真選組副長・土方十四朗は、火の付いていない煙草をくわえたままじっと地面を見つめ続けていた。
銀髪の男の言葉がいつまでも脳裏に引っかかっている。

『ありえナイ』

現在自分達が相手にしているのは、凶悪なテロリスト。超ド級の危険人物。
隣にたたずむ総悟は、現在自分達が待機している「大江戸センターシティービル」から500m程離れた向かいに建てられている「大江戸プリンスホテル」を気にしながらも土方を伺っている。

何かがおかしい。なんか気持ち悪い。
その何かにたどり着きたいのに、ほんの少し届かない。ヒントはそろっているはずなのに。
元々のテロ予告時間まで15分を切った。
後ろに控える真選組隊員たちは、すでにテロは終息したと肩の力を抜いている。

「結局、高杉は何をしたかったんでしょうね」

はふ、と気の抜けたため息を零しながら、山崎がつぶやく。
「何って、テロだろ。失敗したみてぇだけど」
それに答えたとある隊士は、の誘拐事件の事など全く知らない。だからいたって当たり前の感想だ。

しかし、
土方は山崎とその隊士を振り返った。

「まァまァ、結局客も従業員も全員無事でよかったじゃねェか」

そして、近藤のその言葉で、ばっちーん、と全てが繋がる。
テロリスト高杉晋介は、一体何をしたかったのか。



『「かごの鳥」は二匹・・・大きな借金を作って落札したその二匹から』

『多くの星のセレブ達・・・また天人の主要人物達が』

『「都合のいい奴らめ」』

『ヤツがこんなもんで満足するワケが』

『「爆破が起こったビルから追い出すことになってしまった人を、一時的にあのビルに避難・・」』



――――― 『「もうビルを爆破する必要がなくなったから、じゃないですか」』


爆破する必要が、

『「全員無事でよかった」』

なくなったから?



ま、さか・・・・

「どうしやした」いぶかしげに覗きこむ総悟の視線の先で、土方の顔からさーっと血の気が引いた。







**ちょ、マジそろそろタイトル考えるの限界**







「はい、ここで問題でっす」
「何ですかいきなり」
「拉致った女を連れて逃走中。さて共犯者と宇宙船で落ち合うためにホテルのどこに泊まる?ハイ神楽」
「一番安い部屋!!」
「そうだな。俺たちならな。でもアイツら金持ってんだよごめんなさい良い暮らしをさせてあげられずに。ということで新八」
「入口付近は真選組の隊士達が待機してる、落ち合う場所は恐らく屋上。加えて誘拐して来た女の子は声が特徴的で聞かれたくない。よって!防音もしっかりしている最上階のスイートルーム!」
「やるなお前新八ィ!メガネ刑事!!」

誰が眼鏡デカだ!!
新八のツッコミが響き渡る。
もちろん3人の足の速度は緩まない。

「せーかァーい。つーわけだ、最上階の部屋しらみつぶしに当たれ!」
「「ラージャ!!」」

三人はたがいに頷いて、驚くフロアの従業員を一瞬で横切り、ホテルの階段を踏みしめた。





なんてこった・・・。
ぽとり、加えていた煙草が落ちる。結局この煙草は火をつけないまま使い物にならなくなってしまった。
そんな、まさか。
しかし、そう考えると次々と色々なもののつじつまが合っていく。

「?どうした、トシ?」
こちらを向いて首をかしげる近藤を青い顔で見上げ、土方は何も言えなかった。
ぎゅんぎゅんと頭はものすごい勢いで回転しているのに、否、そちらに集中力を大方持っていかれてしまっているため、言葉が上手く出てこない。
ぱしん、
音を立てて、片方の頬をひりひりと鈍い痛みが襲う。
はっと振り向けば、鋭い眼をした総悟が土方を見つめていた。

「しっかりしやがれ」

土方の様子を見て何か感じ取ったのか、亜麻色の髪の少年は僅かに緊張した面持ちで土方の次の言葉を待つ。
ぽそりと土方がつぶやいた次の瞬間、少年はハッと目を見開き、踵を返して一目散に駆け出した。

「隊長!?」
「総悟ォ!何だ何だ、どうしたトシ?!」
「・・・逆、だ」
「え?」

突然走り去ってしまった総悟に混乱しながら、近藤と山崎が土方を伺い見る。
2人分の視線を受けた土方は、既にしっかりと自分を取り戻していた。

「全隊員に告ぐ」

低く発せられた『鬼の副長モード』のその声に、隊士たちも近藤もすぐさま身構える。
「訳の分からない命令をくだすが、今は時間がない、黙って従ってくれ」
彼の視線ははっきりとそう語っていた。

「今すぐ総員、「大江戸プリンスホテル」へ向かえ」
“テロの予告時間”まで10分と少し。

「爆破されるビルはそっちだ」





何故もっと早くに気が付かなかったのか。
そもそも高杉が破壊の先に求める事は「攘夷」。
「天人」を拒み、それを受け入れる「幕府」を憎む。そんな奴が敵であるはずの他の星のヤツらに協力してやる理由は一つ。
「金」だ。
そして「商売相手」は商売なんて出来ないほどの借金を背負っている。
頼みの綱の稼ぎ道具は繁殖が難しい。それくらい調べれば直ぐに分かる。
大量の黒いコネクトを持つ奴ならば。
大量の黒いコネクト。

・・・・そう、決定的な証拠は掴めないが、幕府の上層部ともヤツは通じている。
それは、分かっていたはずなのに。

いつも動きだしの遅い上層部が奇妙なほどスマートに動き、
丁度いい手頃のホテルを緊急避難場所として“向こうから”提供してくるなんて考えられるだろうか。

尊王攘夷を掲げ天人を恨むヤツが、“無人”のビルを破壊したところで何を満足するというのか。
始末したい各国、宇宙中の主要人物、天人達がそのビルに居たのに、みすみす逃がすような真似をするだろうか。

幕府の考え方に異議を唱えるヤツらの狙いは幕府への信頼の失墜。
たとえば。
テロ予告が来ていて、テロが起こるとされるビルから客人を救い出し、一時的に避難させたビル。
そこがテロによって爆発し、多くの犠牲者を出したなら。

幕府にとって、俺達真選組にとって、これほど不名誉な事はないって訳だ。
誰もいないビルなんて、「爆発する必要などない」

ちィッ、
一つ舌打ちを打って、総悟は「大江戸プリンスホテル」のロビーに飛び込んだ。

「い、いらっしゃいませ。真選組の方ですよね、まだ何か?」
「聞きてー事があるんだが」
「はい、何でしょう」

「刀を持った怪しい男が来ませんでしたかねィ」
「あ、きっ来ました!今さっき、木刀やら竹刀持った変な3人組が」
「あ?ああ、イヤ、そいつらじゃなくて。黒髪で眼帯の気味悪い男でィ」

「今日じゃなくてもいい」と付け加えれば、受付の女性はうーんと唸った後にそう言えば、と口を開く。
刀は持っていなかったが、眼帯の男なら数日前にホテルに訪れた。

「奥さんと息子さんと一緒に」
「ほう」

奥さんと息子さん、とは恐らく例の二人組の事。
続きを促せば、一泊した後男は仕事と言って出ていき、妻と息子は現在も同じ部屋で泊まっているとの事だった。

「そいつらが泊まってる部屋に、電話とか掛けられますかィ」



黒いスーツをピッチリと着こなした女性が、片手に細身の刀を構え、二人の少年少女を背にかばうように立つ。
少年は女性の背にかばわれながら、傍らの少女をぐいと引きよせた。
その視線は部屋の入口に立つ、一人の男に注がれている。

trrrrrrrrr・・・・・
trrrrrrrrr・・・・・

鳴り響く電話はとられることはなかった。
「ダイジョーブダイジョーブ、怪しいモンじゃないから」


「お迎えにあがりましたよ、コノヤロー」







>>next>>


ようやく再会。