なんだありゃ。
見回りとは名ばかりで、ただただなんとなく街をぶらついていた新撰組一番体隊長は、目を疑った。
というか、二度見した。
・・・なんだありゃ?!
=猫にもリードつける人いるよね、たまに=
「銀ちゃん、新八ィ!!やったネ!が散歩行くって言ったアル!」
「おーついにか」
「頑張ったね神楽ちゃん!」
銀時と新八に感心の目で見られ、神楽は嬉しそうにほほを染めた。
は万事屋に来て一ヶ月は経つ。しかし未だに外に出たことはなかった。
最初の方なんて自分の部屋である押し入れの中からすら出てこなかった、が、神楽の熱心な世話、新八の優しい対応、銀時の餌づけなどで少しずつ心を開いていき、今では万事屋の中でなら不自由なく過ごすことができるまでになったのだ。
それでも。
を一人にさせるのは気が退けたが、いやいやと首を振るを無理やり一緒に外に連れ出せるわけもなく、留守番させるのが多いのが現状。
一緒に外を出歩けるようになれば、簡単な仕事なら一緒に連れて行くことも出来るようになるし、一人にさせてしまう時間も減るだろう。
それに。
銀時も新八も神楽も、年頃の娘が家から一歩も出ずに引きこもっているのはあまりよろしくないと思っていたのだ。
あれほど外に出たくないと言っていた(正確にいえばジェスチャーしていた)をどうやったのか神楽は旨く説得したのだ。銀時と新八と自分、3人一緒にという条件付きでの初めてのお散歩。
この日のために、のために新しく安物のサンダルまで買ってきてやってあった。
満面の笑みで神楽はと手をつなぎ、万事屋の玄関を開けた。
しかし、
ガタン
「!!!!」
「え?!!?―――!」
万事屋からの階段を下りきる前に、は少しの物音にびっくりして、神楽の手をはなし光の速さで飛んで行ってしまった。
万事屋全精力をかけて探すこと5分。は路地裏のゴミ箱の陰に隠れていたところを発見された。
「こりゃぁ・・・ちょっと普通に散歩するの難しいんじゃねーの」
銀時がちょいちょいと手招きすれば、はそろそろとゴミ箱の陰から出てきて、銀時の腰にしがみついた。飛んできた神楽がに抱きつく。
銀時は盛大に溜息をついた。
ここで冒頭に戻るわけだが。
真撰組一番体隊長沖田総悟は、今現在自分の目の前で繰り広げられている光景に違和感しか感じることができなかった。
彼の目の前には万事屋が仲良く散歩をしているわけだが・・・。一人見なれない人物がいる。
水色のチャイナ服に肩より少し長めの黒髪。大きな目の下にはこれまた大きなくまのある一人の少女。
別にそれはいい。万事屋は商売上色々な人物と関わりがあるし、自分知らない人間と行動を共にしている時があったっておかしくもなんともない。
でも。
だがしかし。
その見なれない少女・・・総悟よりも少し年下くらいであろうか・・・の首には真っ赤な首輪が装着されており、
その首輪から伸びたリードは銀髪の男の手まで繋がっていた。
・・・え?
・・・旦那?
そりゃ確かに、万事屋の旦那は自分と同じく多少のSッ気があるところは知っていたが、イヤでもそれにしても。
旦那アンタ'も'こういうプレイがお好みだったんですかぃ?というか、これでは自分とキャラがかぶってしまわないか?
それ以前にそれ以前に、オイ眼鏡、お前ツッコミ担当じゃなかったのか。何故ツッコミを入れない。何ほほえましく見守ってんだ。
チャイナはチャイナで首輪やリードにお構いなしで少女に抱きつくものだから、時折リードに引っ張られてぐへ、と少女の喉が詰まっている。
・・・え・・これ俺がツッコむの・・?
面倒臭ぇ・・と思いながらも、つい今まで面白いことねェかなァなんてぶらついていた自分にとってこれほど面白そうな事はなくて。
ていうか是非自分も入っていきたい。
そんでもって旦那ぁ、リードは紐より鎖の方が何かあったときに便利ですぜ!なんて思いながら、総悟は彼らの方へと足を向けたのだった。
「なるほどねィ・・・そんでその烏喰ってたガキを一カ月以上万事屋に軟禁していると・・」
「まてまてまて。軟禁ってそんな人聞きの悪いこと言うなァ!」
「そうネ!はもう立派な家族アル!!」
「へぇアンタん家じゃ家族に首輪付けるのかぃ」
「アンタにだけは言われたくないんですけどォォ!!」
ぎゃぁぎゃぁと騒ぐ万事屋と総悟の隣では、が、
明らかに総悟に対して毛を逆立てていた。
「へえーって言うのかぃアンタ。ホレ、俺の事ご主人様って言ってみなせぇ」
「いきなり何言ってんのこの子ォォオ!!?」
ぐいとリードの付け根を引っ張られて総悟の目線に合わせられる。
は何も言わずにぺしんとその手を払いのけた。
「い、ちゃん!!」
「・・・・・へぇ」
新八が慌てた声を出すがもう遅い。
総悟の顔がみるみる歪んでいく。へえ。ほーお。いいねぇ。
・・・・燃える展開きたこれ。
「どうやら躾がなってねェみてぇで」
「ちょ、ちょっと沖田さん!!」
眼鏡の声を無視して、総悟は眼を伏せながら腰にある刀をカチンと鳴らした。
どっちが上か分からせるには、ちぃとばかし怖い目に合わせるのが一番効果的だ。
くっくっく、さぁこの強気な女はこれからどんな顔に変化するのだろうか。いや、させてやろうか。
期待に胸を膨らませ、ゆっくりと開いた彼の目に飛び込んできたものは。
触れるか触れないかほど近くにあるの顔だった。
「・・え」
ええええ―――??!!
その場にいた全員が心の中で叫び声をあげた。ええええ??!
は総悟が刀に手をかけたと思いきや、一瞬の隙を突いて総悟に飛びかかり、そのまま張り倒したのだ。
可愛げはないが大人しそうなこの少女が、まさか襲ってくるとは思ってもいなかった総悟は避けることも出来ずそのまま押し倒され、マウントポジションに陣取ったは容赦なく拳を入れていく・・・・。
・・が、流石に総悟も油断したのは最初の一発のみ。振り下ろされる拳を軽々避けての胸元まで腕が伸びていき、次の瞬間には上下が逆になっていた。
うつぶせに地面にを押し付け、両手を背中の後ろで括る。
な、何だこの女。
じたばたと暴れるものだから少し強めに押しつければ、びく、と体が強張った。
あり?悲鳴の一つでもあげるかと思えば、なかなか我慢強い。それとも、こいつ声が出ないのか?
「やめるネ馬鹿ドS!!!をはなせェェ!!」
神楽が怒り心頭で怒鳴り散らす。・・いやさっきアンタ俺が押し倒された時、「いけー!やっちまえー!!」とか言ってなかったか?
仕方なく力を緩めると飛びずさるようには距離を取り、次の攻撃の機会をうかがっていた。
おいおい、痛い目どころか怪我しねぇとわかんねェのかこの女は?
それならそれで力ずくで分からせてやらぁ、と意気込む総悟の後ろで、銀時が握った片手を上にあげて叫んだ。
「こら!いい加減にしなさい。チョコ食いたくねーのォ!?」
「!!!」
総悟は一瞬、外だというのにほとんどの光を反射せずに吸収しているようなその瞳が、僅かに輝くのを見た。
次の瞬間にはもう目の前にははいなくて、振り向けば銀時の目の前で彼を見上げている。
その後ろ姿にぶんぶんと振られる尻尾が見えた気がして、総悟は眼をこすった。
ほ、ほう・・流石は旦那。
よ・・・よくしつけられてやがる。
「・・・総悟・・お前どうしたそれ」
真撰組副長はすれ違った総悟の顔を見て目を丸くした。
「・・・猫に引っかかれやした」
彼の顔には上から下へ、何かで引っかかれたような跡があった。
ちくしょうあの女、次あったら覚えてろよ!
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