれほどやせ細っていた手足には通常の肉も戻り、眼の下のクマはそのままだが・・その辺にいる普通の娘のような見た目にもなって来た。
神楽のもう着なくなった水色のチャイナ服を貰い、新八が姉からお下がりを貰って来た櫛とピンで前髪は横に分けて止められていた。

「銀さん、頼んでおいたお醤油飼ってきてもらえましたか?」
「あ、わりーわり―。飼ってくるの忘れちまった」
「ええぇ。もう・・じゃぁもう僕買ってきますよ」
「わりーなァ。オイ、神楽。テメーもついでに定春散歩して来い。部屋ん中で暴れられちゃ毛が舞うだろーが」
「そういって銀ちゃん、と二人きりの時に親交を深めておくつもりネ」
「ち、チゲーよ!!」

慌てて否定すれば、新八も「そう言えばまだ触らせてもらえないの銀さんだけですもんね」なんて痛いところを付いてきた。

「いいから行って来い!」


うるさい二人を追い出してしまえば、部屋の中には銀時とのみ。
は神楽が出ていくのを見送ると、気まずそうに立ちあがろうとソファに手を付いた。

ああ!待て待て待て!
なんて心の中で銀時は叫んでみる。現実で叫べばそれこそは驚いて押し入れに走っていってしまうからそんなことはしないが。

「ほらよ」

ソファから立ち上がる前に素早くの目の前に手を差し出す。
そこには先ほど20円多く払って買った小さなキューブ型のチョコレート。

それが何か分からずに首をかしげるに、銀時は手ぇ出せ、とだけ言って、出された手にそれを乗っけた。

「チョコレート。旨いぞ」
「・・・?」

手に載せられたものを不思議そうにふんふんと匂いを嗅ぐに、仕方なく銀時はの手から再びチョコをつまみあげ、包装紙をはがしてやった。その手をの目の前に持っていく。


「チ ョ コ レ ー ト !食ってみ。旨いから」

感謝しろよ?この俺が貴重な20円を使って自分も食べたい大好きな苺チョコを買って来てやったんだから!
そんなことを考えていると、カンカンと万事屋の階段を上ってくる音。
まずい、神楽か新八が忘れ物でもしたか?
そう思って視線を窓の外に向けた瞬間だった。

ぱく。


「!!!???」


がチョコレートを、つまんだ銀時の指ごと口に含んだ。
ぺろりと指に触れる舌の間隔に背中がぞわりとする。
が銀時を見上げる。食べるから指をはなせというのだろう。
喋らないからこそ、この少女の考えは態度や表情から読み取らなければならない。

銀時が指から力を抜こうとした瞬間、部屋の扉がバンと開かれた。

「銀ちゃん、新八が財布忘れたサザエさんみたいになって、うおおおおお何してるネ?!」
「いや、神楽、これは、違、っ??!!いっっってええええええええええ!!!!!」

神楽に向かって言い訳を考えていると、いい加減離れない指に待つのが嫌になったに、指ごと思いっきり噛まれた。

神楽は一瞬呆然とした後、ぶあはははははは、なんて行儀の悪い笑い方で銀時を見降ろした。
「どうしました」と遅れてきた新八に、「銀ちゃんがを餌付けしようとして指ごと食われてるネ!」と言い、
銀時はぽたぽたと血が滴る指を見ながら額に青筋を立てた。


「人の指は食べちゃいけませんっ!」








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