土方の携帯が(二人はプリキュア的な音楽を振りまきながら)震えだしたのは、丁度煙草を地面に押し付けて消したのと同時だった。
ディスプレイには「沖田総悟」の文字。
土方は眉をひそめる。アレが自分に電話など珍しい。
通話ボタンを押したところで、遠くの方で爆発音が響いた。
**ペットボトルのキラキラはあんまり効果がない**
人通りの少ない道を猛スピードでパトカーが走る。
向かう先の目的地からはもくもくと鼠色の煙が上がっていた。
ちっ、
土方は舌打ちを打って、嫌な予感を振り払うかのようにハンドルを握る手に力を込めた。
『はやく、こい』
それだけ言ったきり、電話の向こうは何も言わなくなった。
どさくさに紛れて後部座席に乗り込んできた銀時には何も言わず、全力でアクセルを踏む。
一瞬だけ最悪のパターンが頭をよぎる。
ビルの一部が爆発して煙を上げていた。
恐らくバズーカ。そしてそれを打ったのは総悟だ。崩れ方から計算して撃ったと思われる裏側へと回る。
「ふ、副長!」山崎の焦った声が響いてそちらを振り向いた土方はさーっと血の気が引いた。
ビルとビルの隙間の影になった所に置かれた大きなポリバケツ。そこからにゅっと飛び出ていたのは人の腕。間違えようもない黒い隊服。
慌てて駆け寄る。中に詰まっていたのはぐったりと動かなくなった、一番隊隊長、沖田総悟だった。
「そ、総悟ォォーーーーー!!オイ!しっかりしろ!死ぬな!!」
だらりと重くなった体を抱きあげれば、首元に、先のとがった針のようなもので刺された痕が目に入る。
何か変な薬でも打たれたんじゃねェだろうな?!
「副長!人工呼吸を!」
「ヨシ!ん・・?い、イヤ断る!実は生きてました〜みたいなオチで舌噛み切られんのはゴメンだ!山崎テメェがやれ」
「エェーーーー?!俺も嫌です!局長!!」
「ええっ?!俺?!・・・・そ、そんな・・・・心の準備がァ・・」
「言ってる場合か!」
ガチリ、と音がして土方が視線を落とせば、目の前の抜き身の白刃に映った自分と目があった。
「残念ながら生きてるんで、結構でさァ・・・きめぇ」
「なーんだァ・・・ヨカッタ・・」
「攫われた・・・?」
総悟の話を聞いて顔色を変えたのは銀時だった。
「だいたい何があったのかは分かった。が、なんでゴミ箱ん中にいんだよ」
「道端に放っておいたら浪士たちの格好の的だろうっつーアレの気遣いでさ」
「そいつらはどこに行ったか分かるか?」
「・・・・分かりません」
総悟は近藤に支えてもらいながら銀時に向き直る。まだ体は完全には力が入らないらしい。
俺が付いていながら、申し訳ありませんでした。
そんなしおらしい態度に、銀時は喉まで出かかっていた言葉を飲み込む。
そもそもひとりで外を出歩かせてしまったのは自分のせいだ。
「『落札する予定だった奴』の所へ行くと、確かにそう言ったんだな?」
しばらくの間続いた沈黙を破ったのは、土方だった。
「へい」総悟の答えに、土方は口元に手を当てて考え出す。
一つの結論に至った土方の表情に、待ちきれなくなった銀時が喰い付いた。
「なんか、分かったのか?」
「『落札する予定だった奴』は分からねェが、もう一匹のアレを落札した奴なら調べがついてる。さっきの紙にも乗ってただろ」
その人物は、宇宙船を飛ばしても一カ月近くかかるほど遠ーくの星に住んでいる天人で、その声を大層気に入ったらしい。
オークションに出された「かごの鳥」は二匹。オスとメス。
大きな借金を作って落札したその二匹から繁殖させ、金を返すだけでなくひと儲けしようとしたのだという。
「だが、そいつはいま地球にはいねェはずなんだ」
土方の言葉に、銀時は首をかしげた。
重要マークされているその人物は自分の星から今出られない状況にあるという。
「自分が迎えに行けない以上、運び屋を雇った可能性が高い」
山崎がはっと声を上げた。それって、まさか。
「前々からその星はアイツらとコネクトがあるんじゃねェかって黒いうわさが立ってたんだ・・・急に江戸に現れたって、可笑しいと思ってたんだよ」
「オイ、アイツらって誰だよ」
「旦那、ニュース見てないんですか。指名手配犯が江戸で目撃されたって」
「え、指名手配犯って、さっきの馬鹿じゃねェの」
「違います」
「元々の繋がり、そしてタイミング。・・・恐らく、今回奴らが運び屋として依頼をした相手は」
土方が伏せていた視線を上げ、周りはごくりと喉を鳴らす。
彼の瞳は大きな獲物を見つけた時のオオカミのように、爛々と輝いていた。
「高杉 晋助だ」
「久しぶりだね」
「・・・・」
「何か喋ってよ」
が連れてこられたのは、ホテルのスイートルームだった。
「あ、僕もね、貰われてから名前付けてもらったんだ、『シグ』って。こっちは『ファイ』」
「これからずっと一緒なんだ、仲良くしようよ。ねえ、ファイ」
「ファイ」、と呼ばれたスーツの女性は、カーテンを閉めながら無言で窓の外を眺めている。
「ちょっとごめんね」と言ってと同じくらいの男の子・・・「シグ」は、とてとてと窓際の女性のもとへと駆けていった。
ちょんちょん、とその背中をつっつく。女性は我に返ったかのようにバッ、と振り向いた。
「この人、耳が聞こえないんだ」
だから、歌っても無駄だよ。
そんなことを言いながら、男の子は女の人の手を掴んでこちらに引っ張ってきた。
「自己紹介して」
「ファイと申します。あなた方の世話係を申しつけられてます。どうぞよろしく」
「ねえ、ここは何時に出発だっけ」
「明日の正午です」
「おなか減った。ご飯は?」
「出前でも取りましょうか。何が食べたいですか」
「ねえ、地球の美味しいものって何?」
こちらに向き直る男の子と、女性の「会話」を見ながら、は不思議そうに女性を見上げる。
そんなを見降ろして、ファイ、と名乗る女性はふっとかすかにほほ笑み、隣の男の子の頭を撫でた。
「耳が聞こえなくとも、何を言ってるかくらいは分かります」
なんて面倒臭い名前が出て来るのか。
銀時は頭を抱えた。
脳裏に浮かぶのは影をたたえた怪しい頬笑みを見せる旧友の姿。もう縁は切ったけれども。
アレは馬鹿のくせに賢い。馬鹿のくせに。
土方が口を開いた。
「とにかくあの娘を攫った犯人がはっきりしている以上。取り返す“だけ”なら簡単だ」
その突き止めてある“落札者”の星に先周りでも何でもして、取り戻してこればよいのだ。
しかし。
「それじゃァおせぇんでさ」総悟の言葉に土方が頷く。
落札者の狙いは達「かごの鳥」の種族の繁殖だ。
ただでさえ生まれにくいメスは加えて交配出来る期間が極めて短い。
たとえ一カ月だったとしても、相手にとってはおしい時間のはずだ。つまり、
星へと運ばれる最中に、何をされるか分かったもんじゃない。
「じゃぁどうしろってんだよ。もう地球をたっちまったかもしれねぇのに」
「イヤ、奴等はまだ地球にいる」
「何で言いきれんだよ、出航時間でも分かんの?」
「宇宙船の出航は少なからず目立つもんだ。何らかの混乱に乗じて、でもない限りはな」
「それがどうしたって」
「明日。来てんだよ、おあつらえ向きのテロ予告が。これをどうとらえるか?」
土方の視線を受けて、銀時が黙る。
てっきりそのテロの方が高杉が現れた目的だと思っていたのだが、飛んだ勘違いだ。
「明日の正午。それまでに居場所を掴め」
「よかったんですか副長・・・もっと強力出来たんじゃ・・」
万事屋が去り、屯所へのパトカーの中で山崎が零す。
「アホか」土方はそれを一蹴した。俺達には他にやる事がいっぱいあるっつーの。
「テロが起こるって言うのにそれほっぽり出して他ごと出来るか。やれる情報はやった」
「でも・・」
「ザキ。俺達は市民を守るのが仕事だ。アイツらはアイツらで何とかするだろう」
「・・はい」
「総悟。お前その首の。大丈夫なのか」
運転席の土方のそんな声を聞きながら、総悟は後部座席で外を流れる景色の波を眺めていた。
「変な毒とか受けてねェだろうな」
「大丈夫でさァ。これは、団子の串です」
「は??」
「ちょっと、眠ィです・・」
俺が完全に落ちないように、駆け寄りざまに思いっきり刺して来やがって。
「寝とけ」隣の近藤の言葉に甘えて、総悟はゆっくりと瞼を下ろした。
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ううん・・・オリキャラは、書いてて、すごく、恥ずかしいです。
ごめんなさい。。。