銀時がパチンコから帰ってくると、にんまりと可愛らしくない笑みを浮かべる神楽が出てきた。

「んだよ、気持ちわりぃ」と銀時が聞けば、
神楽は満面の笑みでこう答えたのであった。


の声、聞いちゃったアル」







=しつけの基本はご褒美とご褒美=







「本当?!神楽ちゃん!」
「嘘は言わないネ」
「コイツ・・・喋れたのか」

定春にもたれるようにしてソファに座るを見る。
喉が悪いとかで声が出ない体質なのではと薄々心配していた銀時はほっとした。
新八が僅かに興奮した声で「どんな声だった?」と尋ねる。

「むちゃくちゃ綺麗な声だったネ!この世界で私が一番可愛い声だとしたら、確実にNo.2を名乗れるくらいの美声だったヨ!」
「へええ、そりゃぁ大層ガキっぽい声だったんだろーな」
「未だに触らせてすらもらえないヤツにはまだまだ先、夢のまた夢の話アルけどなァ」

神楽の台詞には流石の銀時もカチンと来た。
そう、そうなのだ。
銀時はいまだにに触らせてもらえない。

「そ、そんなことねーもんね!銀さんだってこの前触ったし!えっと、口を!」
「それ触った言わないネ、噛みつかれた言うアル。ブゥァカめ!!」
「銀さんだってそろそろ触れるからね!」

そう言ってを撫でようとすれば、パシンとその手は払われた。神楽が腹を抱えて爆笑する。

「ぎゃははははははは!銀ちゃん嫌われてるアル!」
「ばっ!ほら、今!手ェ触った、触っただろ!」
「大人げないですよ、銀さん」

銀時は悔しそうに社長椅子に座った。新八が入れてくれたお茶をすする。
続いて神楽とのためにオレンジジュースを入れて持ってきた新八は、ふとある事に気付いた。


「あれ、ちゃんさっきから銀さんばっかり見てません?」
「え?」

そう言えば銀時も感じていた。
帰って来た瞬間、定春にもたれていた体をばっと捻り、まるで何かを期待するかのようなまなざしを銀時に向けてきたのだ。

「え、俺なんか顔についてる?」
「ついてませんけど・・」

銀時は疑問に思ったが、しばらくすると何かをあきらめたかのようには銀時を見なくなった。それはそれで寂しかったが。
神楽に抱きつかれたり、定春を撫でたり、新八とじゃんけんをしたりして遊んでいた。



しかし、似たようなことは次の日も、その次の日にも起こった。
そして今日も。迷子の猫探しの仕事で、必死に捕まえた猫を飼い主に無事送り届け万事屋に帰って来ると、ソファに座っていたは、銀時たちが帰って来た音に振り替えった、が。
その目は新八でも神楽でもなく、間違いなく銀時に注がれている。
今も、「ただいま〜」なんて神楽に抱きつかれて、少々困った顔をしながらも、ちらちらと銀時を窺っている。

流石に銀時も考えた。この、喋らない少女は自分に何を期待しているのか。
そこでふと推理の神が下りてきた。
この少女が銀時を注意深く見詰めるときは、いつも銀時が外から帰ってきた直後。
つまりは、銀時が外である事をしてきていないかと期待しているのだ。
それは・・・・そこまで考えて、一つだけ思い当たる節が見つかり、銀時は思わず頬を緩めた。

まさか。


「あーあーっと。そう言えば今日月曜じゃねーか。コンビニでジャンプでも買ってこよーかなァ」

そう言って立ち上がれば、はあからさまにぴくんと反応した。神楽に抱きつかれたまま、ぐるんと銀時を見る。
その反応を見て、銀時はにやりと口角を上げた。
こいつは間違いない。

これでもかというくらい口元を釣り上げて、銀時はに言った。「待ってろよ」と。
その言葉にもぴくぴくんとは反応を示し、銀時は思わず笑いそうになる。
神楽と新八が頭に?を浮かべる中、銀時は財布を片手に万事屋を飛び出していった。


10分もたたないうちに銀時は帰って来た。
「ただいまァ〜」と居間へののれんをくぐった瞬間。

が銀時に飛びついた。

正確には、銀時の目の前で、ちょこんと気をつけをして立っている状態だ。
それまでと遊んでいた神楽は開いた口がふさがらないまま、ただ呆然と見ていることしかできない。
神楽とが遊んでいる様子をほほえましく見ていた新八も、目を丸くして事の行く末を見守った。

銀時の手にはジャンプはなく、僅かに膨らんだコンビニの袋。
眼の下にクマを作り、何の光も移さないその瞳が僅かに輝いているように見えて、銀時は必死にニヤけまいとした。

ごそごそとコンビニの袋を漁れば、ころりと出てきた小さな四角い物体。
そう、先日気まぐれでやったこの苺チョコレートを、この娘は大層気に入ったのだろう。
だから外から帰ってくる銀時を見る度、僅かに期待をしていたのだ。

思った通り、見覚えのあるピンク色のパッケージに、は眼を大きく開いた。
「欲しい?」と言えばこくこくと頷き、ついに我慢できなくなった銀時はくすくす笑いながらフィルムをはがしてやる。

「ホレ、あーんしな」

大きく開けられた口の中にチョコレートを放り込んでやれば、はそれはそれは嬉しそうにもぐもぐと食べ始めた。
神楽と新八は瞬きすることしかできない。


「・・もう一個あるんだけど」


にやけすぎて口角をひくひくさせながら銀時が言うと、んばッ!とは勢いよく顔を上げた。
彼女の手はすでに気をつけではなく、腹の前で握られている。

かわいい!かわいい!!

自分の行動一つ一つにおおきくリアクションするに、銀時はもう頬の筋肉を緩ませることしかできなかった。

「・・・食べる?」

は大きくうなずいた。
銀時は再びフィルムをはがしてやり、今度は親指と人差し指でつまんでの口元に持っていく。

「指は食うんじゃねーぞ」

そう言えばは銀時の指をかまないよう気をつけながら、パクリとチョコレートだけ口に含んだ。
もぐもぐとおいしそうに口を動かす彼女の頭を、がしがしと撫でてやる。


銀時はどうだ見たかといった顔で新八と神楽を見降ろした。


これでもう、は銀時の手を払ったりはしないだろう。









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