雲ひとつない青空。
ここ万事屋では、
じゅーじゅーと新八がベーコンを焼く音と、
はぐはぐと神楽がやった餌を定春が頬張る音と、
たったったったったったったったっ・・・・・・
ばふっ!
「ぎーんちゃーあーん!!朝だよ!起きて起きて!!」
鈴の音の響くような声。
=子供は布団、猫は膝の上=
「おめーはもうちょっと優しく起こせ」
「見て、見て、これね、しんぱちがやってくれたの!」
「おーいーんじゃねーの。ガキっぽくて」
えへへ、と鈴の音の響くような透き通る声を揺らして、くるりと少女が一回転して見せた。
その髪は頭の横で二つに束ねてあり、肩甲骨くらいまである髪は今日はツインテールになって揺れている。
銀時はふっとほほ笑んで少女・・・の頭を、くしゃりとなでてやった。
「そーいえばお前今日が初出勤だっけか?だからそんなにはしゃいでんの」
「うんっ!」
「はは、よくゆーぜ。最初のころは押し入れからすら一歩も出たくねーっつってたのによ」
むかしむかし、地球から遠く離れた星に、とっても綺麗な綺麗な声を持つ獣の天人が暮らしていました。
しかし、その美声に魅了された他の星の天人により、彼らは狩猟され、絶滅させられてしまったのです。
綺麗な声を持つ天人の遺伝子は改良され、人間と配交され・・・その美しい声を聞かせるためだけの「かごの中の鳥」として、研究されていました。
オスは子守唄の機械。メスは繁殖の道具。彼女は、一生檻の中から逃れられない運命だった。
のそのそと起き上って来た銀時と共に居間に行けば、既に神楽と新八が席についていた。
机の上で白米とみそ汁が美味しそうに湯気を立てている。
「わたし、昨日は緊張しちゃって、眠れなかった!」
半人半天人の少女が多少興奮した様子で息を吐く。鈴の音が響くような声で。
それを見た新八はくすりと笑い、神楽もにっ、と歯を見せて笑った。
「ほれ、良いからメシ食え。置いてくぞ」
隣に座って早くも米を書き込みながら、銀時が彼女の頭を小突く。
そんな彼の口元も、柔らかく緩んでいた。
が万事屋に来て半年。
本日は、万事屋の仕事場に初めてが付いてくる日なのだ。
希少種族と言う事で、一部のコレクターや研究熱心な天人からは追われる身。
ひょんなことから神楽に拾われ引きずって来られた万事屋で、は最初の頃は喋ることはおろか押し入れの中から出てすら来なかった。
それから徐々に心を開いて行って、今では万事屋の中でなら自由に会話できる。外ではあまりしゃべらないが。
そんな彼女が今日は初仕事。
内容からして、彼女が一番適任なことこの上ないのだ。
依頼内容は、「子供たちのお守り」
孤児たちを引取り面倒を見ている寺の主人が寺を開けることになり、その間の面倒を万事屋に依頼してきた。
ガキは眠らせるに限る。
の歌声を聴けば、きっとどんな悪餓鬼でも幸せな夢の中にダイブだろう。
楽したい・・・とかじゃなく、銀時もぶっちゃけこの手の依頼を心待ちにしていたのだ。
万事屋銀ちゃんの依頼内容は幅広い。
危険な仕事は無理でも、こういう安全で簡単な仕事からなら少しずつ。
いつもいつも留守番では可哀そうだもの。家族なのだから、一緒にいたい。
「ホラ、何してるネ銀ちゃん!早く食べて、仕事行くアル!」
こちらも可愛がっている妹の初出陣と言う事で張り切り気味の神楽がエヘンと鼻を鳴らす。
そのほっぺたにご飯粒なんてくっ付けながら。
息子の入学式に浮かれるかーちゃんかテメーは、なんて心の中で呟きつつも、銀時はふっとほほ笑んだ。
実際自分も似たような気分なので口には出せないが。
ご飯粒を付けたまま、隣のに笑いかける神楽の手には炊飯ジャー。
・・・・・・・・炊飯ジャー。
・・・・・・・。
にっこりほほ笑んだ顔はそのままに、
額に青筋を立てて、銀時は叫んだ。
「だから俺の分がなくなるからちゃんと茶碗によそって食えって、いつも言ってんだろーがァァアアアア!!」
元気いっぱい走り回って遊んで、
お腹いっぱいご飯を食べても、
眠くならずに悪戯をしでかすガキはどこの団体にも一人はいるもんだ。
「あー!うるせーよ大人しくしろこの餓鬼。皆とお昼寝しなさい」
「やーだね!白髪頭!もじゃもじゃ!」
「天然ぱーま!」
「ほほーう、天パを馬鹿にするかねキミ」
ちゃん、やっておしまいなさい。
にやりと笑みを浮かべて、銀時はを見た。
この時のために連れてきた最終兵器。
今こそその出番の時は来たのだ。
こくり、とは頷いて、しばらくもじもじと緊張した末、すぅぅっ、と息を吸い込んだ。
「〜〜〜♪」
その様子を不思議に思って眺めていた子供たちは・・・・・あらがうすべもなく、ころりと眠りに落ちることになる。
午前中一緒に走り回って疲れた新八や神楽も、最後の子が眠りにつくとこれで安心と横になった。
そこに降り注ぐの子守唄。
「銀さぁん・・・僕もうちょっとやばいっす・・」
「おー寝とけ寝とけ。神楽は断りもなく既に夢の中だ」
「んじゃぁ、僕もお言葉に甘えて・・」
「おい、もうちっと音量下げろ。俺まで寝ちまう」
木漏れ日の中、鈴の音の響くような歌声がくすり、と跳ねた。
「・・・すげーや」
寺の縁側、銀時の膝の上で歌っていた歌声が止まる。
うとうとしかけていた銀時はピクリと反応して顔を上げた。
そこにいたのは、見なれた黒い隊服。色素の薄い栗色の髪。
「あれぇ、こんなトコで会うなんて奇遇じゃん?沖田君」
「さっきまで聞こえてた歌ってコイツのですかィ。ありゃァ旦那らが気持ちよく寝こけてた気持ちも分かりまさァ」
「まァね。で?こんな所に何の用?和尚なら会合か何かで出てるよ」
「なーんだガキ共全員寝てんじゃねーか。折角土産持って来てやったのに」
そう言って勝手に縁側に腰かけた総悟はどさりとビニール袋を置いた。
その中に見えたのはんまい棒やら飴やらガムやら。
にやり、と銀時はほほ笑んで総悟を指差した。
「ナニナニ、子供たちに菓子もってきてやってんの?らしくねー。意外とやさしいのね沖田君」
「ここの住職とちょっとした知り合いで、たまに顔出してるだけでさぁ」
「あれ」
そう言って銀時は自分の背中を伺い見た。
銀時の背中にしがみついて、半分だけ顔をのぞかせ総悟を睨みつけているのは、先ほどまで銀時の膝の上で歌っていたである。
「何でィ隠れるこたねーだろ。もっかい歌ってみなせーよ」
「・・・・」
「何か喋りなせェ」
「ぷくく、嫌われてんのね沖田君」
むぅ、と総悟はしかめっ面を作って、子供のようにほっぺたを膨らませた。
なんでぃなんでぃ。退院したら歌声聞かせてくれる約束だったじゃねーか。
ぼそりとそんなことを言えば、隠れていたは一瞬目を大きく開いて、しぶしぶ銀時の影から出てきた。
その顔は酷く渋い表情をしている。
疑問に思っていると、ぺたぺたとこちらに寄って来たに耳打ちされた。
「 」
まだ外で声を出すことが躊躇われるのか、耳打ちですら小さくか細い声。
しかしその言葉に、今度は総悟が大きな目を更にまん丸にする番だった。
がば、と横を向けば、は既に離れていて、銀時の腹に抱きついて顔をうずめている。
ちらりと視線を上にずらせば、にたづいている銀時と目が合った。
にやにやと、まるで娘が総悟に何と言ったか分かっているかのように。が今どんな気持ちであるのか、ばっちり見透かしているかのように。
「まァ、嫌われても仕方ねーよなァ」
「退院後一週間くれーは、毎日お前のこと待ってたみてーだったしィ?」
「うぐ」
「ニュース見てると結構仕事の方大変だったみたいじゃん?ま、オツカレサマ」
「・・・・」
(待ってたのに、聞きにこないほーが悪い)
総悟は眉間にしわを寄せながら、方耳をてのひらで押えた。
確かに、退院したら聞きに行こうとしていたところに丁度ぶつかった仕事の山。
全部まじめにやったわけではなかったけれど。
押さえた耳がじんわりと熱を持っているかのよう。
久しぶりに聞いた。
鈴の音の響くような、きれーで透明で、それでいて心に響く、小さな声。
待ってた。総悟を?
刻んでいた眉間の皺が深くなる。
むすっとした表情でごまかしてはいるが、嬉しくてたまらない。
心がすっごくくすぐったい。
「この埋め合わせはァ・・・・そーだなあ、な、」
「・・・・」
「抹茶チョコはあんま食う機会ねーもんなァ。10個でどーだ」
「・・ん」
「銀さんへの苺チョコも忘れないよーに」
このテンパうぜえ。
そう思いつつも、明日にでも最寄りのコンビニのチョコを買占めようかとか思う、サディスティック星の王子様であった。
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始まりました銀すぷ2。総悟が限りなく出張って来る銀ちゃんお相手になると思います多分。