はい、どーも。銀さんでーす。


最近神楽がきもいです。








=ネるコはそだつ=







久しぶりに朝帰り。
昼過ぎまでぐっすり寝て起きていけば、居間にはソファーに座ったと、その髪を櫛でとく神楽がいた。

じつは、は神楽よりも身長が高い。
最初拾われてきた時は銀時も幼いガキだと思っていたが、実際のところそこまで幼くはなく、神楽や新八と同じような年だ。
そんな自分よりも背の高いをソファーに座らせ、まるで妹を世話するかのように神楽は嬉しそうにその髪をとかしてやっていた。

「あ、銀ちゃん。おはよーアル!!でへへ」
「はいはいおはよーさん。でへへじゃねーよ。何にやけてんの?気持ちわりー」
「昨日の夜もいっぱいとお話ししたアル!羨ましいダロ!」

そう言って神楽はとかしていた手をやめ、に抱きついた。
まったく、どっちが妹なんだかわかりゃしない。
銀時は渇いたのどを潤そうと台所でコップに水を注ぎ、それを持って再び居間に戻ってくる。


は、神楽には言葉を発するようにまでなっていた。
もちろん銀時や新八はまだの声すら聞いたことがない。
神楽とも会話するのは二人っきりの時だけで、周りに他の人間の気配があると決して喋らないそうだ。
何度か盗み聴きをしようと試みたが、ことごとく失敗した。

神楽の話によるとだが、の声はそれはそれは美しい声なのだそうだ。
まるで鈴の音が響くような、なんて珍しく洒落た例えを神楽は使っていた。
銀時もぜひ聞いてみたいと思うが、きっとそれはもうちょっと後の話。
何せ神楽はが来てから物凄く献身的に世話を焼いていたし、何もないときはいつも一緒にいた。
きっとその初期段階での思い入れの差だこれは。

最初でさえ銀時も見知らぬガキに興味などなかったが、今では神楽や新八に負けず劣らずを可愛がっていた。

「ほーそりゃよかったな。何話したんだ」
が銀ちゃんの事好きって言ってたアル!」
「ブフゥ!!!!!」

銀時は口に含んだ水を盛大に噴き出した。
は?は?どういうこと?どんな会話?!

「新八の事も好きって言ってたネ!定春も。万事屋の皆大好きって言ってたアル!」
「あー・・そういうことね・・」

銀時は袖で口をぬぐいながらほほ笑んだ。なんだ。神楽ばかりに懐いていると思いきや、ちゃんと新八や銀時にも着実に心を開いてきているのだ。
そして、それを神楽が心から喜んでいることも、銀時はほほえましかった。
自分の大切な人を好きになってくれて、悪い気はしないのだろう。


「そうネ!今度4人で散歩に行くアル!」
が嫌がるんじゃねーの?」
「私が説得するアル!」

そう言いながら神楽はから離れ、よっ、とソファーから飛び降りた。

「定春と新八の家に遊びに行ってくるヨ!今日はのために一緒に苺プリン作る約束してるネ!!」
「うおーマジか!銀さんの分もよろしく!!」
「身の程知らずが。あくまでついでネ。そのことを決して忘れるなよ苺テンパ」
「何だ苺テンパって!!」
「きゃほー!行って来まーす!」

定春と一緒に飛び跳ねながら万事屋を飛び出していく。
そうか、神楽はが一人ぼっちにならないように銀時が起きて来るのを待っていたわけだ。
ちょっと悪ぃことしちまったな、と頭をかけば、ソファに座ったままこちらを眺めると目が合った。

大きな目。
その下の大きなくまさえなければ、は整った顔立ちのかわいらしい女の子なのだろうが。
・・・万事屋に来て1カ月は経とうというのに、その深いくまと光を移さない瞳だけははなかなか治らなかった。



「・・・眠れねーの?」

ふと思ったことが無意識に口を付いて出てしまい、銀時はしまった、とを見て・・・驚いた。
暗い瞳をわずかに見開いて、も驚いた顔をしていたからだ。

図星?

こいつ、眠れてなかったのか。

銀時は神楽の言葉を思い出す。神楽はもちろん銀時も新八も定春も、万事屋の皆が好き。
そんな奴らの中ででも、この少女はぐっすりと眠ることができなかったというのか。
神楽に言った事が嘘だったのか、または何かに脅えて眠れないのか、銀時には分からない。
は先ほどの驚いた顔は引っ込めて、いつものように光を移さない瞳で、ぼーっと銀時を見ていた。

まったく、ガキのくせに。銀時は短くため息を吐いた。
」そう呼べばは僅かに反応する。
銀時はの向かいのソファの真ん中に腰かけ、膝を叩いた。


「はい、ここ来なさい」


はその言葉に僅かに眉間にしわを寄せたが、銀時が何度かぱんぱんと膝を叩くと観念したようにその場を立ち上がった。
そう、この娘はこの一カ月で自分の言うこともここまで聞いてくれるようになったのだ。
少々困った顔をしながらも、ちょこんと銀時の膝の上に座ったを、銀時は後ろからガバッと抱きしめた。

「!!!」
「だーめ。大人しくしなさい」

びっくりして身じろぎするを、銀時はぎゅっと抱きしめ、そのままソファに横になった。
」と再び呼べば、身じろぎしながらぐるりとこちらに顔を向ける。
困った表情を浮かべるその瞳をそらさず見つめて、銀時は言ってやった。


寝ろ。

だれも襲ってなんてこねーよ。


ぴた・・と身じろぎが止んだ。の目はまっすぐ銀時を見つめている。
上になった方の手を緩め頭を撫でてやれば、はしばらく戸惑った後にもぞもぞと体をこちらへ向け、銀時の胸に顔を押し付けた。
ぎゅうとの手が銀時の着物を掴む。

「ヘッ、心配しなくてもどこにもいかねーっつーの」

ぎゅっと抱きしめ返してやり、そのまましばらく頭を撫でてやっていれば、銀時の胸からすうすうと寝息が聞こえてきた。

銀時は僅かに見えるのおでこを人差し指でこつん、とつついた。


ガキはせめて夜くらいぐっすり寝るもんだ。寝る子は育つ!









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