その日、神楽は女友達とピクニックだか何だかで朝早く出かけていき、新八は新八でお通ちゃんのライブかあるからと鼻息荒く出て行った。
定春はいない・・ということは、神楽が連れて行ったのだろうか?一緒に行った女友達に噛みついていなければいいのだが。


銀時は居間の社長室に腰かけ、先週のジャンプをぺらぺらとめくっていた。
明日はジャンプの発売日。あーはやく明日にならねーかなァ。







=自分ちのペットの声は何故か聞きわけが付く=








くいくい。
ふと袖が引っ張られる感覚がして横を向けば、が見上げていた。

「どしたァ。チョコ食うか」
「・・・・」

ふるふると首を振る。珍しい。あのがチョコにつられないなんて。
銀時は読まずにただめくっていただけのジャンプを机の上に置いて、に向き直った。
「なんかあったのか?」そんなことを聞けば、は銀時の袖をぎゅうとつかんだままうつむいてしまうのであった。

なんだ?なんだ?
腹が空いているわけじゃないのなら、喉が渇いたのか?今日は神楽がいないから寂しいのか?それとも気分が悪いのか?
この娘は神楽にしか言葉を発しない。だから銀時や新八は彼女の行動や表情、ジェスチャーなどで言いたいことを読み取らなければならない。
それもこの一ヶ月で随分慣れたものであったのだが、いかんせんこんなは初めてだ。
自分も言葉をはなさないなりに身振り手振りではっきりと自分の気持ちを伝えようとする気が、いつものには少なからずあった。
こんなにはっきりしないは随分見たことがなくて、銀時は首をかしげた。

もし、体調が悪いのならそれこそ病院にでも引きずって行った方がいいのかもしれない。

そんなことを想っていると、不意にの頭が動いた。
ゆっくりゆっくりと顔を上げ、銀時を見上げる形で止まる。


「・・・・・ぎん、ちゃん・・」




・・・・・・・・え。
しゃ、しゃべっおまっ今いま、え?え?いま銀ちゃんってうわおま、も、もっ、くっ、

クララが喋ったアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!


銀時は心の中で絶叫を上げた。クララって誰だ。

しゃべった!しゃべった!いまぎんちゃんって言った!言ったよ!?
俺聞いたもん!!ぎんちゃんって、ぎんちゃんって言った!!

がしぃ!!と不覚にも少し強めの力での肩を掴み、震える声で言う。

「も、も、もっかい言ってみ・・?」
「・・・・・・・ぎん、ちゃん・・」

うわああああああああああああ!!!
嬉しい、嬉しい!!嬉しすぎて俺もう死にそう。

の声は、神楽の言っていたとおり、鈴の音が響くというたとえがぴったり当てはまるような。
小さいがよく響く、それはそれは綺麗な声だった。

ぎゅうと引っ張られる袖に、危うく別世界へ飛び込まんとしていた銀時の精神は引き戻される。
そうだった。
声を聞けたことには死ぬほどうれしいが、この娘は自分に何かを伝えようとしている最中だったのだ。

「悪ぃ悪ぃ、どうした?」
「・・・・おひ、るね・・」

おひるね?お昼寝?
そこで銀時はハッとする。そう言えばこの少女はどんな理由かは定かではないが、何かに脅えて夜もまともに寝られないのだ。
前銀時が無理やりホールドして一緒に横になり頭を撫でてやった時はすやすやと寝息を立てて寝ていたが。

まさか、あれからもまだ眠れてないのか?

銀時はの顔を見た。相変わらずの大きなくまに、光を移さない虚ろな瞳。
その目が、この手と一緒で自分にすがっているような錯覚を受け、銀時はの頭をそっと撫でてやった。

夜、寝れねーのか。

そう聞けばはこく、と頷く。

銀さんが一緒にお昼寝してやれば寝れんの?

再びこく、と頷くの頬を、銀時は両手で包みこんだ。


「それじゃァ仕方ねーな」
「!!」
「『銀ちゃんと一緒にお昼寝したい』って言えたらお昼寝してやるよ」
「・・ぎんちゃんといっしょに、おひるね、したい」

はい、よく言えました。再び聞けたの声に満足げにほほ笑みながら、銀時はの頭をわしわしとかき回した。





くーくーと寝息を立てながら自分の隣で眠るえんじゅを眺めながら、銀時は考えた。
一体彼女は何者で、どんな生き方をしてきたんだろう。
人目を忍び、他人からの飯も受け付けず、夜も安心して眠れない。

しかし。

いま現在自分の胸に顔を押し付け安心しきったように寝息を立てるに、銀時のほほは緩む。



今日の晩は、新八に大自慢大会が繰り広げられそうだ。









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